南米コロンビア・カルタヘナ(その2) 
スペイン植民地・奴隷の歴史かみしめ旧市街を歩く



〈 オンタリオ州ロンドン市 ウィルソン夏子 〉

南米コロンビアのカルタヘナの観光スポットは旧市街である。1533年、スペインの植民地として誕生して以来、街に建てられた教会や建物が今も人々を魅了している。

ホテルから歩いて行けないこともないが、この炎天下である。そのうえ、安心して歩けるような歩道もなさそうだ。そこでタクシーに乗る。タクシーにメーターがないので、夫は乗る前に運転手さんと値段を交渉する。10分以内の所なので、6,000ペソが標準であることが分かった。どんぶり勘定で、アメリカドルで3ドルといったところだ。

コロンビアの通貨であるペソは、単位が大きく、慣れるまで不便だ。例えば、ボトルの水が7,000ペソとか。大ざっぱに、アメリカドルの1ドルが2,000ペソに等しいと頭に入れ、「000を取って、2で割る」と、ほぼ、物の値段が予想できた。なんのことはない。ボトルの水は3ドル50セントで、北米での価格とほぼ同じなのだ。

コロンビアでは、アメリカドルも使用可能だが、その国に入れば、その国の貨幣を使うべきという夫は、時間がかかっても、コロンビア・ペソを使っていた。スペイン語なので不便さは増す。ああ、ややこしい!

旧市街に入ると、長い石壁が見える。全長13キロという砦(とりで)だが、この旧市街をすっぽり包んでいる。昔のカルタヘナは、南米のスペイン植民地の最大の港とした栄えた街である。

ペルーなどからの黄金をこの港で経由して、スペインに輸送していた。が、海賊や、他国に襲われる心配があったため、要塞が建てられた。工事は1586年から始まり、次の世紀にまでわたって建設され続けた。強固な防壁は、1741年のイギリス海軍の侵入にも耐え、今もしっかりと街を守っている。


▲要塞の向こうにカリブ海の港と高層ビルが立ち並ぶ新しいカルタヘナ市街が見える


▲カルタへナ市内の街路


▲黄金博物館で見た金でできた装飾品の数々

金で作られたこれらの装飾品は、コロンブス以前に生存していた「ズヌ」と呼ばれるネーティブ民族が残した装飾品である。彼らは、金を発掘し、死者のための塚にこれらを埋葬した。金というものが、こんなに光を放つものとは!


▲旧宗教裁判所の中庭にて。壁でさえも不吉な色合いを見せていた

16世紀にスペイン人はアフリカからの奴隷をカルタヘナに送り込んだ。宗教裁判所は奴隷を取り調べる所だった。異教徒、神を冒とくする人、犯罪を犯した人、魔術を行う人などが罪人とみなされ、死刑にされた。罪人とみなされた奴隷たちを拷問(ごうもん)するさまざまな装置があり、模倣された死刑台もあった。

近くでは見たくなかったので、それらを遠くから見ながら、残酷な仕打ちを受けた奴隷のことを思い、過酷な裁判を下した人々に怒りを感じた。コロンビアの植民地時代の真実として知るべき歴史だが、ここには憂うつになる暗い歴史があった。

救われたのは、奴隷に同情を示したカタロニア出身のイエズス会の神父がいたということだった。この人は、「黒人のための伝道者」あるいは「奴隷の奴隷」としてアフリカから連れてこられた人々に尽くすために生涯を捧げた。
この人は、300年間にただ一人、奴隷になった人々を理解しようとした神父だったそうだ。名前はペドロ・クラベール(1580−1654)といい、1888年、新大陸で初めて列聖された。彼の名前を冠した「Iglesia de San Pedro Claver」(サンペドロ・クラベール教会)は、カルタヘナの象徴的存在となっている。


▲サンペドロ・クラベール教会(写真提供=コロンビア観光局)


▲サンペドロ・クラベール教会の内部


▲クラベール神父と奴隷女性の像は庭に建っている


▲サンペドロ・クラベール広場では観光客を目当てにいろいろな物を売る人がいる

私たちはこの人からテーブルクロスを買った。コロンビア製品ということで、思いがけず、いいおみやげができた。


▲頭にバスケットをのせて歩く女性はカリブの国ではよく見かける。頭の荷物は体の延長といったところで、落ちる心配は全くない様子だ


▲中華料理店はほとんど見かけなかったが、ドアにこんな日本語の文字が書かれたレストランがあった

ぶらぶら歩いていると、同じ道に戻ったりする小さい街だ。しかしどの道に出ても、きれいなブーゲンビリアの花が、窓際に、あるいは庭に咲いているのが見える


▲16世紀がそのまま残っているなか、このような新しい教会も・・・。雰囲気は今風で明るい。

港を含め、要塞、この旧市街の建築物群は、ユネスコの世界遺産の候補リストに登録されている。いつか世界遺産に指定されるかもしれない。歴史の層が重なった美しい街であった。


▲蝶が飛び回るように、ブーゲンビリアの花も咲き乱れていた

花みだれ
おとぎの国の
狭き路地
色鮮やかな
みやげ売る声

(次号につづく)

(2015年2月26日号)



 



 
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