【和食・日本酒イベント】

日本の調味料と現地の食材の取り合わせ
和食・日本酒デモンストレーション〈日系センター〉


 2月26日、BC州の日系センターで、「和食・日本酒デモンストレーション」(Cuisine Crossover)と題して、 和食2品のデモンストレーションとこれらの料理に合わせた日本酒2種類の紹介イベントが開催された。在バンクーバー日本国総領事館と日系プレースの共催による。


▲今回デモンストレーションされた和食2品と日本酒2種類


▲(左から)日本酒の紹介を行った渡井清憲さん、宮本レイさんと岡田誠司バンクーバー総領事

 和食のデモンストレーションは、日本国総領事公邸の岩坪貢範(いわつぼ・たかのり)公邸料理人、そして日本酒2種類はBC州日本酒協会(The Sake Association of British Columbia)の D Way Beverage Inc. 社の宮本レイさんから「真澄」、JIZAKE JAPAN CANADA 社の渡井清憲(わたい・きよのり)さんから「天の戸・美稲」(Amanoto Umashine)が紹介された。  


▲和食料理のデモンストレーションを行う公邸料理人、岩坪貢範(いわつぼ・たかのり)さん


▲試食用酒粕風味チキン・レバー・パテの盛り付け

一品目「酒粕風味チキン・レバー・パテ」
 チキン・レバーを酒粕とミルクに半日漬けたものを野菜と一緒に調理して、ブレンダーにかけてバター酒粕クリームを混ぜ、ざるで濾(こ)し、味を調(ととの)え、冷蔵庫で固めたもの。調味料のタイムやクミンも使っている。
 酒粕は生臭さなどのにおいも消すし、アミノ酸を多く含む健康食品で、味もマイルドになるので、最近はマリネなどに使われるようになってきた。

 この料理には純米吟醸の「真澄」が紹介された。辛口系であるが、さっぱりしたフルーティーな口当たりの真澄は、レバーなどのこってりした料理とも相性が良い。酒はホット(熱燗)のイメージがあるが、吟醸系は冷酒が一般的とのこと。

▲リブ・アイにはたっぷり、わさびをぬる ▲試食用リブ・アイのわさびマリネ・ソテー盛り付け


二品目「リブ・アイのわさびマリネ・ソテー」
 塩・コショウしたリブ・アイ(牛肉)にわさびを塗りソテーしたものに、チキン・ブロス、醤油、エストラゴンを煮詰め、最後にケーパーを入れたソースを添えたもの。付け合わせの野菜は下ゆでして、山椒の粉とバターでいためたもの。わさびで肉の味も引き締まり、香りも良くなるし、山椒の野菜炒めは爽やかさを感じさせた。

 この料理には純米酒の「天の戸・美稲」が紹介された。香り、味ともに真澄より濃い目で、冷酒あるいは人肌温度くらいに温めてサーブされる。また、プレミアム酒は防腐剤などを使っていないので冷蔵庫で保存し、空気抜きをしておくと良い。苦みを感じるようになったら酸化が始まった証拠とのこと。

 今回の料理は参加者にとっても目新しく微妙な味を感じさせてくれた。日本酒の魅力も大いにアピールできた様子で、「これからはパーティーに日本酒を持っていきたい」という声があちらこちらからあがっていた。

 今回のデモンストレーションを行った岩坪氏は岡田誠司総領事の公邸料理人として3年間バンクーバーで過ごし、専門はフレンチ・ジャパニーズ・フュージョンという、洋食の世界では打ってつけの役柄でもあったし、想像出来ないほどの多くの料理をこなしてきた。
 今回のイベントについて、さらにバンクーバー生活の感想を岩坪氏にうかがった。


▲岩坪貢範公邸料理人

食材のコンビネーションがポイント
 今回のイベントで一番重点を置いたのは、日本の調味料と現地で手に入りやすい食材のコンビネーションです。酒粕や山椒、生の山葵(わさび)など、ふだん目にすることのない調味料を紹介することができました。しかも、現地で手に入る食材を使いました。スーパーで買えるものでも日本食のテイストが出せることを紹介したかったからです。
 冷酒で提供し、料理に合わせることも見ていただきたかったことの一つです。

 日本酒は生臭みを消したりする効果もあり、どんな料理とも合わせることができると思います。個の主張は弱いですが、それゆえに調和することができます。 個性の強い原酒などの酒もあるので、工夫のしがいのあるテーマです。

現地の食材とそこに住む人の嗜好を大切に
 バンクーバーでジャパニーズ・フュージョン料理を作るに当たり、現地の食材とそこに住む人の嗜好(しこう)などを大切に考えました。文化がいろいろなところから入ってきている歴史もありますし、昔から好まれてきた食材もあります。 土地の食材やものに敬意を払い 日本のおもてなしの技術と精神で包む そのような イメージで料理を作ってきました。

 バンクーバーでは日本の食材がだいたいのものは手に入ります。大西洋側からも食材が入りますし、山や川、海の恵みが豊富です。日本酒も種類が多いですね。

 料理は創作なので、公邸という特定の人物をおもてなしする場所ではこれが正しいのだと思います。技術的なことは伝統から外れず、日本酒のペアリングにも見られるように、組み合わせを試していくのは大事なことです。

日本を外から見られた絶好のチャンスでした
 日本にいるより、文化や芸術が身近に感じられる3年間でした。日本という国を外から見るという絶好のチャンスに恵まれました。日本人であり、フランス料理という外国の料理を専攻し、バンクーバーでさまざまなお客様に料理を作ってきたという、自分のオリジナルを今後に生かしていきたいです。
 また、この経験を生かして他の国での公邸料理の経験も積んでみたいです。そして公邸での料理スタイルのお店をやってみたいですね。

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 岡田誠司総領事はイベント紹介の挨拶で「2013年には和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、国際的にも認められる食文化となりました。グレーターバンクーバーでは日本食レストランが850軒もあるほどポピュラーになってきました。外交においても食事は大切なルーツになっています」と話した。
 和食は美味しい健康食としてこれからもますます世界に広がっていく成長株であろう。これからの岩坪氏の活躍も楽しみであるし、今回の体験を生かした大いなる飛躍を期待したい。

〈 リポート・妹尾 翠 〉

(2016年3月10日号)



 



 
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