【食べある記・トロント編】
おしゃれに変身した歴史的カナダ料理
高い評判でにぎわう「BORALIA」


 日本からカナダを訪れるお客さんに「カナダ料理ってどんなものがあるの?」と聞かれたことはありませんか? そんなとき、大方の人は返事に困るのではないだろうか。改めて考えてみると「これがカナダ料理」というものがすぐには思いつかない。あえて挙げると、ロブスターやサーモン料理?

 ところがあるのです。れっきとしたカナダ料理が・・・。しかもヒストリカル、つまり歴史に基づいた確固たる料理である。タイムトラベルを感じるようなレストラン「Boralia」は、17世紀〜19世紀のカナダに存在した料理を今風におしゃれに変身させて供している。メニューはすべてオリジナルだから、まず他の店では見たことも聞いたこともないようなものばかり。といっても決して奇をてらったものではない。


▲間口が狭く、奥行きが深い店内。天井の梁(はり)がログハウスを思わせる

「Boralia」のオーナーシェフ、Wayne Morris さんと Evelyn Wu さんは、ケベックに植民地カナダを建設したとされるフランス人探検家、サミュエル・ド・シャンプラン(1574−1635)に関する資料や当時の料理本などを研究。「カナダの歴史をしのぶ料理をお客に楽しんでもらいたい」と努力した結果、2年ほど前に現在のようなメニューができあがった。珍しいというだけはなく、味がいいとの評判で連日お客でにぎわっている。


▲スナックのコロッケ。いろいろな材料が混ざり合ったエスニック風味付け

 メニューの数はそれほど多くない。一般的なオードブル、メインの肉料理、魚料理・・・という分け方はしていない。数品の「スナック」以外はすべて「TO SHARE」(メイン料理)として、「できるだけ多くの種類を皆さんで分けて召し上がってください」という配慮だろう。


▲ムール貝の白ワイン蒸し、パインスモークフレイバー。一見ふつうのムール料理だがムールの味つけと食感はピカイチ

 「TO SHARE」メニューの中からいくつかを紹介しよう。値段は1品15ドル前後が中心となっている。
 まず、お客の90%が注文するのが「L’eclade」(ムール貝の白ワイン蒸し、パインスモークフレイバー)。皿に盛られたムール貝にパインのスモーキーをとじこめてガラスのふたをしテーブルに運ぶ。お客の目の前でふたを取ると、煙とともにほのかなパインの香りがただよう。さらにムール貝のふわっとしたジューシーさはピカイチだ。ちなみにこの料理名の eclade は、きらめき、稲光などの意味がある言葉から付けられたもので、ガラスのふたを取る一瞬の動作を示しているのだろう。これは1605年の料理からヒントを得て創作されたもの。


▲ピジョンパイ。肉がやわらかく風味もいい

 次に人気があるのは「Pigeon Pie」(ピジョンパイ=$24)。鳩のヒナの胸肉をローストしたものにパースニップが添えられている。胸肉は鴨よりずっとやわらかく、臭みもない。1611年の料理。


▲ホワイトフィッシュのライスクラッカー添え(Kedgeree)

 魚料理で人気があるのは「Kedgeree」(スモークト・ホワイトフィッシュのカレー風味、ライスクラッカー添え )。パセリのピュレ入りクリーミーなソースと魚がマッチし、クリスピーなライスクラッカーが新鮮な感じ。1845年のレシピから。

 さらに鹿のレバーとフォアグラを合わせてパテにした「Venison Liver & Foie Gras Parfait」、野牛のタルタル「Bison Tartare」、エルクのロースト「Pan-Roasted Elk」、典型的カナダのヒストリック料理、うさぎのシチュー「Rabbit Rubaboo」など、めずらしい材料を使った料理がそろっている。このほかに野菜中心の料理もいくつかある。

 
▲シラバブケーキ。クリーミーなソースやアーモンドスライス、ブルーベリーがケーキの味を引き立てる

 デザートは「パンプキン・ブレッド・プディング」、「Louisbourg 風ホットチョコレートのベニエ」、イギリスの伝統ケーキ「Syllabub Cake」(シラバブケーキ)など。どれも歴史を感じるオリジナルデザートである(いずれも$9)。

 アルコール類はカクテル、ワイン、ビール類がそろっている。ちょっと変わったドラフトビールもあり、試してみるのも一興か。

 普段あまりなじみのない料理が多いが、ウエーター、ウエートレスは丁寧に説明してくれるのが、とても感じよく、うれしい。


▲地下のトイレの前に置かれた木彫りのオオカミがカナダ建国時代をしのばせる

■ Boralia
 59 Ossington Ave.(Queen St. West の北)
 Tel:647-351-5100(要予約)
 オープン時間:水曜〜日曜/午後5時30分〜10時(月曜&火曜休み)

www.boraliato.com

【取材を終えて】最近「Boralia」はレストラン関連の本で紹介されたりウェブサイトでも大変評判がいいのを知っていたが、メニューを見ると「大丈夫かな?」という一抹の不安があった。しかし、お客が次から次へと入ってくるのと、まず出された一品目を食べて不安は一掃。いつの間にか幸せいっぱいになっていました。

〈リポート:いろもとのりこ〉

(2016年1月14日号)



 



 
(c)e-Nikka all rights reserved