今年はリオデジャネイロ・オリンピック!
メーンスタジアム「マラカナン競技場」を見学しました


〈 取材・色本信夫 〉

 2016年は「リオデジャネイロ・オリンピック」の年です。大会は 8月5日から8月21日まで開催されます(パラリンピックは9月7日から9月18日まで開催)。南半球のブラジルですから季節は冬ですが、冬といっても、リオの平均気温は摂氏22度前後だそうで、問題はありません。

 筆者は、2015年11月初旬にリオを訪問、リオ五輪の開会式などが展開されるメーンスタジアム「マラカナン競技場」(Estadio Maracana)を見学しました。ちなみに、リオ五輪ではこの競技場のほかにさまざまな種目を競う施設がリオ市内および近郊に配備され、既存施設を活用する「節約五輪」をうたっているそうです。ここでは、マラカナン競技場の訪問記をお伝えします。


▲マラカナン競技場の全景


▲競技場前では大がかりな下水道工事が・・・

 リオの市内から地下鉄(Metro)で市の西部に行き、マラカナン駅で下車。駅を出るとすぐ目の前に競技場が巨大な姿を見せています。大掛かりな下水道工事の現場を横目で見ながら、中に入って見学ツアーに参加しました。

 マラカナン競技場はおととし(2014年)のサッカー・ワールドカップの主会場となった場所で、これをそのままオリンピックに使用します。そうです、既存施設の活用です。


▲ドーナツ型の屋根と緑のピッチ、観客席


▲上から見たマラカナン競技場。地下鉄線路の向こう側、小高い山の傾斜地に広がるのはファベーラ(スラム街) (この写真は、別の日にキリスト像が立つコルコバードの丘から撮影しました)


▲白い素材のシートで作られた屋根

 屋根はドーナツ型で、真ん中に穴がぽっかり。この日、天気は快晴で屋根の白さと空の青さが心地よいコントラストを演出。強い日差しがピッチの緑の芝に降り注ぎ、観客席は大部分が日陰になっていました。観客は、うまい具合に、日よけ、雨よけの恩恵にあずかるという設計です。屋根は白い素材のシートを使用したもので、見た目にもすがすがしい。しかも施行費用の面でも大幅に節約できたのではないかと思われます。


▲競技場内の展示コーナーにはジーコをはじめ伝説のサッカー選手たちの銅像や写真パネルが・・・


▲ピッチで記念写真を撮る見学者たち

 観客席から階段を下りてピッチに・・・。ここで、あの有名選手たちが世界の覇者をめざして死闘を繰り広げていたのだな、とテレビの画面を思い起こしながら臨場感にひたる。次にエレベーターで上階へ・・・。そこからはドーナツ型屋根を見上げ、はるか下のピッチを見下ろす。とても良い眺めです。


▲報道陣の記者席

 メディア関係者のためのデスクも完備しています。8月にはここからオリンピックの中継放送が世界中に流れていくのでしょう。筆者も、まるで放送記者になったつもりでデスクに座ってみました。いい気分!


▲2014年FIFA ワールドカップ開催記念の展示物

 ツアーのガイドさんから資料をいただきました。それによると、このマラカナン競技場は、1940年代に建設計画が持ち上がり、1948年に工事開始。強い反対意見があったにもめげず、1950年に完成。当時は世界最大規模の競技場でした。この年サッカーW杯の会場 として使われ、最初の試合、ブラジル対メキシコ戦が行われました。結果は、4−0でブラジルの勝ち。ブラジル国民の歓喜の熱狂ぶりが想像されます。

 当時、マラカナン競技場のW杯の観客数は総計20万人以上だったと推定されます。ところが、1992年7月19日、上階のスタンド席が崩れ落ちて観客3人が死亡、50人が重軽傷を負うという事故が起きたことから安全法が厳格化され観客席の数が規制されるようになりました。

 2007年、FIFAは「2014年W杯」のリオ開催を決定。2010年から改築工事が始まり、競技場の下の部分の観客席を改修。結果として、座席総数は7万8,800席、かなり大きな収容人数といえるでしょう。同時に新しく屋根が設けられました。これが今の姿です。スタジアムは全体的に豪華な設計とは言えないかも知れませんが、選手が持てる力を発揮して競技に臨めるし、観客も快適な座席で観戦できるように感じました。


▲地下鉄マラカナン駅の向こうにはファベーラ(スラム街)が広がる(競技場からの眺め) 

 階下のスナックでひと休み。テラスから競技場の向かい側に小高い山が見えます。そこには、粗末な造りの家がぎっしり詰まって建っています。人々は「ファベーラ」(Favela)と呼んでいます。「スラム街」の意味です。貧困に苦しむファベーラの住人たちは、地下鉄の線路をはさんで見下ろす競技場で繰り広げられる世界のスポーツ祭典「リオ五輪」を、どのような心境で眺めるのでしょうか。


▲ポルトガル植民地時代の古い教会堂と超モダンなビルが並ぶリオのセントロ(旧市街)


▲リオの中心街の大通りではオリンピックに間に合わせるため工事が進行中(2015年11月)

 ブラジルは、今、経済が低迷して不景気だといわれます。最大の貿易相手国である中国経済の減速で資源価格が下落し、打撃を受けているのも原因のひとつです。また、国会の与党議員がからむ国営石油会社の汚職スキャンダルが発覚するなど、ジルマ・ルセフ大統領の支持率は10%を切ってひとけたにまで落ち込んでいます。貧困層に限らずかなり多数のブラジル国民が、財政を圧迫するオリンピック開催に反対しているのも事実です。

 このような状況が影響しているのでしょうか。リオの街角や空港ロビーには「2016リオ五輪」のポスターや幟(のぼり)が全く見当たりません(2015年11月現在)。街頭でリオ市民にオリンピックの話を持ちかけても、サッカーの話題に熱中する有り様で、オリンピックへの関心度はお世辞にも強いとは言えません。あと7カ月余で開幕するリオ五輪。ラテン系民族の持ち前であるパッション(情熱)を発揮して、盛り上がっていくことを期待するのみです。

(2016年1月1日号)



 



 
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