【インタビュー】

国際交流基金トロント日本文化センター
岩永絵美所長
「パートナーシップを大切に文化交流事業を推進したい」


〈 インタビュア・色本信夫 〉

 国際交流基金トロント日本文化センター(Japan Foundation, Toronto)の岩永絵美(いわなが・えみ)所長に新任の抱負などをうかがった。


▲岩永絵美所長

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 昨年11月に着任したばかりの岩永所長。前任地ハンガリーでは国際交流基金ブダペスト日本文化センターの所長として5年半、務めてきた。トロントには以前、観光と出張で訪れたことがある。出張で来た際には、当時の本田修所長のアレンジにより、日本研究者・翻訳家で知られるテッド・グーセン・ヨーク大学教授に会い、貴重なお話を伺ったという。

 このたびトロントに赴任することが決まってから、ハンガリーと日本の駐在カナダ大使などを表敬訪問、ジャスティン・トルドー首相が選出されメディアの注目を浴びる様子をも関心をもって見守ってきた。
「カナダ国民は多様性に富んでいると聞きましたが、来てみて、それを実感しました。共通の価値観をもとにこの国を築いていこうという雰囲気が感じられます。国民が互いに助け合っていく、このやり方がカナダなのだと思います」

 ここで、岩永さんの経歴を簡単にうかがってみた。岩永さんは、東京都出身。都内の大学の英文科で学ぶ。学生時代は演劇のクラブ活動を楽しんだ。ある日、国立劇場に京劇(中国の伝統的な古典演劇)を見に行って、強烈な印象を受けたという。この時の体験と日本と海外との交流に携わるようになりたいという思いが、のちに職業を選ぶ大きな要素になったのかも知れない。1984年に卒業、国際交流基金に就職する。

 基金でいくつかの部署を経験した後、職場のサポートを得て、米コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジ(大学院)に留学、アーツ・アドミニストレーションを専攻する。
 職場復帰後、初の海外赴任としてニューヨークで1998年から2003年まで4年4カ月務める。その後、一時期、東京都歴史文化財団東京芸術劇場(池袋)に出向。2010年、国際交流基金ブダペスト日本文化センターの所長を任ぜられ、5年半、ハンガリーに駐在する。

   岩永さんは中欧諸国だけでなく、ルーマニア、ブルガリア、バルカン諸国など、合計13カ国を担当、各国にある日本国大使館とも連携して文化交流の仕事を行った。日本語教育の推進、日本研究・知的交流、文化芸術を通じた交流が、基金の活動の三本柱だ。


▲ハンガリーとポーランドの折り紙作家たちと、特別展示会場(ハンガリーの Polish Institute)にて。左から4人目、浴衣姿の女性が岩永絵美・国際交流基金ブダペスト日本文化センター所長(当時)、左端の女性は同 Institute の所長(2015年8月)写真提供:Polish Institute


▲「Noh x Contemporary Music - Meeting between Aoki Ryoko and Peter Eotvos」能×現代音楽公演のイベントで指揮者ペーテル・エトヴェシュ氏(世界的に有名な現代音楽作曲家)に花を贈る岩永絵美氏。右後方は能楽師の青木涼子氏(2015年9月、ブダペスト・ミュージックセンターにて)

「ハンガリーは、親日的な国で、日本語の教育に熱心に取り組んでいます。私が赴任した頃、ちょうど日本の企業から貴重な民間資金を得て、マジャール語を使った日本語の教科書をつくる作業が始まっていました。ハンガリー・日本両国の日本語教育専門家が協力して取り組んでいました。教科書のタイトルは、「Dekiru(できる)」。その後、ハンガリーで本格的な日本語の教科書が完成、同国の教科書会社から出版され、市内の本屋でも入手できるようになりました。出版業界から最優秀賞を受けた時はさすがに関係者一同、喜びました」

  「中欧の社会が変わっていこうとする時期に、このような仕事をすることができて、とてもやりがいがありました。日本語教育だけでなく、基金の事業を通じて日本の多様性に興味を持ってくれればいいと考えます」

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新任地トロントでは、どのような仕事を?
「各界各層のカナダの人々に対して、オープンな姿勢でいたいです。日本に関心を持ち、いっしょに仕事ができるような考えを共有したいと思っています。それには日本国大使館・総領事館、日系人、関連組織・団体との協力、パートナーシップを大切にしていくことが重要です」

 日本語教育に関しては、現在、カナダで日本語を学んでいる人は約2万人いるという。潜在的な人はもっと多いだろうと岩永さんは推測する。

 「文化や芸術を通して、日本についてより深く知りたいと考えている人は大勢いるはずです。このような人のために当センターの公開レクチャー、展示や公演、催し物やライブラリーなどもおおいに利用してほしいものです。伝統と現代がうまく組み合わされた日本紹介ができたらいい。そして、皆さんから『トロント日本文化センター、なかなか面白いのでは』と言われるようになりたいですね」

 岩永さんに、さしあたって、2月〜3月のイベント予定を教えていただいた。

・2月12日(金)午後6時30分―8時15分
建築家・千葉学(ちば・まなぶ)氏によるレクチャー
「Designing Places for People to Meet」(入場無料)
George Ignatieff Theatre : 15 Devonshire Place, Toronto

・2月23日(火)午後6時30分―8時
エール大学東アジア言語学・文学・演劇学教授
ウィリアム・フレミング氏 Prof. William Fleming によるレクチャー
「Chushingura & the Edo Literary Imagination」(入場無料)
The Munk School of Global Affairs :
1 Devonshire Place, Room 108N Toronto

・2月27日―28日 シネマ歌舞伎上映会(有料)
2月27日(土)午前11時30分 「鏡獅子」
2月27日(土)午後1時30分 「三人吉三」
2月28日(日)午前11時00分 「熊谷陣屋」
2月28日(日)午後1時30分 「籠釣瓶花街酔醒」
The Bell Lightbox : 350 King Street West, Toronto

・3月3日(木)午後6時―8時
横浜市立大学グローバル都市協力研究センター特任教授/
名古屋大学名誉教授(環境システム工学専門)
井村秀文(いむら・ひでふみ)氏によるレクチャー
「Planning for Smart Cities in Japan」
The Munk of Global Affairs :
1 Devonshire Place, Room 108N Toronto

( 問い合わせ:416-966-1600 www.jftor.org/events

 3月には「ツーリズム」をテーマにしたイベントを計画しているそうだ。食文化ツーリズム、トピック別ツーリズムなど。さらに、日本のポップカルチャーに関する企画も紹介したいとしている。
 2年後の2018年には、日加修好90周年がやってくる。これを機に日本とカナダ間の相互理解が一層深まるような企画をしたいと岩永さんは意欲満々である。

 「カナダのパートナーとも一緒になって文化交流の任務を着実に遂行して行きたい。すでに先人たちのお蔭で築かれた良好なパートナーシップのもと、一層良い関係を築いて行くことが大事だと考えます」
 トロントでの活躍が期待される。

(2016年2月11日号)



 



 
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