【講演会・インタビュー】

新刊「ゼロになれることは素晴らしい」
聴衆をチャコワールドに引き込んだ
著者、チャコ瀬戸山さんの出版記念講演会


〈インタビュア・いろもとのりこ〉

 それはまるで「チャコ劇場」だった。まず、「高砂や〜」の謡曲が会場にひびきわたる。謡曲は能楽の声楽部分で、現在では「高砂」は結婚式などおめでたい式に祝言として謡(うた)われる。びっくりする来場者を前に講演会が始まった。

▲チャコ瀬戸山さん  


 12月1日、トロント日系文化会館(JCCC)のヘリテージルームはこれまでチャコさんとかかわりのあった人、講演会の知らせを聞いて集まった人などで会場は満席に。講演会の前にワインと軽食がふるまわれ、リラックスムードも満点。

 「ゼロになれることは素晴らしい──その時が新たな出発点」(東洋出版刊)は11月4日に発売され、11月30日には電子書籍が発売された。本書の内容は帯にある「強い意志や行動が、自分自身の運命を変えるチャンスであり、シンプルな生きるヒントがここにはある」に、まさに集約されている。さらに推薦文の「絶望を感じているときでも明るい未来を信じ、その明るさで、希望の世界へ引っ張り込んでくれるかも知れないという人生において一歩を踏み出す勇気が持てる1冊」が本書を象徴している。

チャコ瀬戸山さんのプロフィール紹介

 チャコ(瀬戸山久子)さんは1949年三重県鈴鹿市に生まれ、池坊短期大学研修科卒業。在学中に能楽を学ぶ(これで講演会冒頭の「高砂や〜」の謡いを納得)。1970年大阪万博でコンパニオンを務め、翌年、夫の留学に伴いカナダへ。のちに離婚。85年、「ジェームス・モト・エンタープライズ社」を松本真一郎氏と設立。皮・毛皮製品を取り扱っていた。さらにインバウンド・ツアー会社「ショーフレックス・インターナショナル社」を設立し、両社の副社長に就任する。また、皮製品を中心にデザイナーとしても活躍した。
 ビジネスの世界で活躍する傍ら、国際ロータリークラブ・トロント・フォレストヒル支部のメンバーとしてチャリティー活動にも従事する。
 2012年仕事をリタイヤし、東日本大震災被災児童自立支援プロジェクト Support Our Kids をはじめ、チャリティー中心の活動に専念する。また、同年「新風義塾」を設立し、チャコの「心のエステ」を連載し、読者からの相談にも応じている。


▲聴衆はチャコワールドに引き込まれる

熱の入った語りに陶酔する聴衆

 チャコさんの講演は、本を書いたきっかけ(後述)からはじまり、本書の分類をしっかりと語る。
「この本は自慢本ではなく、暴露本でもありません。人生を生き抜くための How to 本だと思っています。『チャコさんの人生を語るにしては意外と短いのでは?』といわれますが、だいたい2時間くらいでさっと読めるよう約200ページにまとめました。 How to 本はあまり長いと飽きられますからね。目次を読んでいただくだけでもお役に立てると思います」

本書は4章から構成されている。
第1章 英語スキル・ゼロからの出発
・「できない」は伸び率100パーセント
・スモール・トークで吸収力アップ
・ビジネスの原点は道端に転がっている ほか

第2章 キャリア・ゼロからの賭け
・何もできない人は何にでもなれる
・強運を呼ぶ家選びのコツ ほか

第3章 ビジネスシーンでゼロの力を発揮
・成功は借金を返すことから始まる
・ブームはアメーバ感覚でつかみとれ ほか

第4章 今、再びゼロへの回帰
・モノを欲しがる時代は終わった
・「金は天下の回りもの」を肝に銘じておこう ほか

   「カナダに来たのはまさにゼロになりたかったからです。ゼロになることは素晴らしいことです」。チャコさんの熱い語り口はまるで舞台劇を見ているようで来場者はぐいぐい引き込まれていく。約1時間の講演はあっという間に過ぎて行った。講演内容とインタビューをかみ合わせて、以下に掲載します。

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■本を出すきっかけになったのは?
 3年前に仕事をリタイヤしたときに、それまでビジネスの世界、つまり物質の世界で生きてきましたので、何か精神的な目に見えない世界で活動できないか、と考えました。そしてトロントのフリー雑誌Bitsで「チャコの心のエステ」というコラムを始めました。いろいろ問題をかかえている女性たちに向けてさまざまな生きるヒントを書きつづっています。
 これをきっかけにもっと役に立つHow to本を書いてみたらどうか、という話になり、約3年かけてでき上がりました。
 また、1965年に日本からのカナダヘの移民が再開されて50周年を迎えます。さらにトロント新移住者協会が設立されて2017年で 50周年を迎えますが、そのプレイベントがいろいろ企画されています。いわゆる新移住者にとって記念すべき年を迎えるのです。
 カナダへの日系移民史は永野万蔵に始まって、一世の記録はたくさんありますが、新移住者の記録はあまりありません。その意味でも新移住者の私が本を著すことで記録として残り、ひとつの起爆剤になって、後続が出てくることを願っています。

■読者対象はどのような方をターゲットにしたのですか
 おもに30代〜40代の女性です。この年齢は子育てや仕事でも悩むことが多い時期です。最近はシングルマザーも多いです。彼女たちが落ち込んでいるときに少しでも指針になれば良いな、と思います。私は「マッチ売りの少女」ではなく、人の心に火をつける「マッチすりのおばさん」になりたいのです。

■本書はチャコさんが「新風義塾」の塾長の立場からも出版されたようですが、「新風義塾」とは?
 山形出身の祖父が昔、「神風義塾」(しんぷうぎじゅく)という塾を開設していまして、それから名前をもらって「神風」を「新風」と変えた同音名の「新風義塾」を創設しました。
「新風義塾」のおもな活動は次のようなものです。

◎東日本大震災被災児童自立支援プロジェクト「Support Our Kids in Toronto」
 今年で3年目になるこのプロジェクトは、夏に10名の被災児童をトロントに招待し、ホームステイやサマーキャンプを体験してもらうというもの。歓迎会、送別会、そのほかのレクチャーを日系文化会館で行いました。

◎相模原市友好都市親善交流アドバイザー
 トロント市と相模原市は友好都市25周年を迎えました。その記念イベントとして今年スカーボロ地区のバークデール公園に25本の桜の植樹を行いました。相模原市役所、相模原商工会議所から総勢30名が来加し、イベントに参加、現地との交流を深めました。 これは桜プロジェクトのひとつで、これからも日本とトロントを結ぶ友好の印として、桜の植樹を続けて行きたいです。

◎水前寺清子チャリティーコンサート
 日本カナダ移民再開50周年記念イベントとして、歌手・水前寺清子さんを招へいし、トロント日系文化会館でチャリティーコンサートを行い、多くの方々から感謝されました。

 これからも「新風義塾」を通してチャリティー活動を広げていきたいと考えています。そのためにも別宅のあるハワイや日本でいろいろな方々と会い、今後の企画を立てるのを楽しみにしています。


▲チャコさんの良きパートナー、ジェームス松本氏と

■チャコさんにとって、人生のターニングポイントは?
 最初、仕事で「天敵」だったジェームス松本氏とビジネス、そして人生を共にできたことです。それは巡り回ってきたタイミングと運命なのでしょう。もし、彼と一緒に仕事をしていなければ、今日の私はありません。こんな私と30年近く公私をともにしてくれている彼の忍耐強さに感謝しています。

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▲著書にサインをする

なお、講演会当日の本の売り上げはすべてJCCCに寄付された。

「ゼロになれることは素晴らしい」(東洋出版刊)
■価格:1200円(+税、アマゾンで購入の場合)
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(2015年12月10日号)



 



 
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