【タウン散策】

今日は、回り道して帰ろう!
ルネッサンス様式が波及した建築物並ぶ
モントリオール旧市街


〈 小柳美千世・記/Coco Montreal 誌 〉

モントリオールの旧市街で仕事を終えたある日、ふと、ひとりでもう少し辺りを歩いてみたくなった。

モントリオールの街が美しいのは、山と川、そして旧市街地があるからだといつも思っている。ビルの谷間にいても、山から川に抜ける風を感じることができ、先人たちの息づかいに想いを傾けることができる古い街並みがある。


▲旧モントリオール市街地


▲ルネッサンス様式の古典建築モチーフをデザインに散りばめた飾り

車が往来する通り rue Notre Dame から、わき道の rue Sainte-Helene へと入る。イタリア・ルネッサンス様式の古典建築モチーフを断片的にデザインに散りばめた、典型的なビクトリア様式の建物が軒を並べている。当時は、商店や船舶会社の倉庫街として栄えた通りだった。


▲柔らかな光を放つガス灯

この短い通りに、モントリオールに天然ガスが供給されるようになってから40年たった記念として、1998年から Gaz Metropolitain の提供により22個のガス灯が昼夜問わず灯(とも)されている。柔らかなガス灯の光が夜道を照らすタイムポケットの通りだ。余談ではあるが、18世紀に登場したモントリオールで最初の街灯は、鯨油が使われていたそうだ。

通りの角にある1868年に建てられた Le Recollet House (455 rue Sainte-Helene)は、フランス領地時代にあった Recollets 会の修道院を取り壊して建てられたもので、19世紀前半にヨーロッパで起こったルネッサンス様式の復興、ネオルネッサンス様式が北米に波及した興味深い建築物のひとつになっている。

Rue Des Recollets を通って rue Saint-Pierre の突き当たりにある Le Magasin Caverhill (455 rue Saint-Pierre)は、1865年に金物商のショールームとオフィスビルとして建てられた。イタリア・ルネッサンス様式をふんだんに取り入れたこの建物は旧市街地の中でもひときわ目を引く建物だ。

そこからまたrue Notre Dameに出て東へと進み、rue Saint-Alexis と rue Saint-Jean の間にある建物(260-268 rue Notre-Dame ouest)は、1889年から1913年までサン・ライフ保険会社の本社ビルとして使われていた。


▲歴史を感じさせる趣(おもむき)のある建物

入り口や窓枠上に施された彫刻は、イギリス出身で、モントリオールに活動の拠点を置いていた彫刻家 Henry Beaumont によるもので、ほかにも旧市街地にある主だった建築の外壁装飾に携わっており、周辺の建物に彼の偉業を評価できる作品を多数見ることができる。彼もこの街が好きで、その生涯を捧げた移民のひとりだったに違いない。


▲かつて証券取引所だった建物が現在は劇場に変身

観光馬車の蹄(ひずめ)の音を遠くに聞きながら、rue Saint-Jean を下りて rue du Saint-Sacrement を左に折れ、rue Saint-Francois-Xavier に出る。現在は Centaur Theatre(457 rue Saint-Francois-Xavier)という劇場として使われている建物は、1965年まで証券取引所として使われていた。

その名残が正面上の壁に刻まれている。この建物は、ニューヨークのウォール・ストリートにある証券取引所も設計した George B. Post によるもので、当時のモントリオールの繁栄ぶりをしのぶことができる。

もうちょっとうろついてみたい気もしたが、小雨がぱらついてきたので、今日はこれでおしまい。

「うん、また来よう」。これだから回り道はやめられない。

【おすすめ下車駅】地下鉄「Square-Victoria」または「Place-d’Armes」。

(2015年1月8日号)



 



 
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