【自然と親しむ】

紅葉シーズンにハイキングはいかが?
アルゴンキン州立公園&ブレスブリッジ


〈トロント・中村智子〉

センテニアルリッジトレイル(アルゴンキン)
紅葉の見どころとして有名なアルゴンキン州立公園(Algonquin Provincial Park)。ハイキングも兼ねて紅葉狩りに行ったのは2年前の9月末だが、意外と「行ったことがない」という人も多いと聞いて、「あのときの感動を伝えたい」という思いでリポートしてみます。


▲アルゴンキンの紅葉

トロントから Hwy 400 と Hwy 11 を北に走り、ハンツビルを通って Hwy 60 を東へ20分ほど車で行くとアルゴンキン州立公園の西口に到着する。この Hwy 60 をドライブするだけでも、目がちかちかするほど、見事な紅葉を望むことができる。が、やはり見晴らしの良い高台から見るのがベストかと思い、何人ものアウトドア派の知り合いにも薦められた州立公園内の Centennial Ridges Trail でハイキングをすることにした。


▲燃えるようなメープル

コース中に10数カ所ある丘の頂上にたどり着くたびに眺めることのできる紅葉は、これまでに見たことがないくらいに美しいものであった。
あくせくと生活している日常から離れて、森の新鮮な空気を吸い、秋の葉のにおいを嗅ぎ、ほんの一時でも自然に身を置くのは本当に気持ちがいい。

日本の紅葉は、京都の寺院に見られるような深紅が印象的だが、アルゴンキンの紅葉は、深緑から始まり黄緑、黄色、オレンジ、そして赤へと続くグラデーションが特徴だ。
高台から見ると、まるで色とりどりの絨毯(じゅうたん)が敷き詰められたように見える。これに、澄んだ水の湖や沼が所々に散りばめられた光景は圧巻である。

ところで、私はアルゴンキンは世界的に有名だとずっと勝手に思っていたのだが、移民の国カナダに移住した人たちの中には、名前すら知らない人もいることに驚いた。
例えばインド南部出身の知り合いは、この時期にアルゴンキンに行った私に「アルゴンキンでは何ができるのか?」「アルゴンキン? どんな発音だ?」としきりに聞いてきた。
日本人やカナダ人が「秋にアルゴンキン」と聞けば、紅葉狩りだと直感するものだが、インド南部には紅葉を愛(め)でると言った習慣がどうやらないらしい。

また、ブラジル人の知り合いは「みんなアルゴンキンに行くけど、何か特別なものでもあるのか?」と半分いらついたような顔つきで尋ねてきた。まあ、インド南部もブラジルのほとんどの国土も、年がら年中、熱帯気候だから仕方がないとは思うのだが・・・。

こんなにきれいな紅葉を眺めて感動することに価値があると思うのだが、それを理解し難いというのは、人生かなりもったいないなあと思うと同時に、はっきりとした四季があり、それぞれの季節の楽しみ方のある日本とカナダで過ごせることは、かなり幸運だと思った(カナダの冬はちょっと長すぎるが・・・)。

ハイキングも終盤に差しかかったころ、珍事件が起きた。
Centennial Ridges Trail はいわゆるループ(環状)で、よほどのことがなければ迷わず出発地点に戻って来られると聞いていたのだが、最後にたどり着いた場所は出発地点とはまるで違う場所であった。ちょうど午後5時ごろで、日暮れは午後7時ごろ。しかも当日は曇り。道標をきちんとたどってきたのに、どこで道を間違ったかなあと考えていたら、思い当たる節があった。

Centennial Ridges Trail で唯一の分岐点で方向を間違ったのだ。というのも、その分岐点に30人くらいの学生グループが集まっていた。休憩していたのであろうが、その集団のために分岐点案内の看板が隠れていたのである。
おまけに、どこに行きたいのかと聞かれたのに、私は「大丈夫」と言ってほぼ素通りした。まさかそこに看板が隠れていたとは・・・。ちなみに、公園案内には6時間かかるコースと書かれてあるが、普通の体力の大人が紅葉狩りを楽しみながら、時々、休憩のために腰を下ろしても、せいぜい3時間から3時間半くらいである。

結局は分岐点を注意していなかった自分が悪いのだが・・・。大急ぎで分岐点まで戻り、さらには出発地点を目指した。午後6時半ごろ、無事帰還。やはりハイキングの準備は用意周到にせねばと、いい勉強になった。
このコースを終えてわかったのだが、分岐点からどちらの道へ行こうとも、道標の色が同じなのだ。くれぐれも気をつけられたい。


▲Muskoka Brewery の看板


▲Muskoka Brewery 内

トランスカナダトレイル(ブレスブリッジ)
アルゴンキン州立公園から南西へ約30分ほど車で行ったところに Bracebridge(ブレスブリッジ)という町がある。地ビールでおなじみの Muskoka Brewery(http://www.muskokabrewery.com/)の発祥地だ。
ムスコカ川に沿っているブレスブリッジには Trans Canada Trail といわれる手頃なハイキングコースがある。このトレイルはほぼ平地が続くので、前日の Centennial Ridges ハイキングで筋肉痛になった足腰にはちょうど良かった。
こんな小さな町でも、こういったハイキングコースが充実しているのは、さすが自然のありふれた国カナダだと思う。しかも、自然を破壊せずにトレイルをうまく作っている。


▲Bracebridge のダウンタウン

ハイキングを終えて、お昼ごろブレスブリッジ のダウンタウンにやってくると、おもしろいものに出くわした。例の Muskoka Brewery の前にシボレー・コルベット(スポーツカー)がたくさん止まっていたのだ。
Brewery の中に入ってみると「Corvette Club of Ontario」と書かれたTシャツやらジャンパーやらを着た中年夫婦らしき人たちが大勢いた。私がBreweryに入るなり「クルーズはどうだった?」と聞かれ、なんのことやらわからないでいると、今度はお店のスタッフに「ビールはここで。あっちではサンドイッチをどうぞ」とすすめられ、ますますわけが分からなくなったが、ちょうどお腹もすいていたので、どさくさに紛れてとりあえずサンドイッチをほおばった。


▲Muskoka Brewery 前に駐車しているコルベット


▲オンタリオ・コルベットクラブの会員たち

よくよく話を聞けば、このオンタリオ・コルベットクラブ(http://www.corvetteclubofontario.com/)は、コルベットをこよなく愛する人たちの団体で、入会の条件は「コルベットを所有していること」。コルベットを所有していない場合は、入会金を余分に払わなければならないという気合の入れよう。

ほとんどの人たちはグレータートロント地域(GTA)に住んでいて、その日は朝9時くらいにGTAを出発し、この Muskoka Brewery で落ち合い、ビールとサンドイッチを平らげて家路につくという旅程だったそうだ。お店のスタッフとちょこっと話したのだが、コルベットクラブの人たちは、ビールとサンドイッチは結局どうでもよくて、とにかく高級車のコルベットを運転してどこかへ行くことが楽しみなのだとのこと。

「クルーズ」というのは彼らの間の用語のようで、要するに「ドライブ」の意味。帰り際には「Have a safe cruise!」と私も言われてしまった。


▲Griffin Gastro Pub

ブレスブリッジで訪れたパブ、Griffin Gastro Pub(6 Chancery Lane, Bracebridge 705-646-0438)。ここの料理は、いい意味で、いかにもカナダのパブ料理!というものを提供している。
味もなかなかのもので、ポテトフライは手作り。ビールも前述の Muskoka ビールをはじめ、クラフトビール(Craft Beer)が何種類もあり、人の熱気がすごかった。週末の夜ということもあって、生のバンド演奏もあった。スタッフがフレンドリーなのもうれしい。
宿泊は、ブレスブリッジの比較的安い料金のB&Bに泊まった。

そんなこんなで、アルゴンキンと近辺の町を探索し、すばらしい経験になった。また是非とも訪れて、紅葉に癒やされたいと思う。

(2014年9月18日号)



 



 
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