パネルディスカッション「新移住者の軌跡」
移住年代が異なる5人の移住者が体験談語る


 1967年に戦後のカナダ移住が本格的に始まってから、新移住者の歴史は2017年で50周年を迎えるが、そのプレイベントとして、11月8日(日)午後、トロント日系文化会館(JCCC)でパネルディスカッション「新移住者の軌跡」と題するイベントが開かれた。 出席者は約60名だった。
 パネリストには、移住した年を年代別に分けて、5名の新移住者が出席し、それぞれ、カナダを移住先として選んだ理由、移住してから苦労したこと、成功(達成)したと思うこと、カナダと日本とのつながり(位置づけ)などを披露した。


▲パネリスト。(左から)吉田武彦(タック)、森貞一弘、ラシュトン美紀、本射直子、増田晶子の皆さん

【パネリストの顔ぶれ】
・吉田武彦さん(タック=71歳)

東京出身。1965年東京のカナダ大使館に飛び込み移住の申請をして、1966年カナダ移住。移住申請には苦労したが、「なせばなる」の精神で突き進んだ。トロントに来てからはハウスボーイとしてカナダ人の家の6人の幼い子供たちの面倒を見ながら、英語の勉強に励んだ。その後、努力して会社を立ち上げ、現在、ピッカリングで額縁の工場を経営。主に営業の分野で活躍している。「カナダ移住には、まず、英語の勉強が必要」と強調する。
ビジネスに恵まれ、家庭に恵まれ、趣味のゴルフ、剣道、歌、料理を楽しむかたわら、コミュニティーのボランティア活動にも協力している。「こんな幸せな男はいません!」

・森貞一弘さん(もりさだ・かずひろ=58歳)
大阪出身。1981年、日本IBMの社員としてカルガリーに赴任。折からの石油ブームのなか仕事に励む。「寒い所で、いろいろ苦労もあったが、平社員のまま、38年間生き延びてきました」
退職後もカナダに残ることを決意。トロントに移ってからは、新移住者のためのアクティビティーなどに積極的にかかわって、暮らしをエンジョイしている。

・ラシュトン美紀さん(Miki Rushton)
大阪出身。両親が外国留学を強く勧めたが、最初はいやだった。1992年カナダに留学、3年間滞在。「Yes」と「No」をはっきり言う、理由なく「I am sorry」などと謝らないことなどを学んだ。日本に帰り、1997年末、結婚のためカナダに移住。現在はCSTコンサルタント社で学資貯金のセールスマネジャーの職に就いている。
 日本人以外の人たちともよくお付き合いが出来るようになった。「カナダで英語で日常生活が送れることは素晴らしい」。日本の家族からは人が変わったと言われる。「カナダにもっと溶け込み、骨をカナダの地に埋めようと考えています」

・本射直子さん(もとい・なおこ)
兵庫県出身。日本で英語教師をしていた中国系男性と結婚するためカナダへ。2005年永住権取得。専業主婦。多様な文化が入り交じったカナダ社会の中で、たくさんの貴重な体験を積んでいる。「自分は日本人なんだなあと誇りを持つようになりました」
 日本の家族とはインターネットで密接に連絡を取り合って、話ができるので、そうしたつながりにも不便は感じない。

・増田晶子さん(ますだ・あきこ)
和歌山県出身。高校生の時、交換留学で和歌山県からの日本代表としてカナダに。1996年ワーキングホリデーで再び来訪、オンタリオ州ロンドン市に。その後、カレッジで3年間学ぶ。2001年大学時代の友人、韓国系カナダ人と結婚してカナダ移住。 友人たちとの集まりで料理を持ち寄っていたことがきっかけとなり、2009年、トロントで最初の居酒屋「Fin Izakaya」を開店、経営に携わっている。「お店は順調にいっていますが、このもとになったのは、それまでの日本食業界の皆さんのお陰だと感謝しています」
日本では「お客様は神様です」といわれるが、こちらでは「お客様は大親友です」と考える。「お客様とは友達のように接し、お客様の言いたいことを心置きなく話してもらうようにしています」

 5人のお話が終わったあと、会場からいくつかの質問や意見が出て、パネリストたちは、これに応じていた。

 オーガナイザーの一人、レイノルズ洋子さんは、次のように語った。
「今回のイベントはNJCC(新日系コミッティー=旧・新移住者協会)とJCCCの共同企画で初めて開催したものですが、たいへん良かったと思います。年齢やバックグラウンドが異なる人たちが、さまざまな理由で、年代も違う時期にカナダに移住しています。そして、日本という共通点を持ってコミュニティーを形成している。素晴らしいことです。来年も開催したいと考えています。2年後、2017年の移住50周年にはもっと規模を広げて、大きなカンファランスにしたいです」

(2015年11月12日号)


 



 
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