【伝統的和食を世界に広める】
文化庁文化交流使として来加
「柳原料理教室」副主宰・柳原尚之さん
ジョージブラウンカレッジで講習会


 日本料理、いわゆる「和食」が2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、それまでの和食ブームに拍車をかけるように一層世界中に広まっていった。しかし、その反面「これが本当の日本料理?」と首をかしげる料理がまかり通っているのも事実である。

 そこで、本当の日本料理とは何か、また伝統的な和食の文化を世界に普及するために、日本の文化庁は文化交流使を世界各国に送り、日本料理の講習会などを開催している。10月5日(月)、トロント市ダウンタウンにあるジョージブラウンカレッジで開催された日本料理講習会もそのひとつ。


▲イベントの講師、柳原尚之(やなぎはら・なおゆき)さん

 講師は江戸懐石の近茶流嗣家(きんさりゅうしか)で「柳原料理教室」副主宰、柳原尚之(やなぎはら・なおゆき)さん。今回は文化庁文化交流使として、ニュージーランドやブラジルでも講習会で伝統的日本料理の普及に努めてきており、トロントでの講習会もその一環である。

 この日は、将来シェフを目指すジョージブラウンカレッジの学生たちや現役のシェフたちが会場に集まり、熱心に耳をかたむけ、柳原さんの手さばきに見入っていた。

 講習会は、まず画像を通して「日本料理の基礎」の説明から始まった。柳原さんは分かりやすい英語で要点をてきぱきと解説した。講義内容は、要約すると以下の通り。


▲映像を用いて和食について分かりやすく解説を

◎和食と西洋料理(フランス料理)の大きな違い
 フランス料理はバター、オイル、さらにスパイスを基本にしています。これに対し、和食は水が最も大切です。これにしょう油、みそ、酒、みりんなど発酵食品を加えることで味付けの基礎を作っています。

◎和食が健康的といわれるのは・・・
 一般に世界中で和食がブームになった理由のひとつにヘルシー料理であることが挙げられます。ではなぜ健康的なのかと言いますと、栄養のバランスがとれているからです。いわゆる「一汁三菜」(御飯、汁もの、おかず3種)の野菜中心の献立が基本になっているからです。
 さらに和食には多くの伝統的行事にともなった料理があります。赤ちゃんが誕生して100日目を祝う「お食い初め」やお正月のための「おせち」などもそうですが、これらには一つひとつの料理に健康や幸せの願いをこめて作られています。  季節によって料理が変わるのも日本料理の大きな特色です。季節感は最も重要な要素のひとつです。


▲「和食の基本はだしが決め手」と、昆布とかつおぶしの種類や性質なども説明

◎味のポイントはうま味。「だし」が決め手に
 うま味成分はアミノ酸の一種のグルタミン酸やイノシン酸が主成分ですが、和食では昆布とかつおぶしでうま味の素となる「だし」を作ります。これが和食のもっとも重要なポイントです。


▲「昆布にはいろいろな種類があって、こんなに長〜いコンブもあります」


▲講習会には未来のシェフたちが参加

◎水とコンブの相性
 日本の昆布はほとんどが北海道で採られています。しかし、採れる産地によって質がちがっていて、これは水のミネラルの含有量との相性にも関係します。たとえば、利尻(りしり)昆布はミネラルが少ない水に合い、日高(ひだか)昆布はミネラルが高い水に合います。関西と関東では水の性質が多少異なりますので、使う昆布の種類も違ってきます。
 東京で営業している関西料理の店で、関西から水を運んで使っている店もあります。それほど、水は料理にとって重要なのです。


▲魚(レッドスナッパー)を近茶流によるさばき方でデモンストレーション

だしの取り方と魚のおろし方・お造りのデモンストレーション

 映像を交えての解説のあと、実際にだしの取り方や魚のおろし方、お造りのデモンストレーションが行われた。だしは昆布とたっぷりのかつおぶしを用いて作られた。


▲レッドスナッパーのそぎ切りコブ締めを披露


▲レッドスナッパーの昆布締め(左)とシーバスのお吸い物

▲でき上がった料理はサンプル皿に盛りつけて配られた ▲「うん、なるほど美味しい」。講習会参加者たち  


 当日用いた魚は、お造りにはレッドスナッパー(たいの一種)と吸い物用にシーバス(すずきの一種)。手さばきよく、魚をおろし、レッドスナッパーはそぎ切りにして短時間の昆布締めに料理。シーバスはお吸い物用に調理された。
 調理後、各料理は出席者に試食用として配られ、本物の味を大いに楽しんだ。

 なお、今回のイベントは在トロント日本国総領事館、ジョージブラウンカレッジの協力で開催された。

【柳原尚之さんのプロフィール】
 1979年生まれ。江戸懐石近茶流(きんさりゅう)の宗家柳原敏雄を祖父に持ち、現在宗家である父、柳原一成とともに近茶流嗣家(きんさりゅうしか)として柳原料理教室で日本料理、茶懐石の研究指導にあたる。
 東京農業大学農学部醸造学科で、発酵食品学を学び、醸造学に造詣が深い。大学卒業後、小豆島の醤油会社「マルキン忠勇」に研究員として勤務したこともある。
 著書に「男が食べたい御飯! 近茶流柳原尚之の白飯に合うおかず」(ゴマブックス)、「もっとおいしく。基本の和食-近茶流 柳原尚之の男が食べたいごはん」(ゴマブックス)などがある。また、NHK番組「きょうの料理」で陳健太郎、きじまりゅうたと結成した3代目によるおかず青年隊としても活躍中。
www.yanagihara.co.jp

〈リポート・編集部〉

(2015年10月15日号)



 



 
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