南米コロンビアのカルタヘナ(その1)                
北国から訪れた色鮮やかな世界に心おどる 


〈 オンタリオ州ロンドン市 ウィルソン夏子 〉

2月に入って、ロンドンに雪嵐がきた。それが過ぎても、毎日10センチは積もる雪。閉じ込められた銀世界はそれなりに美しいが、時には明るい太陽の光を見たいなあ、と思う。時々利用しているパッケージ旅行のリストに目を通していると、キューバに行くより安いのが見つかった。それが南米コロンビアであった。

左翼的なゲリラのグループによる事件が時折起こり、治安が悪いため、旅行は控えた方がいいと数年前の旅行記事には書かれていた国である。そのためか、コロンビアを訪ねる観光客の数は停滞していたが、最近では、治安もよくなり、再び旅行者の数も増えはじめ、カナダの旅行会社も飛行を始めた。
「どうしてもコロンビアに行ってみたい」という客の要望に応えたのだろう。それほど、魅力をそなえた国らしいのだ。

今回、サンウィング社のパッケージ旅行を利用して、2月4日から1週間、コロンビアのカルタヘナ(Cartagena)に滞在した。この町の名前は知人から聞いたことがあった。近代的都市であり、歴史もあり、海もあると聞いていたから、いつか行ってみたいと思っていた。

2月4日。雪の嵐だ。数日前、何百という飛行機の便がキャンセルになったにもかかわらず、その日、運良く私たちの飛行機はスケジュール通りに飛び立ち、変更はなかった。ただし、飛行機に付着した氷を溶解し、新たな氷の付着を防ぐために、作業員は黄緑色の液体を翼に噴き付けていた。そのため30分ほど、出発が遅れたくらいだった。


▲トロントのピアソン国際空港で、翼の防氷作業

コロンビアは南米大陸の北西部に位置し、カルタヘナの町はカリブ海沿岸にある。出発地点トロントの気温は零下5度、到着するコロンビアの気温は30度とか。真冬から、いきなり真夏への旅である。

ほぼ4時間と少しでカルタヘナに着く。窓からカルタヘナの空港を見れば、夏の日差しを受けて、すべての物がきらきら光っている。タラップを降りるために、飛行機のドアの外に出た瞬間、夏の空気がふわっと顔にきた。入国する人々の列に並びながら、上着を脱ぎ、Tシャツになる。もう夏だ。

空港からサンウィング社のミニバスに乗る。バスは海岸線に沿って走る。バスの左側は、店が並び、人が歩き、車、スクーター、排気ガスもにおってきそうだった。ちょっとごちゃごちゃして、賑わっている日本のどこかの繁華街のようだ。


▲途中、商店街で見かけたユーモラスな彫刻。リラックスした青年の像だ

20分で着いたホテル「カリベ」は昔風のホテルで、部屋は6階だった。連立する高層ホテルを両側にして、窓の遠くにはカリブの海が見えた。町の旅行社を通して切符を買った甲斐があった。自分たちでネットで切符を買ってしまうと、このような幸運はあまり出会わないからだ。


▲夕方のホテル「Calibe」(カリベ)

庭には古い木々が密林のように茂っており、庭の奥には「動物園」と称して手長猿(テナガザル)やオウムが檻(おり)に入っていた。手長猿は、休みなく、檻の中を行ったり来たりと落ち着かない。こんないい天候の中でも、檻の中の生活ではストレスがたまっているのかもしれない。

このホテルは、建てられてから70年というかなり古い建物だが、ある年、ニュースになったことがある。

2012年4月、オバマ米大統領がラテンアメリカのサミットでカルタヘナを訪問した際、アメリカ政府のシークレットサービス(SS)の人たちが大統領警護のため同行していた。11日の夜、彼らはあるクラブで飲めや歌えのどんちゃん騒ぎをし、ある人はホテルに戻る時、娼婦二人を同行していた。

問題は翌朝、起こった。一人の女性と料金のことで言い争いとなり、このSS職員は、彼女の要求に応じなかったのであった。

それで、この女性は満足に払ってもらわなかったことで、警察に訴えた。警察が調査をしはじめると、その人はアメリカのSSの一人と分かった。この事件が公表されると、SSの職員たちのカルタヘナでの行動が、アメリカではスキャンダルなニュースとなった。当人は、のち、クビになったそうだが、問題の部屋はこのホテルの7階だったそうだ。

このニュースをここで書いたのは、SSのことではなく、私は警察に訴えた女性に興味をもったからである。コロンビアでは売春は合法であり、きちんと払ってもらえなければ警察に助けてもらうという、この女性の職業意識に感心したからである。この国のしっかりした女性の性格を、ちょっとのぞき見たようだ。


▲ホテルのプール

ホテルでの食べ物で、一番気に入ったのは、エンパナーダという具入りのパイである。ミートパイ風に、ひき肉なども入れたエンパナーダもあるが、これは朝食用なので、目玉焼きが包まれていた。トウモロコシの粉で作られたパイの皮はメリケン粉とは異なり、肌の荒いところがおいしい。


▲トウモロコシ文化の食品のひとつであるエンパナーダ


▲色鮮やかな鳥、オオハシ

色鮮やかな珍しい鳥がいた。調べてみると、オオハシ(Toucan)という鳥で、キツツキ科に属する熱帯アメリカ産の鳥である。放し飼いで、朝食のテーブルに顔を出し、カップに残ったコーヒーなどを飲んでいた。

さて、ホテルから道路を渡って、海に出る。右手に高層建築が見えるのは、メキシコのカンクーンの海岸に似ていた。浜辺の砂は茶色っぽい。


▲海に向かって色とりどりの傘が並ぶ

プラスチックの椅子に座り、海を眺めていると、2、3分ごとに誰かが声をかけてくる。
「おねえさん、このネックレスはどう?」
「セニョーラ、この帽子はどう?」
「サングラスは?」
「アイスクリームは?」
「マーサッジは?」

マッサージの女性たちは、小さなおもちゃのバケツにローションを1本入れて、人々に声をかけている。申し訳ないけれど、すべて断った。それでも、勇敢な人は、私の足を水で濡らしはじめるのだった。

私は、海岸の左の方へ歩いていった。白鷺(しらさぎ)がたくさんいる。岩にとまって、海の遠くを見ている。ある白鷺は、すぐ近くの海に何かを見つけたようで、それに集中している。


▲白鷺(しらさぎ)の白さが、ここではいっそう輝いて見える


▲岩にたたずむペリカンの群れ

雄大に
X線を
描きつつ
飛ぶペリカンの
熱帯の空

(次号につづく)

(2015年2月19日号)



 



 
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