【討論と親睦】

今年は「和食」がメインテーマ
第55回海外日系人大会に参加して


〈 リポート・色本信夫 〉


第55回海外日系人大会が、今年も10月22日から24日まで東京で開催された。今回のテーマは「日本文化を創造する海外日系社会─『和食』の展開に示す底力」。
大会には23の国と地域から合計137名の日系人代表および有志が参加した。最も多かったのはブラジルで53名、続いてアメリカ21名、ペルー16名、メキシコ9名。中南米、北米からの日系人に加えて、ヨーロッパ諸国、アジアの国々、オーストラリアなどからの顔ぶれが見られた。筆者もカナダからの参加者の一人として出席した。

第一日目

10月22日午後、衆議院第二議員会館の会議室で各国の代表者が出席して「第55回海外日系人大会における運営会議」が開かれ、海外日系人協会の田中克之理事長(元トロント総領事、元スペイン大使)の司会により、海外日系人協会に期待すること、海外日系人大会のあり方などについて討議した。


▲海外日系人協会の田中克之理事長

田中理事長は「海外で活躍する日本人/日系人は北米、中南米、欧州、東南アジア、オセアニアへと広がってきている。今までよりもっとグローバルに展開していくことが課題となるであろう。中小企業の進出機会を増やすとともに情報産業の拡充が求められる。われわれの協会のウェブサイトもさらに充実しなくてはならない」と述べた。

会議では、イギリスの満山喜郎氏(英国日本人会)が、英国在住の日本人会が主導して、世界のいくつかの国に「ジャパンハウス」を作ってほしいと日本政府に働きかける運動をしていることを報告した。他の国の代表からも、「これは大変良いアイデアなので、ぜひ実現に向けてやっていきたい。このジャパンハウスは、閉鎖的ではなく一般にオープンにしてほしい」との意見が出た。

筆者は、カナダでは「ジャパンハウス」という形ではなく、移住者が長年カナダで日本文化の紹介に携わってきたセンターとして各地に「日系文化会館」を設立して日系人/邦人、それにカナダ人が共に集い、学び、日本文化の吸収をはかっている状況を説明した。

また、会議では、NHKなど日本のテレビ番組が在住国で容易に見られるようにしてほしい、できたら無料で視聴できるようなシステムづくりを日本政府にもお願いしたい、そのために海外日系人協会が窓口になって実現させてほしいとの要望があった。

さらに、「二重国籍」の問題が提起され、パラグアイ、ブラジル、ドイツ、シンガポールの代表者らがそれぞれの国における重国籍の実情について説明を行い、日本政府に規則を緩和するよう求める意見を述べた。
ドイツで「国際結婚を考える会」のリーダーとして活動しているトルン紀美子さんは、結婚などでドイツ国籍を取得すると日本国籍が消滅するという現状について説明を行い、重国籍に関する法改正を訴えた。

田中理事長は、「二重国籍に関しては、日本の場合、外務省が担当しているが、要求が必ずしも通るとは限らない。海外日系人大会で何度も要望してきたが、海外からも根気よく言い続けていただきたい」と述べた。


▲和食「たん熊北店」の主人、栗栖正博さん(この写真は栗栖さんのレストランで撮影したものです)

このあと、国会議事堂前の憲政記念館で特別講演会が開かれた。今年の海外日系人大会のテーマ「日本文化を創造する海外日系社会─「和食」の展開に示す底力」に沿って、日本料理店「たん熊北店」主人の栗栖正博氏(NPO法人日本料理アカデミー副理事長)が「和食に息づく日本人の美意識」と題して講演。続いて、ブラジル日本文化福祉協会和食普及委員会委員長の小池信也氏が「海外で受け入れられ進化する和食文化」と題して講演を行った。

夜は、皇太子殿下をお迎えして海外参加者歓迎交流会が開かれ、親睦のひとときを持った。

第二日目

2日目は、2組に分かれて行動。AコースはJICA市ヶ谷ビルで代表者会議・分科会、Bコースはオフィシャルツアーに出かけた。筆者はBコースに参加した。

Aコースの分科会では、「日本文化の継承と発展」「日系社会とビジネス連携」「新たな人材を担う日系ユース」の3つを主要議題に、各国から来た日系人が討論を交わした。


▲築地場外市場


▲新鮮な海産物がいっぱい(築地場外市場にて)

Bコースのオフィシャルツアーは、世界最大級の魚市場で知られる築地の場外市場を見学したあと、ランチは二子玉川にある「たん熊北店」で経営者・栗栖正博さんの解説を聞きながら懐石料理を味わった。午後は、浅草界わいを見物して東京の風情を楽しんだ。


▲岸田文雄外務大臣(左)とペルー日系人協会の岡田フランシスコ会長

夜は、飯倉公館で、外務省主催の歓迎レセプションが開かれ、岸田文雄外務大臣らが各国の日系人たちと歓談するなど、交流を深めた。 岸田外相は、「和食文化のソフトパワーを海外にもっと広めるために外務省も協力したい」と語った。
海外日系人を代表して、ペルー日系人協会の岡田フランシスコ会長が挨拶、「各国の日系コミュニティーはそれぞれ異なるが、ひとつ同じものがあります。それは日本文化の普及活動です。私たちは日本人のルーツを忘れることなく進んでいきたいと考えています」と述べた。

第三日目

最終日は午前に全体会議が開かれ、記念講演で海外日系文芸祭の選考委員長を務める小塩卓哉(おしお・たくや)氏が「海外日系文芸祭の十年」を振り返って、第1回目から第10回目まで過去10年間の優秀な短歌と俳句で、思い出に残る作品などを例にあげて、論評した。


▲「海外日系文芸祭の十年」を語る小塩卓哉氏

その中で、第9回海外日系文芸祭で大賞・衆議院議長賞を受賞したカナダ・BC州リッチモンド市の西林節子さんの短歌が披露された。

歳月の刻みし皺(しわ)に紛れさうなゑくぼ確かむ朝の鏡に   西林節子

小塩氏は、「この10年、寄せられた作品から感じたことは、言葉への不安、アイデンティティーのとまどい、日本への思い、震災への関心、日本人の忘れた心、などです。そうした海外での生活の中から素晴らしい短歌や俳句が生まれてきたことは、たいへん喜ばしいと思います」と語った。


▲流ちょうな日本語でスピーチをしたティーエス学園の(右から)吉浦ミシェル、大城あゆみ、渡辺チエミ、金原マリナさゆりの各生徒

続いて開かれた「在日日系人こども発表会」では、埼玉県児玉郡上里(かみさと)町にあるティーエス学園の日系ブラジル人生徒4人が登壇した。ティーエス学園は、ブラジル人などの幼児・児童・生徒たちに日本の学校教育法に基づいて教育を行う私立学校で、ブラジル生まれの日系人、斎藤俊男さんが経営している。現在、生徒は60人いるという。

生徒たちは流ちょうな日本語で学校の行事や毎日の生活、将来の夢などを一人ずつ発表、会場から大きな拍手が送られた。 これらの子供たちはブラジルで生まれ、親と一緒に日本で暮らしているが、またブラジルに戻る予定だという。

最後に、今年の大会宣言が日本語とスペイン語で発せられ、採択された。決議された大会宣言は次の通り。
(1)日本文化の継承に努めている私たちは、なかでも海外で受け入れられ進化を続ける和食文化を誇りに、創造性を磨いていきます
(2)私たち日系人は、日本から海外に進出する日本企業のパートナーとして協力します
(3)日系ユースは、さまざまな文化の織りなす社会に育ちつつ身につけてきた日本文化の普及を図るとともに、国際ビジネスの発展に貢献します
(4)重国籍を認めるよう日本政府に重ねて理解を求めます
(5)海外日系人に対する日本政府の直接的な情報発信を続けるよう期待します
(6)日本祭りなどの文化イベントで「クールジャパン」を広めます
(7)観光立国をうたう日本として観光ビザの開放促進を求めます

全体会議のあと、全員が衆参両議院議長主催昼食会に出席して、海外日系人大会は幕を閉じた。

(2014年10月30日号)



 
 


 
 
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