【シニアに朗報!】
日本人による訪問介護サービス会社設立
「バンクーバー・ホームケア・ネットワーク社」


〈 リポート・妹尾 翠 〉

 2013年夏、バンクーバーで医療に従事する日本人看護師や介護士の有志たちが集まり、ニコニコ生活勉強会が始まった。そのきっかけは、実際にカナダの現場で働く立場から見て、カナダの医療制度では日本と同じ質の高い医療や看護を求めることが出来ない、それは全く違うシステムだから違いを知ることがバンクーバーに住む日本人にとって大事なことであり、もっと現場の声を伝える場があっても良いのではないかということで意見が一致して、阿部山優子さんが発起人となって勉強会が始まったのである。


▲阿部山優子さん

 月一回の勉強会に毎回違う講師を招待し、医療、看護、介護、歯科、ターミナル・ケア(Terminal Care=終末期医療)、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning=治療に自分の意志を尊重することを書き留めた文章を作成するプラン)などの話を行い、2年間でのべ500人以上の人が参加したという。

 その勉強会での話し合いの中から「自分の家で受けられる日本語の介護サービスをしてほしい」という声が上がってきた。これは老後の生活において非常に大切な部分であり、その声に応えようと、2014年10月に上記の有志たちが中心になって「バンクーバー・ホームケア・ネットワーク社」を立ち上げた。

 会社を立ち上げたものの、最初の頃は宣伝もしていなかったので、活動がない日々が続いたというが、ひょんなことから出会った女性から、父の介護で母がとても疲労しているという話を聞き、ぜひ我が社で介護をさせてくださいと名乗り出たのが2015年の5月。そこから実際の活動が始まった。

 バンクーバー・ホームケア・ネットワーク社は、北米唯一の日本人による訪問介護サービスを提供する会社として、掃除、洗濯、料理、買い物から入浴介助など、介護士またはヘルパーを派遣し生活援助をしている。身体的な介護の必要な人には資格を持った介護士を、買い物や食事作りなどの生活援助にはヘルパーを派遣している。現在、登録している介護士とヘルパーは約20人。日本人のきめ細やかであたたかいケアを目指している。


▲訪問介護サービスの一場面(バンクーバー・ホームケア・ネットワーク社のホームページより)

【活動状況】
 クライアントからの依頼を受けると、BC州の正看護師(RN)が依頼人の自宅へ出向き、無料相談の後、介護計画を立て介護士の派遣、そして評価を継続的に行う。介護は人と人、心と心のつながりが大切である。「真心、気配り、思いやり」を徹底させ、クライアントの世話をすることに重点を置いている。

 介護という仕事は24時間の戦闘であるから、家族だけで介護にあたるというのは大変なことである。そこで介護士など第三の手を借りることで、家族も休息しリフレッシュして再び介護に臨むことができる。介護士を生活の一部に上手に取り込むことで、自宅で自分らしい生き方で、より長く快適な生活を続ける手助けとなっている。


▲シニアの介護に関する説明会

 バンクーバー・ホームケア・ネットワーク社のオペレーションマネジャー阿部山優子さんは次のように語ってくれた。
 「高齢のご主人を奥様が数年間一人で介護しており、疲れきっていました。週2回早朝に出向き、ご主人をベッドから起こし、シャワー、朝食、体操など、本人の状況に合わせたプログラムを作りました。ご主人の介護と並行し、奥様と日本語でおしゃべりをたくさんしました。その結果、奥様も少しずつ元気を取り戻しました。介護士を派遣させて頂くことで、このご夫婦の生活が健全な形で自宅で継続できることがわかった時、このサービスの必要性を確信しました。
 また、一人住まいで、食事も十分に出来ず、かなりやせてしまった方に、介護士が毎日訪問することになりました。毎日温かい食事を介護士と一緒に作り始めると食も進みました。お散歩がてら買い物も一緒に行い、お話もたくさんする、結果としてよく眠れる。その結果、みるみるうちにお元気になりました。
 このような結果を見て、私たちが行っているサービスがいかにお年寄りの生活に役立っているのか、そして住み慣れた家で長く暮らすお手伝いができるのかということがわかってきました。それで仕事にも自信を持てるようになり、少しずつ宣伝も始め、現在多くの方にサービスを利用して頂けるようになりました」


▲第1回ヘルスショー(2015年)でエクササイズをする参加者たち

 最近では、「定期的な足のエクササイズで杖(つえ)なしで歩けるまでになった」「寝たきりのおばあさんを起こそう計画で、毎回車椅子に乗ることでベッドから離れることができ、規則正しい生活になった」「奥さんの介護に疲れていたご主人が介護士の訪問でひと休みできるようになった」などの朗報も寄せられているという。

 昨年(2015年)8月30日にはバンクーバー・ホームケア・ネットワーク社の1周年感謝パーティーがダウンタウンのウェストウッドで開催され、介護サービスに関心を寄せるシニアや介護士、同社の活動をサポートする人々など50名以上が参加した。食事、ゲームや漫才などの余興の後、日本の介護専門家とインターネットを通じて質疑応答を行い、日本の介護事情や問題点などについて勉強するなど有意義な記念パーティーであった。


▲ボランティアの皆さん

 阿部山さんは、「健康な方には老後に向けてしっかりと普段から準備することが大切です。体の準備として休息やしっかり食事をとることに始まり、人との関係づくりをすること、ひいてはそれが孤独死を回避することにつながります。老いていく体を受け入れて、身体的、精神的、金銭的に準備すること。医療システムの違うカナダで困った時に尋ねる情報機関を知っておくことが大事です」とアドバイス。

 そして、次のようなメッセージを送ってくれた。
「1年の活動を通して気づいたことは、我が社がお年寄りのサポートをすることはもちろんですが、日本人の雇用の場を作っているといううれしい効果があることでした。英語や経験の壁からなかなか仕事が見つからないことも多いでしょうが、ここでの経験を生かし次の仕事に挑戦する、そのきっかけの場になっています。
 さらなる野望としては、私たちの活動と地域の日本人コミュニティーが協力して地域の自助努力でお互いに助け合うシステムをつくることです。『あの人、このごろ見ないわね』とその地域にいる方が『気にかけて』あげる。そのことによって孤独に住む老人の方が減る、安否確認ができる、孤独死を避ける。こんな素敵な環境ができるまで、日本人として日本のコミュニティーに積極的に関わっていきたいと思っています」

■1月23日(土)「第2回ヘルスショー」開催決定!
 年に1度の日本語による健康トークショーです。
バンクーバーで活躍する8人の健康専門家が集結。歯科助手、ヨガ講師、看護師、シニアホーム・スペシャリスト、心理学者、ソーシャルワーカーなどが、体の仕組み、食事、ストレス、老後などについて予防医学の観点からお話をします。オリジナル健康手帳に血圧を記載してニコニコ自己管理。

■バンクーバーホームケアネットワーク社 お問い合わせ:
Vancouver Home Care Network
電話:1-778-960-4735
Eメール: info@vhcn.ca
ウェブサイト: vhcn.ca

・Vancouver Home Care Network 社は LVR Welfare Enterprise LTD の下で活動しています。

(2016年1月1日号)



 



 
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