【カナダ観光】
シーズンオフの冬だからこそ訪れてみたい
ケベック旧市街の博物館・美術館・ケベック料理店


〈 モントリオール・小柳美千世 〉   

 冬のケベック。クリスマスのイルミネーションが輝く時期に訪れてみたいとずっと思っていた。1608年、フランス人探検家サミュエル・ド・シャンプレンがケベックに街を築いてから400年以上の歳月が流れているが、いにしえの古都を偲(しの)ぶには、観光客でにぎわう夏から秋にかけての旧市街は、どことなくテーマパークの様相を呈していてちょっと騒々しい。ようやく、落ち着きを取り戻したこの時期の旧市街を、ただ、歩いてみたいと思ったのだ。

旧市街地散策ならホテルは城壁内に限る

 夏のフェスティバルや冬のカーニバルの時期には、ホテルの予約を取るのが難しく値段も高めになるが、シーズンを外せば、ネットでも簡単に予約をすることができ、お値段も希望価格で見つけやすい。
 有名なシャトー・フロントナック・ホテルは相変わらず高めのお値段だが、周辺にはB&Bが結構あるので、旧市街地を観光するのに便利な立地条件でお手頃価格の部屋が見つかる。また、B&Bなら簡単な朝食がついているので、寒い中、わざわざコートを着て外へ朝食を食べに出る必要もない。


▲ケベック旧市街の周囲を囲む城壁。公園では市民がアイススケートに興じる


▲ケベック旧市街の城壁内にある Hotel Jardin du Gouverneur 


▲ホテルの入り口

 私が利用したのは、シャトー・フロントナック・ホテルのすぐ後ろにある Hotel Jardin du Gouverneur( 16, rue Mont-Carmel, Quebec City, QC G1R )http://www.leshotelsduparc.com/index.php/
 一泊、2人用ベッドで$100前後(朝食付き/無料Wi-Fi/専用駐車場1日$20)。室内やリネン類は清潔で、ベッドのかたさもちょうど良くて寝心地快適。静かでどこに行くにも便利。満足できる滞在だった。やはり、旧市街を歩いて回るには、城壁の中のホテルがいちばん便利だ。

刑務所からカレッジ、そして今は博物館に変身

 何度か訪れたことがあるケベックではあるものの、今回、初めて中に入ってじっくり見たのが、旧市街地のちょうど中ほどにある MORRIN CENTRE(44 Chaussee des Ecossais, Quebec City, QC G1R 4H3 、 http://www.morrin.org/ )という博物館である。
 博物館といっても、ここはいっぷう変わっていて、200年ほど前までケベックで最初に設置された刑務所として利用された後、英語系のカレッジ(大学)として使われていたという両極端の史跡である。一般の人が見学できるようになっている。


▲その昔、刑務所からカレッジに、そして今は博物館「モーリンセンター」になっている建物


▲モーリンセンターに今でも残る牢獄の跡


▲博物館内には2万冊超の英語書籍を所蔵する図書館が・・・

 ここでは、ガイドツアーの説明を聞きながらじっくりと見てほしい。表の華やかな世界遺産の街とは違って、ここで実際に生活していた人たちの息づかいを感じることができるはずだ。今も残る牢獄には、何かで彫った落書きが愛きょうあるものの、窓にはガラスが入っていなかったというから、冬の寒さは最も厳しい刑罰になったのかもしれない。

 当時、ケベックの人口は40%が英語系(現在は2%!)が占めていた。新しい刑務所が設置されて、この刑務所が1868年に閉鎖になった後、スコットランド人で歴代の市長を務めた医師のジョゼフ・モーリン博士によって、ここに学校が設立された。モントリオールにあるマギル大学との提携により高度な教育システムが施され、有能な学生を養成したり女性の就学を認めるなどしたが、英語系の人口がケベックから流出していくにしたがって、1902年にその扉を閉じることになる。

 現在でも会員になれば利用できる図書館は、およそ2万冊以上の英語の書籍を所有している。当時の優雅さを今に伝えるビクトリアンスタイルの内装と家具に囲まれながら読書をするのも、なかなかオツなもの。
 ちなみに、この博物館は旧市街内で行われている心霊スポットツアーの出発地点でもある。人の気配のない冬のケベック旧市街地の夜は、寒さも手伝って、さぞかしぞっとすることだろう。ゴーストツアーのサイトは、ここ。
http://www.promenadesfantomes.com/

美術館でお気に入り画家の作品鑑賞

 刑務所つながりになってしまうが、今回、ケベックに行ったらゆっくり見たいと思っていたのが、Musee national des beaux-arts du Quebec(Parc des Champs-de-Bataille Quebec G1R 5H3、 http://www.mnbaq.org/ )の別館にあるケベックを代表する4人の画家の常設展だ。この別館は1867年から1970年まで刑務所として使用され、1991年から美術館の別館 Pavillon Charles-Baillairge となった。建物は州の重要建築文化財でもある。


▲美術館別館 Pavillon Charles Baillairge のJean Paul Lemieux 展示場


▲Jean Paul Lemieux の作品


▲Jean-Paul Riopelle の展示場


▲Jean-Paul Riopelle の作品

 私のお気に入りの画家は、Jean Paul Lemieux と Jean-Paul Riopelle 。全く趣向の違う2人だが、ともにケベックのアートを代表する画家である。この日は、誰もいない貸し切り状態の中で、質の高い作品をじっくりと味わうことができた。一点一点の絵画や彫刻を気の済むまで眺めることができるのは、何よりもぜいたくな時の過ごし方ではないだろうか。

 ランチタイムは、城壁の中にあるブランジェリー、Paillard(1097 Rue Saint-Jean, Quebec City, QC G1R 1S3、www.paillard.ca)をおすすめする。地元で大人気のパン屋さんなので、私が行った土曜日はお昼ということもあって、家族連れでにぎわっていた。
 あったかスープと大人気のショコラチンが、寒さで凍えた身体にホッと憩いのひとときを提供してくれた。


▲レストラン Aux Anciens Canadiens

 夕食は、宿から歩いて5分とかからないレストラン Aux Anciens Canadiens(34 Rue Saint Louis, Quebec City, QC G1R 4P3、http://www.auxancienscanadiens.qc.ca/ )へ。
 ケベックの郷土料理が食べられるとあって、シーズン中は予約を取るのが難しい。もちろん、オフシーズンだったので、予約なしでも席を取ることができた。

 おすすめは、グラスワインかビール、前菜、メイン、デザートはそれぞれ何種類かからのチョイスメニュー、コーヒーか紅茶のセットになっている $49 のコース。
 日中、歩き回って、お腹ペコペコ状態でよかった! かなりのボリュームで、食後のコーヒーをお替わりする頃には心地よい眠気が訪れた。

オルレアン島一周ドライブで6つの村巡り

 翌日、宿をチェックアウト時間の午前11時よりちょっと早めに出て、セントローレンス河に架かる橋を渡ってオルレアン島に向かう。島内にある6つの村を車で巡りながら一周するためだ。夏場などはサイクリングをする人やドライブする観光客で道が渋滞しがちだが、この時期、道端の露店は閉まっているものの、ケベックの街から数キロしか離れていないのに、どこか遠くの田舎に来た風景が目の前に広がり、ふと自分がどこにいるのかさえ忘れてしまう。


▲オルレアン島の村の教会

 路肩に車を停(と)めて、フランス植民地時代の民家の写真を撮ったりしながらドライブするには今が最適。およそ、1時間半ほどで周囲67キロの島を回ることができた。雪原の向こうに古い民家とセントローレンス河。そこはまさに Jean Paul Lemieux そのものの世界が広がっていた。

 冬のケベック。シーズンオフだからこそ、この街並みが持つ本来の静けさと暖かさを再確認できる旅となった。

(2016年1月1日号)



 



 
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