叙勲受章の喜び、マーティン・コバヤシ氏
日系コミュニティーでボランティア精神発揮


〈 まとめ・色本信夫 〉

 トロント日系文化会館(JCCC)の元理事長で現在も日系コミュニティーのために活動を続けているマーティン・コバヤシ氏は、日本国政府から平成27年(2015年)秋の叙勲が発表されたが、その叙勲伝達式が、1月27日、トロント総領事公邸で行われた。


▲旭日双光章を胸に、マーティン・コバヤシ氏(1月27日、総領事公邸での叙勲伝達式にて)

 外国人叙勲対象者として叙勲が決定したもので、コバヤシ氏の長年にわたる日本文化紹介、日本とカナダの友好親善および日系社会の結束を固めた同氏の顕著な功績に対して「旭日双光章」が授与された。

 公邸における叙勲伝達式では、中山泰則トロント総領事から表彰状と勲章が伝達され、祝辞が送られた。


▲(左から)マーティン・コバヤシ氏の息子ケヴィンさん、マーティン・コバヤシ氏、娘クリスティンさん、中山泰則トロント総領事

 コバヤシ氏は本紙に次のようなコメントを語ってくれた。
「第二次世界大戦で両親は大変な苦労をして、戦後、カナダ西海岸から東部のトロントに移りました。両親は日系人同士、共に力を合わせてトロント日系文化会館の建設に尽くしました。その血を受け継いで私も幼い時から日系コミュニティーのために出来る限り協力してきました。このたび叙勲をいただいたのも、自分ひとりだけではなく、何百人、何千人の人たちのボランティアの力によるものです。ともに活動してきた皆さんのおかげです。この感謝の気持ちを忘れずに、これからもしっかり励んでいきたいと思います」

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 マーティン・コバヤシ氏はトロント生まれの日系三世、60歳。父親の故コビー・ユタカ・コバヤシ氏と母親ヨネさんも日系コミュニティーに積極的に協力をしてきた。1996年、トロント日系文化会館が現在の場所の建物を購入、移転した後、改築計画の中でイベントホール建設の必要性が持ち上がったが、その時、コビー・コバヤシ氏とヨネさん夫妻は建設資金として300万ドルをポンと寄付。こうしてイベントホールが完成した。それが「小林ホール」である。

 マーティン・コバヤシ氏は、トロント日系文化会館の旧館だった1982年、弱冠27歳にして 会館の理事に就任。以来、33年にわたり同会館の運営に携わってきた。


▲「三世クワイヤ」のメンバーだったころのマーティン少年(前列右端)(1964年4月25日)


▲ジャスティン・トルドー氏(現・カナダ首相)がトロント日系文化会館を訪問。右端がマーティン・コバヤシ氏(2004年10月20日)


▲天皇・皇后両陛下をトロント日系文化会館にお迎えするマーティン・コバヤシ氏(右から2人目)(2009年7月9日)

 1984年、日系三世として初めて 理事長のポストに就く。途中、理事職に替わることもあったが、2009年まで通算12年、理事長を務めた。こうして、日系コミュニティーの信頼を得て強いリーダーシップを発揮し数々の文化イベントを企画・実施するなど、日本文化の紹介に尽力した。そして日系コミュニティーの結束を固めることに大きく貢献した。
 2009年に理事長職を退いた後も、今日にいたるまで大変な熱意をもって日系社会のために精力的な活動を続けている。

 日本文化の紹介・普及に関していえば、「メトロキャラバン」でのコバヤシ氏の奮闘ぶりは特筆に値(あたい)しよう。メトロキャラバンは、多様性文化を尊重するカナダの国策にのっとり、トロントに暮らす世界中のエスニック系の人々が異文化をそれぞれ披露し合って、理解・友好を深めるという趣旨のもとに1969年から始まり、1990年代ごろまで毎年、夏の時期に2週間、トロント市内各所でお祭りイベントが展開された。


▲「メトロキャラバン」でベストパビリオン賞の受賞を喜ぶ「東京パビリオン」関係者。前列右から2人目がコバヤシ氏(1988年夏)

 メトロキャラバンには世界の国々の約50都市が参加、それぞれの祖国の都市のパビリオン(館)を開設した。トロント日系文化会館は「東京パビリオン」として日本の文化・伝統芸能・武道・和食などの紹介に努めた。この企画は他の民族の間でも大好評で、キャラバン本部からほぼ毎年のように「ベストパビリオン賞」が授与されるという状態だった。

 コバヤシ氏は、東京パビリオンの実行委員の一人として大奮闘、その間に焼き鳥担当や駐車場整理員まで、いろいろやりこなした。以来、暑い日も寒い日も駐車場に立っている姿が見られ、いつの間にか「The Parking Guy」(ザ・パーキング・ガイ)のニックネームがつけられるようになった。

 東京パビリオンは一般カナダ人の対日理解と関心度を高めるうえで大きな効果をもたらし、その成功によってトロント日系文化会館の会員が増え、武道や文化クラスの生徒が急増した。
 また、コバヤシ氏は1981年に発足した「トロント諏訪太鼓」の代表役を務め、和太鼓という日本の伝統音楽の普及に力を尽くした。


▲日系コミュニティー夏のビッグイベント「JCピクニック」でビンゴゲームを担当するコバヤシ氏(2012年7月1日)

 さらに、「日系カナダネットワーク」の委員長として、日系人および日本関連のさまざまなグループ間の意思疎通を図り、日系社会全体の協力体制の整備に貢献した。

 実業家として会社経営に携わるとともに、両親の日系コミュニティーに対する奉仕の精神をしっかり引き継いだのであろうか、コバヤシ氏のボランティア活動への情熱は、まだまだ冷めそうにない。

(2016年1月28日号) 
   



 



 
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