北極熊の生態を自然環境に設定した施設で見学
ウイニペグ市内の動物園「Journey to Churchill」


〈 リポート・ブラント弥生 〉

 「ウインターペグ」の別名を持ち、厳寒と果てしなく続く大平原ぐらいしか自慢できなかったマニトバ州ウイニペグ市ですが、雑誌「National Geographic」の「Best Trips of 2016」トップ20に選ばれたことをご存じですか。

 これには市の動物園内に北極熊を9頭も保護育成する「Journey to Churchill」(チャーチルへの旅)、2014年にオープンした「Human Rights Museum」(人権博物館)、その付近のレッドリバー上でのアイススケート、さらに毎年催される冬のお祭り「Festival du Voyageur」などが含まれています。また、2015年に動物園/水族館協会から最上位賞を受けています。


▲「Journey to Churchill」入り口の看板

 まずは、この「Journey to Churchill」をご紹介しましょう。
 チャーチルは「北極熊の首都」ともいわれるマニトバ州の北、ハドソン湾の西南に位置する小さい町です。湾に氷が張ると北極熊がアザラシ狩りに行く通り道になっており、世界各地から観光客や写真家などが集まります。

 私も日本の写真家の通訳として4回ほどチャーチルに行っていますが、ウイニペグから飛行機で2時間、電車では約2日と、なにぶん遠いのです。そこでウイニペグ市内のアシニボイン公園の動物園内にこのチャーチルの自然環境に似せて建設され、2014年に完成したのが「Journey to Churchill」です。今では9頭もの北極熊が住んでいます。


▲雪に遊ぶ北極熊の兄弟


▲仲良し兄弟 

 北極熊の中で、一番年上がストーム、5歳。母グマから離れたばかりでチャーチルの街中に何度も入って来て人と接触、かみついたといういわく付きの熊。普通なら殺される運命にあったのですが、ここで保護されリハビリをして、今では母グマと住んだ経験のある貴重な熊として仲間の世話をやいているとのことです。

 そのほかにトロント動物園から移って来たハドソンとハンフリーは兄弟。ブリザードとスターは兄妹。オーロラとキャスカ、それにお目見えはまだですが、目下、園内の保護センターでリハビリ、トレーニング中のヨークとイーライは兄弟です。いずれも母親に死なれたか置き去りにされたかで、母親なしでは生きてはいけずに救助された熊たちです。


▲カリブー2頭


▲雪の上で眠る北極キツネ

 取材した日(1月6日)は零下8度。雪が散らつき、園内に入ると、まず大きなイヌクシュク(Inukshuk =極北の先住民が石を積んで作ったオブジェ)が「Journey to Churchill」へといざないます。カリブーが大きな角(つの)に雪を積もらせて立ち、さらに行くと北極キツネが洞穴の辺りをウロウロ。眠っているキツネもいます。でも、毛が真っ白なので雪にまぎれてよく目を凝らさないと・・・。

 そしてその上の丘には長い毛に覆われた Muskox(ジャコウ牛)、そしてさらに上を見上げると、狼(おおかみ)が数匹たむろしています。あの狼たち、丘などひとっ飛びなんじゃないかなと思いつつ、「Gateway to the Arctic」(北極への道)の建物に入ると、大きなガラスの向こうに、いました、いました。2頭の熊がバケツに首を突っ込んでそれを取り合って遊んでいます。


▲「Gateway to the Arctic」の水槽に入ってきた北極熊


▲魚を追いかける


▲オケと遊ぶ熊 


▲水槽トンネルから戯れる2頭の熊を見上げる人々

 更に進むと、巨大水槽トンネルがあり、1頭がアークティックチャー(Arctic Char =北極イワナ)を捕らえようと歯をむき出しにして泳いだり、バケツと遊んだりしていました。しばらくすると、もう1頭も水に入って来て2頭で戯れ泳いでいます。近くに来るとかなりの迫力で、ガラスの水槽が壊れないようにと、一瞬、祈りました。


▲ガラス越しにアザラシと遊ぶ

 それを過ぎると、アザラシが優雅に泳いでいて、係員がガラス越しに指でアザラシと遊んでいました。ペン、ハンカチなどを見せると興味津々(しんしん)で寄ってきます。考えてみれば、北極熊はアザラシの天敵ですから、お隣同士とはいかがなものかとふと思いましたが、係員によると、お互いのにおいを嗅(か)ぐことによって緊張を保ち、それが自然でいいのだそうです。

 建物を出ると北極熊が巨体を雪の中にこすりつけたり丘を滑ったりしているのが見えます。チャーチルの湾岸で見た大きな岩の上や岩陰にも見えます。それを見ながらしばらく行くと、レストランに行き着き、お腹もすいてきた頃で ランチタイム。ランチを食べていると、2頭の熊が戯れながらレスリングをしているのがガラス越しに目の前に見えます。


▲レスリングをして戯れる北極熊 


▲おなかを冷やしてひと休み(食堂より撮影)

 兄弟熊、それにまだ若い熊が多いせいか、水槽の中でも外でもよく遊んでいるのが見えます。食事をしながらの見物は迫力いっぱい、最高のエンターテイメントでした。去年の春にも見に来たのですが、冬の雪の中での北極熊は特に生き生きとしているように見えました。

 腹ごしらえができたところで「Gateway to the Arctic」の建物に戻り、見過ごしたオーロラシアターで北のリズムと題した8分のフィルムを見ることに・・・。このシアターは360度ぐるりと見渡せる円形の部屋で、そこに立つと、まるで北極圏にいるように四季を感じることができ、オーロラも頭上で踊っていました。

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 さて、今年はウイニペグも暖冬で、ようやく1月10日ごろから日中でも零下20度前後となっています。本物の冬は始まったばかり。1月28日からはレッドリバーとアシニボインリバーの分岐点、フォークスで「アイスフェスティバル」がオープンの予定です。川の流れが例年になく速く、氷の厚さがまだ安全ではないと危ぶまれていましたが、この分では数日もすれば大丈夫だそうです。中国から40人ものアイス彫刻家が来ていて、どんな氷の彫刻作品を見せてくれるか楽しみです。

 今年で47回目という「Festival du Voyageur」も2月12日(金)から21日(日)まで開催されます。これはフランス系カナダ人、特にメティ(Metis)と呼ばれるフランスと先住民の混血の人たちが主催し、その歴史文化紹介を体験できる冬のお祭りです。

 ウイニペグは先住民とヨーロッパ人との毛皮の交易から始まった町で、その昔、カヌーで毛皮を北から運んだ Voyageur(旅人=その多くが Metis)をしのんで名前が付けられたようです。日毎のコンサートとランチ、ヒゲ伸ばしコンテスト、バイオリン・ジギングコンテスト(Jigging Contest)、雪の彫刻など、見どころが山盛り。このお祭りが終わる頃には大寒も過ぎ、春の足音が近づいてくることでしょう。

・Festival du Voyageur
2月12日(金)〜21日(日) 10日間
ウイニペグ市内の各所で開催

■フェスティバルの内容・日程・入場料など詳細はウェブサイト参照  
http://festivalvoyageur.mb.ca/en/

(2016年1月21日号)



 



 
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