リオデジャネイロ
コルコバードの丘のキリスト像


〈リポート・色本信夫〉

 11月初旬、リオデジャネイロに滞在した。コパカバーナ海岸とイパネマ海岸の中間の岬にある「Mercure」(メルクーレ)というホテル。どちらの海岸へ行くにも徒歩でほんの数分という便利なロケーションだ。コパカバーナ、イパネマともに世界的にその名が知られるリゾートビーチということで、話のタネにひと目見ておこうとビーチサンダルで散歩に出かけた。


▲イパネマ海岸


▲夕暮れ時のコパカバーナ海岸

 季節は北半球と反対だが、天候はすでに真夏と同じになっていて、海岸は海水浴を楽しむ人々でいっぱい。暑い。体格のよい女性たちが大胆なビキニ姿で砂浜を闊歩している光景に、こちらも圧倒される。どこからとなく、サンバやボサノバが流れてくる。音楽に合わせて体をくねらすように踊る人も・・・。みんな底抜けに明るい。これがブラジルなのだ。海岸のはるか向こうにはとんがり帽子のような形をした山々が空に突き出ていて、エキゾチックなムードにひたる。


▲イパネマの海岸り。自転車とジョギングの専用レーンが完備している


▲海岸付近ののみの市にて、ブラジルグッズを売る女性

 さて、リオといえばなんと言っても「コルコバードの丘のキリスト像」だろう。ホテルのフロントで道順を教えてもらって、いざ、出発。近くのメトロ(地下鉄)General Osorio 駅から電車に乗る。リオのメトロ乗車賃はトロントのTTCと同様、全線一区で、行き先がどこでも金額は同じ。片道R$3.70(3レアル70センタボス=カナダドルで約$1.25くらい)。地下鉄の車内は窓側に沿って長い座席が備わっているだけで、まことにシンプル。


▲メトロ(地下鉄)のホーム


▲地下鉄の車内

 6つ目の駅、Largo do Machado で下車。駅を出るとすぐ、教会前広場にコルコバードの丘行きのマイクロバス乗り場が見える。すでに大勢の人が並んでいる。切符は往復R$64.00(シニアはぐっと安くてR$27.00)。切符売場には「本日の見晴らしは良好」のサインが掛かっていた。ラッキー。天気の悪い日は「見晴らし不良」となるのだろう。
 次から次へと出発するマイクロバスに乗って市街地を通りぬけて頂上に向かう。ちなみに、キリスト像への交通手段は、ほかにタクシーとか、登山電車があるが、このマイクロバスがいちばん安上がりで行ける。


▲コルコバードの丘に続々と到着するマイクロバス

 バスはくねくね曲がった山道を登り、コルコバードの丘に到着。まさに断崖絶壁の上だ。日曜日で晴天ということもあってか、ものすごい人出。ぞろぞろ石段をあがって、キリスト像の足元までたどり着いた。見上げるキリスト像の顔をじっくり眺める。このような巨大な像を、こんな高い絶壁の上によくも築いたものだと、ただただ感心した。


▲コルコバードの丘のキリスト像

 行く前に、ホテルのフロント係に聞いた説明によると、このキリスト像は1922年に建設が始まり1931年に完成した。ブラジル独立100周年を記念したものだという。ポルトガル王国の植民地だったブラジルは1821年から1823年にかけてポルトガルと戦い、独立した。その1世紀後にキリスト像が誕生したわけである。

  コルコバードの丘は標高710メートル。ここに立っているキリスト像は、高さが39.6メートル、そのうち台座は9.5メートル。左右に広げた手は、長さ30メートル、総重量は635トンだという。
 文献によると、このキリスト像は、アメリカの自由の女神と同様、像そのものはフランスで製作され、その後、リオのコルコバードに移されて、先に完成していた台座に据え付けられたという。像のデザインは、フランスの彫刻家、ポール・ランドウスキーが担当し、製作の監督は地元ブラジルのエンジニア、エイトル・ダ・シルバコスタが行ったそうだ。


▲両手を広げ人々を見守る 

 ブラジルでは国民の多くがキリスト教徒で、リオの市街を見下ろすコルコバードの丘からイエス・キリストが両手を広げて人々を見守っていると信じられているという。キリスト像は、信仰する人々の心のよりどころとなっているとともに、リオ、ブラジルのシンボルでもあるといえよう。


▲キリストの顔 

 キリスト像の見物客たちは「一生の思い出に」と言わんばかりに、それぞれがカメラで記念写真を撮ったり、撮られたり・・・。大混雑である。フランスから来たという若い女性グループは、「いつも旅行ガイドブックで見ていたリオのキリスト像の前に、今、自分が立っている。感激です」とか「キリストと同じように私も両手を広げている姿を撮って!」とか、興奮さめやらない。
 ブラジル人であろうか、 十代の身障者の男の子が乗った車椅子を姉が押してきた。きょうだい揃ってキリストの像に向かってお祈りをする姿が印象的だった。
 見物客が話す言葉はさまざまで、世界中のいろいろな国からここに来ていることが分かる。


▲市街地と大西洋を見下ろす


▲キリスト像の前の展望台は観光客でいっぱい

 展望台から下界を望む。市街地、住宅街、ボタフォゴ海岸、大西洋を見下ろす展望台があるウルカ岬、コパカバーナ海岸、イパネマ海岸などが一望のもとに見渡せる。「絶景かな〜」のせりふはこんな時に発するのかも知れない。
 像の背後に回ってみた。キリストの足元の台座の中に、なんと、小さな教会堂がある。ほんの10数人だけが座れる椅子が並べてあって、敬けんな祈りを捧げている人もいる。像の前面の雑踏とはちがって、ここは静寂の世界だ。

 コルコバードのキリスト像は、2007年7月、「新・世界七不思議」に選出された。新・世界七不思議には、現在、チチェンイッツアのピラミッド(メキシコ)、万里の長城(中国)、マチュピチュ(ペルー)、要塞都市ペトラの遺跡(ヨルダン)、ローマのコロッセオ競技場(イタリア)、タージマハル(インド)、それにリオデジャネイロのキリスト像(ブラジル)の7カ所が決まっている。

 晴天に恵まれ、下界の美しい眺めを堪能して、長年の念願がかなった満足感にひたりながら、帰りのマイクロバスで下りてきた。
 夜は、キリスト像がライトアップされて、天空の闇の中にくっきりと浮かび上がる光景が美しいと聞いたが、筆者は見るチャンスがなかった。

【編集部より】2016年リオデジャネイロ・オリンピック/パラリンピックのメーンスタジアム「マラカナン競技場」の訪問記は新年号(1月1日号)に掲載します。

(2015年12月10日号)  
 



 



 
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