【新任です!よろしく】

在モントリオール日本国総領事館
倉光秀彰総領事、抱負を語る


〈 インタビュア・小柳美千世 〉

夏の陽射しが街中にあふれ、カナダ・F1グランプリが盛大に開催されていた6月4日、在モントリオール日本国総領事館に倉光秀彰(くらみつ・ひであき)総領事が着任した。 
着任早々に、コデール・モントリオール市長をはじめとする政府要人や、在留邦人、日系コミュニティーの人々との面談、植物園日本館や日加協会の訪問をこなすなど、日本国と当地との関係強化を図ることを、まずは最優先に臨む姿勢が伺える。

そんな多忙な中、市内 Place Ville Marie の33階、移転して間もない在モントリオール日本国総領事館の執務室で、倉光総領事にお話を伺った。


▲倉光秀彰モントリオール総領事

「幸いにちょうどよい季節に着任しましたので、街全体にとても好感を持っています。景観などは、以前、住んだことがあるフランスの街に似ているところがあって、違和感なくすぐに溶け込めました。また、日系人コミュニティーの方々が活発に文化事業などに取り組んでおられて、大変心強く感じています」と、第一印象を語ってくれた。

倉光総領事は、1958年、福岡県北九州市に生まれる。地方公務員の家庭で育ち、今のように気軽に海外旅行が出来る時代でもなかったことから、特に外国を意識して育ったわけではなかったそうだ。やがて、同じ九州にある鹿児島大学法文学部法学科に進学した際に、下宿の先輩が所属するESS(英語会話研究会)に誘われて入部したところから、外国への関心が芽生えたという。そして、1982年に卒業と同時に外務省へ入省する。

外務省では、アジア大洋州局日韓経済室長、欧州局政策課長などを歴任し、海外では、在仏日本大使館(パリ)、在韓国日本大使館(ソウル)、ユネスコ日本政府代表部(パリ)に赴任するなど、主に欧州関係、経済関係を担当し、現在に至る。

今までの任地で思い出深い経験は?という質問に、「私にとって転機となったのは、1995年から1997年まで日米安全保障条約課というところに勤務していたときでした。当時は、非常に大きな事案が決まった時期でもありまして、たとえば、“普天間基地返還”が決まったのも、ちょうど、その時期にあたりましたので、文字どおり不眠不休のときもありました。そのときに比べれば、どんな大変なことでも乗り越えられる自信がありますね」と、笑いながら当時を振り返る。

そこには、ステレオタイプの九州男児的イメージは全くない。温厚な笑顔と穏やかな目線で話す倉光総領事は、公私共に柔軟性を尊重しているとあってか、仕事柄、いろいろな街に住みながら、その街に合った楽しみ方を見つけるのが好きとのこと。 外務省沖縄事務所に在任の際には、沖縄の海でスキューバダイビングを楽しんだりした。モントリオールでも、夏はゴルフ、冬はアイスホッケーと、余暇の楽しみを見いだしてくれることだろう。

倉光総領事は、今後の抱負として次の2つの柱をあげる。
「ひとつは、前任の新井辰夫総領事が熱心に文化事業を行ったことで得られたネットワークを維持し、文化活動の場をおおいに広げていきたいということです。そして、もうひとつは、やはり、経済関連の強化を推進していくことです。
ここ数年前まで、日本経済が低迷気味であった影響で、当地の駐在員が減少しているのは事実です。しかし、現在、アベノミックス効果が好調に成果を出し始めたことを踏まえて、日系企業の中で海外に進出を望む声も各方面からあがっています。
すでに何度か会見をしているコデール市長も、大変、グローバルな視野を持った方なので、そういうことを踏まえて、相互の経済協力を進めていく環境が整ってきている時期に入ったという実感を持っています。
ケベック州は、たとえばゲームやIT企業などの優良企業が躍進しており、日本の関連企業もおおいに関心を持っています。ほかにも、映画祭に代表されるような文化イベントも数多くありますし、メープル街道などの観光資源もあります。そういった当地の魅力をもっと日本側にも紹介していければ、いろいろな可能性が生まれてくると思っています」

また、日系人コミュニティーには、「日本とカナダの関係が良好なのも、当地で暮らす日系人の方々が、日本文化を守り、関係を支えてくださっているおかげだと実感します。今まで培ってきた流れを次の世代にもつなげていく枠組みを強化していけるように、総領事館としても手助けしていけたらよいなと思っています」と語る。

座右の銘は何ですか?という質問には、「特に信条としている言葉はありませんが、外交官であれば必ず読む著書に、ハロルド・ニコルソンの『外交』があります。そこに書かれていることで、外交にとって最も重要なことのひとつに“誠意をもって対応”するとあります。これは、外交だけにかかわらず、人との関係を築いていくには必要なことです。もちろん、国益が最優先ですが、どんな局面に当たっても、誠意をもって対応していくことが重要なことだと思っています」という答えが返ってきた。 ある状況に直面した際に、まず、何をなすべきかを真摯(しんし)に判断してきた倉光総領事ならではの想いが言葉に込められている。

何気なく、「いろいろな状況の中で、一番スムーズに行きやすい道を見つけて進んでいくというのが私のモットーです」とも話す倉光総領事、今まで培われてきた経験が当地でおおいに生かされ、その手腕を発揮されることだろう。

(2015年6月25日号)



 



 
(c)e-Nikka all rights reserved