「モントリオールのアート的魅力と人が支えに・・・」
世界映画祭学生部門で「特別賞」を受賞した
アニメーション作家、青木義乃さん


〈インタビュア・宇井佳代子〉

昨年のモントリオール世界映画祭(8月21日〜9月1日)で作品「Unordinary Journey in an Ordinary Day」が学生映画部門で「特別賞」を受賞、世界各地の映画祭でも好評を得ているアニメーション作家、青木義乃(あおき・よしの)さん。


▲青木義乃さん


▲昨年のモントリオール世界映画祭学生映画部門で「特別賞」を受賞した青木さんのアニメ作品「UNORDINARY JOURNEY IN AN ORDINARY DAY」より

働きながらモントリオールのコンコルディア大学フィルムアニメーション学科に学ぶ青木さんは、東京出身。東京の短大の英語科を卒業後、1996年ワーキングホリデーで来加。その後、絵を本格的に学ぶためにドーソンカレッジ・イラストレーション&デザイン学科に入学した。
卒業後、アパレル会社で子供服のキャラクターデザイン担当や、毎土曜日の日本語センター幼児クラス教師を経て、現在、昼は建築会社でグラフィックデザイナーとして働きながらアニメーションを学ぶ。今年夏、コンコルディア大学を卒業する予定である。

カナダに来たきっかけはなんですか?
ワーキングホリデーで海外に出たいと思ったとき、ガイドブックに「北米のパリ」と書いてあったモントリオールに惹(ひ)かれました。教会などの古い建築物をスケッチするのが好きだったので・・・。ヨーロッパにも近いし、実際「ワーキング」の部分よりも、「ホリデー」の部分が多くて、スケッチブック片手にあちこち旅行しました。

アニメ制作をするきっかけは?
小さい頃は、兄がよくおもしろい人形アニメがあるぞ、と川本喜八郎さんの繊細な動きをする人形アニメーションや、素朴で味のある東欧やロシアの人形アニメーション、アードマンスタジオ作品、ティムバートン作品を見せられ、気づかないうちに独自の世界を作っている人形アニメーションの世界に魅了されていました。


▲制作中の青木さん

建築の仕事に慣れてきたころに、静止画ではなく動画を作ってみたい、と思い、それなら大学できちんとアニメーションを勉強してみよう、と社会人学生として大学に入りなおし、昼間は働いて夜はアニメーションを作る生活になってしまいました。

受賞した「Unordinary Journey in an Ordinary Day」はどのようにして生まれたのでしょうか? 作品のテーマ、特色などを教えてください。
コンコルディア大学ではほぼ1年に1本ずつ制作し、これが4本目、学生最後の作品です。無声アニメーションですから、今までは、誰にでも分かりやすい単純なストーリーで作っていました。だから見る側のとらえ方もほぼ同じでした。
でも、もっと深みのある、見てくれた人がそれぞれ自分の解釈ができるような、受け取り方が違ってもいい抽象的な作品を作りたいと思うようになりました。それで、ニュートンの「絶対時間、絶対空間」をテーマに、一人のおばあちゃんから見た1日を表現しました。
見てくれた人によって、「ここが良かった」「ここが好きだった」という個所が違っていて、予想通りにいろいろな解釈ができるものに仕上がりました。ストーリーはありそうでない、実験的アニメーションという感じでしょうか。

アニメ制作の魅力、何に一番ひかれますか?
制作の中では、プロダクションの部分が一番好きです。いろいろな素材を使って人形や小道具を作ったり、それをひとコマひとコマ動かして撮ったり。いつもひとりでやっていますから、孤独な作業です。ひとつの作品を完成させるのには、半年ぐらいかかります。


▲細かい作業が・・・


▲アニメに使う小道具いろいろ

それから、出来た作品を他の人に見てもらえることがうれしいです。今は、ウェブや映画館やいろいろな媒体を使ってたくさんの人に見てもらうことができますから・・・。さらに自分の作品がずっと残る、というところが魅力でしょうか。

これから先、すでにテーマを決めたアニメ制作の計画はありますか?
いまのところは未定です。この夏に大学を卒業予定なので、今までのように学校の機材を借りて自由に制作することができなくなり、自分で場所も機材も探さなければなりません。ずっとひとりでやってきたので、今度は他の人たちとチームで制作してみたいです。
先ほど「プロダクションの部分が好き」と言いましたが、逆にストーリーを考えたり、カメラワークが苦手なので、チームのメンバーとそれぞれの得意分野を合わせて、苦手な部分を補いながら作品を一緒に作り上げることができたら良い勉強になると思います。




▲2013年の作品「Maple Syrup」より

また、NFB(ナショナル・フィルム・ボード=カナダ国立映画庁)でも何か作ってみたいです。大学を卒業したばかりの新人をサポートするプログラムがあり、かなり狭き門ですが、それにも応募してみるつもりです。
ただ、大学を卒業しても、アニメーションだけで生計を立てるのは困難で、今の職場環境も好きですし、今まで通り、昼は会社勤めで夜や週末にアニメーション制作という生活スタイルは、しばらく続けることになると思います。でもチャンスがあれば、大きな制作スタジオのスタッフの一員として、本格的な長編アニメーション制作の仕事もやってみたいです。

最後にひとこと
19年前のワーホリの当時は、まさか19年後にまだモントリオールにいて、しかもアニメーションを作っているとは思っていなかったです。滞在期間の1年が終わったら日本に帰るんだと思っていました。私がここに居られる大きな支えになっているのは、やはりアート全般が盛んなモントリオールという町の魅力と、素晴らしい人との出会いがたくさんあったからだと思います。

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【インタビューを終えて】
私が青木義乃さんに出会ったのは2001年、モントリオールの日本語センターで幼児クラスの担任だった時でした。その当時から、かわいいイラストや手の込んだオリジナルの教材で子供たちが楽しみながら日本語を学ぶ工夫をしてくださいました。


▲2010年の作品「Happy Birthday Theater」のポスター.


▲「Happy Birthday Theater」より

一作目のアニメーション「Happy Birthday Theater」(2010)も石垣島に住む姪(めい)っ子さんの誕生日プレゼントに作ったとのこと。お母様や伯父様もアートディレクターという芸術家の家系だそうで、彼女が作るほのぼのとしたアニメ作品には、子供好き、アート好き、そして家族思いの青木さんの優しさがにじみ出ています。ますます青木ワールドのファンになりました。
今後とも、ますますのご活躍を期待しています。(宇井佳代子)

過去の作品,動画などはウェブサイトをご覧ください。
www.yoshinoaoki.com

(2015年1月1日号)



 



 
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