【ひと】

「依頼者の気持ちになって考える」をモットーに
相続法専門の弁護士、スミス希美(のぞみ)さん


日本と比べ、北米では何かにつけて弁護士にお世話になる機会が多い。その種類は多岐にわたっている。中でもだれもが抱えているのが相続の問題である。単に「相続」といっても、一人ひとりによってケースが異なる。

この相続問題を専門に扱っている弁護士のひとりがスミス希美(のぞみ)さんである。「財産の多い少ないは別として、自分の死後、残された家族ヘの思いやりとして遺言状を作成しておくことがいかに大切かを皆さんに理解してほしいです」と、経験から語る。


▲スミス希美(のぞみ)弁護士(ダーモディ法律事務所にて)

トロント周辺のGTA(グレータートロントエリア)からハミルトンにかけて活躍するスミス希美さん。日本語と英語を駆使する弁護士として日本人には心強い存在である。希美さんがたどってきた弁護士への道、日本とカナダの違い、弁護士としての仕事に対する思いなどをうかがった。

国連職員になる夢から弁護士へ

希美さんは福岡県出身の36歳。中央大学法学部を卒業後、トロント大学に1年間の大学院留学のためトロントに滞在する。その後、日本へ帰国し、1年半ほど東京の環境問題のNGO団体で政策研究員を務める。

その後、カナダ人とのご主人との結婚を機に、再びカナダに戻り、トロント大学ロースクールに再入学。そこで3年間学び、司法試験に合格してオンタリオ州の弁護士資格を習得した。

「学生のときから英語と法律を使う仕事がしたい、と願っていました」という希美さん。そのひとつの選択肢に国連職員という仕事もあった。
「たまたま、トロント大学で1年間学んだあと、モントリオールの国連機関で3カ月ほどインターン(研修生)として働く機会があったのですが、自分が思っていた仕事とはちょっと違っていました」

ということで、「より多くの人と接する、地域に密着した仕事を」という希望もあって弁護士の道を選んだそうだ。

なぜ「相続法」専門の弁護士に?

「トロント大学で学んでいる時、日本から相続法専門の裁判官が来まして、カナダの弁護士や裁判官との通訳をしたことがありました。そのとき、日加の違いや共通点もあって大変興味を持ちました」

カナダでは弁護士の種類として大きく2つに分けられる。訴訟案件を扱うバリスター(Barrister)という法廷弁護士と、不動産やビジネス案件、契約書作りなどの法律事務を担うソリシター(Solicitor)という事務弁護士である。

オンタリオ州の弁護士は、両種類の弁護士資格を授与される。日本では、弁護士と聞くと、法廷弁護士のイメージが強いが、訴訟社会のカナダでは、紛争予防のためにも事務弁護士が活躍する。希美さんの専門の相続法でも、遺言状や遺産分与に必要な書面作りをソリシターが担当し、相続問題が紛争に発展すれば、訴訟専門のバリスターが担当することが多いという。

「ロースクール卒業後、司法修習生としてトロント市役所の法務部で約10カ月間、弁護士の仕事全体を経験させてもらいました。そこで自分に合ったものを選ぶわけで、私は事務弁護士を選んだのです」

こうして相続法の事務弁護士を選択した希美さんは、2012年、この道の専門法律事務所「ダーモディ法律事務所」に入った。

難しい法律用語をわかりやすく説明

一言で「相続」といっても、その中には遺言状や委任状の作成、贈与、不動産、遺言執行者への法的アドバイスや無遺言への対応に関してなど、仕事の内容は大きく広がる。これらを英語や日本語で法律に全く素人の依頼者に説明し、理解してもらうのは大変な仕事ではないだろうか。

仕事の内容から比較的高齢者と接する機会の多い希美さんは、法律事務所の先輩から次のような指導を受けた。 「依頼者にはグレード9の子供が理解できる言葉で、難しい法律用語をわかりやすく、ゆっくり、大きな声で説明すること」

これまでの経験から、「依頼者から『遺言状が希望通りにできて安心しました』という感想をいただいたときはうれしいですね。逆にこちらの提案を聞き入れてもらえず、亡くなられたあと、案の定、遺族同士がもめたときは悲しい思いがしました」

希美さんが常に心がけていることは、「コミュニケーションが一番大切。そのためにはわかりやすく説明すること。依頼者の気持ちを汲み取って依頼者の視点に立ち、ベストの方法を提案すること」だそう。

日本人にとって、異国での法律問題は頭を悩ますことのひとつ。さらに相続はだれもが通る道である。「遺言状を作ることで、ご遺族の負担が軽減されます」と語る希美さん。

・スミス希美さんの連絡先
Tel:(905)383-3331 ext.226
Eメール:zoe@dermody.ca

【編集部より】
遺産相続に関する個々の法律問題は、今後、シリーズでスミス希美さんに執筆していただく予定です。

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〈取材を終えて〉
現在3歳と1歳の女の子の母親でもある希美さん。ママとしても弁護士としても大奮闘。「主人がバッチリ協力してくれるからできるのです」と語る。法律事務所はハミルトンにあるが、トロント方面からの依頼も多い。ストレス解消法はジムやヨガで汗を流すこと。ガンバレ、ママさん弁護士!

〈取材・いろもとのりこ〉

(2014年10月9日号)



 
 


 
 
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