観客に元気と感動を与えてくれた
「チータ」水前寺清子チャリティーショー


〈 リポート・中山あつ子 〉
【写真はすべて大橋デーブさんから提供していただきました】

 11月7日(土)、トロント日系文化会館(JCCC)小林ホールは熱気で沸き返っていた。人生の応援歌を歌い続けてきた水前寺清子、愛称「チータ」の登場である。公演は、午後2時と午後6時の2回にわたって行われた。

 そのスーツ姿は最初から観客を魅了した。ご存じ、100万枚の大ヒットを記録、1969年3月開催の第1回選抜高等学校野球大会の入場行進曲となった「三百六十五歩のマーチ」、そして第11回レコード大賞に輝いた「真実一路のマーチ」がうまく調和されて、手拍子と共にオープニングの歌が始まった。


▲オープニングは「三百六十五歩のマーチ」から始まり、ヒット曲が次々と・・・







 1970年に大ヒットしたドラマ「ありがとう」の話が懐かしくよみがえる。その主題歌「ありがとうの歌」も心に眠っていた歌だった。

 プログラムは英語の歌「Come On A My House」と、トークへと続く。そして、いよいよ、トロントでも盆踊りなどでおなじみの「1+1の音頭」の歌が始まった。


▲トロントの踊り子さんたちも加わり「1+1の音頭」の歌に合わせて踊る

 舞台には、トロントの踊り手から選ばれた人たちが、そして会場でも「歌に合わせて踊れる方はご一緒に」というチータの言葉に誘われて、舞台も会場も一体となって楽しいひとときが流れてゆく。

 私は、3日間ほどチータとご一緒の時間があったが、彼女の日本の後援会から総勢18人が同行していた。長い間のファンの方々であるから、会場では威勢のいい掛け声が舞台を盛り立てる。

「練習しないと・・・、タイミングがあるのですよ」と話していたが、その掛け声を聞くと、まったくテレビで見る歌のショーの時に聞こえるあの声援なのである。

 素人では出来ないとつくづく思ったが、「浪花節だよ人生は」の歌で、この歌こそ掛け声が生きてくるということで、チータの音頭で観客が練習をしながら乗りに乗った一曲だった。


▲日系人のお嬢さんから花束贈呈

  チータの衣装替えの時間に、舞台のスクリーンでは動画が映し出された。可愛い生まれたばかりの赤ちゃんのチータから、初めてNHK紅白歌合戦に出場した時の映像や結婚式などなど、12分間ほどチータの縮小した人生が流れた。


▲「いっぽんどっこの唄」を熱唱

 歌手の醍醐味は衣装にもある。和服に着替えたチータが「いっぽんどっこの唄」で再び舞台に登場。まさに人生の応援歌の一曲でもあるこの歌は、体が震えるほどの感動を与えた。歌は「どうどうどっこの唄」「大勝負」、作詞家星野哲郎の思い出の歌「あすなろの唄」「勝(かつ)」、そして「お父さん」の歌では、歌手になることに一生懸命だった父親の思い出話が続いた。

 中でも12歳の時に一家で夜逃げしたこと、NHK紅白歌合戦でトリに抜てきされた時の話などが観客の涙を誘った。1983年にトリを務めたがその直前に父親が死去。病床の父にその事実を告げることが出来なかったことが心残りになっていると話す。この事実を告げていれば紅白本番の時まで父は生きていてくれたのかもと思っているとも話している。







 デビュー曲「涙を抱いた渡り鳥」も当時を思い出しながら一緒に口ずさんだ名曲だ。再び「三百六十五歩のマーチ」が流れ、1コーラスを会場の全員で歌った。この時間は思い出のひとコマになるだろう。そして、デビュー当時の話が終わると星野哲郎のナレーションで「春雷」が披露された。

 チータの名前の由来に話題が及んだ。「チーターじゃないんですよ。それはターザンが連れている猿の名前です」とユーモラスな話しぶりは、会場が一つになってどっと沸いた瞬間でもあった。「まだ人気が出ていなかったデビューの頃、小柄であったため、本名の民子から『ちいさい、たみちゃんの気持ちをわすれないように』と星野哲郎先生がチータと名付けてくださったのです」という説明があって、納得した。


▲フィナーレで観客はスタンディングオベーション

 舞台を下りたチータは気さくですっきりした印象がとても心に残ったが、舞台に上がると一変するその姿にも圧倒された。その年齢とは思えない歌声にもまだまだチータは健在であると思った。
 「歌はいつまで?」と質問すると、「60までと思っていたのですが、そうですね、歌える間は歌い続けたい・・・」という答えが返ってきた。本当に、元気と感動を与えていただいた素晴らしいショーだった。

【注】今回の「水前寺清子ショー」は、戦後の日系移民の50周年(2017年)を記念して、水前寺さんの人生の応援歌ショーとして開催されました。ショーの収益金はジャパニーズ・ソーシャル・サービス(JSS)とトロント日系文化会館(JCCC)に寄付されることになっています。

(2015年11月12日号)



 



 
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