バレエひとすじ&子供達への指導に情熱を
バレエ教室を開設した内野智子さん


6歳でバレエを習いはじめて、現在にいたるまで30年以上、途中、大人になって多少ブランク時期はあったものの、ずっとバレエとかかわってきた内野智子(うちの・ともこ)さん。彼女にとってバレエは生き甲斐というより,人生そのものになっているといっても大げさではないだろう。


▲「Sophia Ballet Academy」を主宰する内野智子さん



そんな智子さんが今年夏、トロント近郊の日系商店街「J-TOWN」内に念願のバレエ教室「Sophia Ballet Academy」(ソフィア・バレエ・アカデミー)を開設した。トロントに定住するようになって10数年,紆余曲折は大いにあったが「やっとたどりついた出発点」なのかもしれない。

智子さんのこれまでのバレエ人生を追ってみよう。

■10歳で週末は先生宅に内弟子修業

智子さんは鹿児島県に生まれ、8歳まで東京都清瀬市に住み、その後、埼玉県所沢市に移転する。バレエは6歳から自宅近くのバレエ教室で学ぶ。自宅の移転に伴ってバスに乗り継いで約1時間かけて教室に通う日々が続いた。さらに10歳のときには電車で1時間以上かけてけいこに通った。      

「10歳のころから、週末は先生宅に泊まり込んでけいこに励むとともに、先生のアシスタントもしていました」 まだ幼い子供でアシスタントを頼まれるとはよほど信頼があったのだろう。


▲日本の舞台で活躍した当時の内野智子さん。演じているのは「眠りの森の美女」第3幕オーロラ姫

高校卒業後、さらにバレエに打ち込むため、小川亜矢子先生のカンパニーに所属する。小川先生は、当時バレエ界では名の知れた大御所で、ローザンヌ国際バレエコンクールの審査員をしたこともあるほど。現在は高齢のため現役を退いている。

小川先生のところでは2カ月ごとに舞台(スタジオ公演)が4回ずつあり、舞台が終わると2週間ほどして、また次の舞台のリハーサルが始まるというかなりきびしいスケジュールだった。
「ここでのダンサーたちのレベルは高く、おかげで私も大いに勉強になりました」

■カナダでバレエとのつながりを模索

20代後半に約2カ月間、北米、おもにアメリカを中心に旅をした。そのとき、トロントに立ち寄ったのが今日トロントに根をおろすきっかけに。旅の目的はバレエを通じてよい仕事を得られれば・・・という願いもあった。

「ニューヨークからトロントに着いたのですが、テンポの速いニューヨークに比べてトロントは静かできれいな街、という印象でした。そのときは希望するような仕事は得られませんでしたが、ナショナルバレエオブカナダ(NBoC)のオープンクラスを受けて、それがとても気に入り、いつかトロントに住みたい、と思うようになりました」

その後、ワーキンホリデービザを得て再びトロントへ。何度かビザのため日本とカナダを行き来したあと、2005年に移住ビザを取得。そのころからトロント日系文化会館内の池端ナーサリースクールの教室を借りて子供達にバレエを教えていた。

■指導者は「他者・後進への愛」が大切

ここで、智子さんにとってバレエの魅力とは何かをうかがってみた。
「1番の理由は音楽に合わせて踊る楽しさでしょうね。小さい頃はただ踊るのが楽しかったのですが、10代後半から公演に参加するようになって技術的に難しい作品に挑戦するプレッシャーとともに達成感を味わい、上達していくことが励みになりました」

現在はパフォーマーとして舞台に立つというより、後進への指導に当たっている智子さん。自分が踊るのと指導をするのとでは大いにちがいがあるのではないだろうか。
「パフォーマーは自分がよくなること、指導者は他者をよくすることが求められます。指導する場合は自分が理解している情報をコミュニケーションを通して他者に理解させ、体現することを目指します。中でも、指導者は他者・後進への愛が大切です」と。

また、指導するに当たって、「私がバレエを学ぶことで得られたことを教えることで還元できればいいなと思っています。バレエを通していろいろなことを経験し、いろいろな人たちと知り合いました。そんな経験やつながりを持つことの手助けができればいいなと考えています」。
さらに智子さんが指導するときは日本語で行うので、生徒の日本語の勉強にもなるように配慮されている。

■晴れて自分のバレエ教室をオープン

今年夏、ついに智子さんはJ-TOWN内にかなり広いスペースのバレエ教室「Sophia Ballet Academy」を開設した。実はその前に同じJ-TOWN内に小さいスペースの教室で週に1日だけ教えていたのである。今回、たまたま空きが出て、思い切って躍進したというわけだ。Sophia は智子の「智」から、アカデミーは最初の先生(日本バレエアカデミー創設者)にちなんでつけたという。


▲そろってバーでおけいこ(6〜7歳のクラス)


▲きめ細かい指導で動作を注意する


▲みんなで輪になって・・・

自分のバレエ教室を持つようになった理由をこう語る。
「2005年から2012年まで、池端ナーサリースクールの教室を借りてナーサリーの生徒向けに教えていました。しかし、ナーサリーを卒園したあとも続けたい、という生徒が出てきたりして内容も高度になってくると、きちんとした場所がほしくなったのです」

■カナダ特有の試験制度を活用して指導

智子さんの教室ではカナダのバレエ教育に沿った経験ができるように指導している。つまり、日本ではあまり聞かない「試験制度」にのっとって、6歳以上の生徒を試験に送りだしているそうだ。

「欧米ではバレエのシラバス・カリキュラムが発達していて生徒の年齢、技術別に試験が行われ、一定の資格が得られます。試験は緊張しますが、達成感や次へのステップに大いに役立つのです」。生徒達の励みになるようだ。


▲ナショナルバレエスクールに入った山崎春仁(やまざき・はると)くん(11歳、中央)とチャン・ドリスさん(10歳)を指導する


▲「バレエが楽しくてたまらない」と練習に励むふたり

この試験の生徒を送るには指導者も資格が必要で、智子さんも Student Teacher として基礎的な知識を洗い直し、資格を取得した。おかげで、試験官から「生徒の仕上がりがいい」と、お褒(ほ)めの評も得たという。

「プロフェッショナルダンサーとしての経験から、試験官が受験者にどのようなデモンストレーション/パフォーマンスを求められているかを理解して指導しているので、生徒の仕上がりが良いのです。教師免許保持者の中には、若い頃にプロダンサーになるような訓練をせず、大人になって、免許を取る際に理論から入っている人たちが多くいます。また、プロとして踊っていても、資格を取るために、再度バレエの動きを洗いなおす人も少なくありません」

■将来は舞台公演でコミュニティーに貢献も

現在、「Sophia Ballet Academy」では年齢別に5段階のクラスを設けて、木曜と土曜の午後、日曜の午前中に教室を開いている。生徒の中にはナショナルバレエ・スクールに入学できた子供もいるほどレベルもアップしてきている。

「将来、高校・大学を卒業してもレッスンを続けている生徒が多く在籍して、大きなクラシックの作品を舞台で披露することができたらいいですね。公演活動を通してコミュニティーに役立つことができるよう、がんばりたいと思います」と、結ぶ。

■Sophia Ballet Academy
Eメール: sophiaballetacademy@gmail.com
Tel:416-716-7769

〈取材・いろもとのりこ〉

(2014年11月27日号)



 
 


 
 
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