自然を堪能するアラスカクルーズ(後編)
アラスカの歴史を知る貴重な経験に・・・


〈トロント 松井祐実・記/ 写真撮影:Richard Severin〉

 アイシー・ストレート・ポイントに続いて立ち寄ったのが、シトカという町。ジュノーがアラスカの首都になる前まで首都であった所である。

 シトカは、また、アイシー・ストレート・ポイントと同様、先住民クリンギット族が定住していた場所でもあった。1799年、ロシア人がこの地を踏み、町を形成したが、ロシア人とクリンギット族との間で争いが生じ、結果、ロシア人が勝利。要塞を造り定住して、シトカはロシア領アメリカの首都となる。

 その後、ロシア経済の悪化により、1867年、ロシアはアラスカをアメリカに売却することとなった。以来、1906年に首都がジュノーに遷都されるまでシトカはアラスカの首都を守り続けた。歴史深い町である。


▲シトカの港付近。ここからダウンタウン行きの観光用バスが出発する


▲町の外れにあるシトカ歴史国立公園。雨がひどく、雨宿りがてら立ち寄ったが、見ごたえのある博物館であった

 シトカ滞在中はあいにくの大雨であったが、シトカは観光業が盛んなようで、クルーズ船観光客用に港から町まで無料の送迎バスを用意してくれていた。私たちは町まで観光バスに乗り、町から外れにある、シトカ歴史国立公園へと向かった。かなり雨が降っていたので、時間がかかったが、歩いて約20分ぐらいであろうか。まず雨をしのぐため、国立公園内に建てられたビジターセンターへ。


▲博物館には先住民クリンギット族の歴史やトーテムポールの展示など興味深いものが多い

 ここにはクリンギット族が作ったたくさんの大きなトーテムポールが並べられている。それぞれに違ったデザイン、顔を持つ。それぞれのトーテムポールには意味があるという。ここではトーテムポールやお面づくりの実演も時間帯によって見ることができるようだ。クリンギット族についての展示などもある。


▲公園の中にたたずむトーテムポール。いたるところに違うトーテムポールが・・・。それぞれ意味があるそうだ

 2時間ほどビジターセンターで雨宿りをするが、全く雨が止む気配がないので、公園の中を散策することにする。森林の中を歩くと、所々にトーテムポールが点在している。30分ほど歩くが、雨足がだんだんひどくなるので引き返し、またビジターセンターに入り、雨が少し止んだ頃に町へ向かって歩き始めた。


▲シトカのダウンタウン。雨がひどいので観光客はほとんどお店の中へ


▲クルーズ観光客に振る舞われたサーモン。とても美味しかった

 町を通り過ぎ、船に戻る途中、観光客用のお土産屋がたくさん軒を連ねてセールをしていた。私たちのクルーズ船が年内最後の停泊船のようで「感謝セール」のようになっていた。また各所でハンバーガーやサーモンの実演があり、クルーズ船の観光客は飲み物と共に振る舞われた。とても美味しいサーモンであった。


▲アメリカがロシアからアラスカを買った歴史的な場所、キャッスルヒル

 この付近一帯は、前述した要塞があるバラノフ・キャッスルヒル州立歴史地区で、広さ0.4ヘクタールの公園になっている。またクリンギット族が丘の上に戦略的な要塞を築いていた所でもある。そして1867年にキャッスルヒルの上でロシア人がアラスカを正式に米国へ譲渡した歴史的場所でもある。シトカもアイシー・ストレート・ポイント同様、先住民の歴史とアメリカ、ロシアとの関係を知る意味で歴史深い場所であった。


▲ビクトリアのダウンタウンエリア。20年前とはすっかり変わって都会化している

 シトカを後に向かった次の目的地はカナダのビクトリア。20年以上前に訪れたことがあったが、今回のクルーズで行って見て、あまりの変わりようにとても驚いた。20年以上前に行ったときには、普通の田舎町で、エンプレスホテルとブッチャードガーデン以外は、特に何もないところであったと記憶していた。しかし今はすっかり観光化され、町も整備されてきれいになっていた。

 ビクトリアの海沿いには豪邸が立ち並び、定年退職をしたお金持ちがたくさん住んでいそうな雰囲気が漂う。気候も良く、9月後半でも汗ばむぐらいの暖かさで、コートなどももちろん必要なし。
 港から私たちは歩いてダウンタウンへ。30分弱ほどでエンプレスホテルが見えてきた。アラスカとは町の規模が全く違い、たくさんの人が町を歩いていたり、たむろしたりしている。結局、私たちはダウンタウンをぶらぶら歩き、チャイナタウンへ行ったりして、クルーズ船に戻る。

 どうでもいいことなのだが、町中を歩いていて、ひとつ気になったことがあった。カナダなのにビクトリアにはどこを見渡しても「ティムホートンズ」がないのである。見つかるのは「スターバックス」ばかり。これもアメリカ人観光客を意識しての影響なのか、地元の人に聞いてみると郊外にはあるとのことであった。

 ビクトリアを後にバンクーバーに戻り、10日間のクルーズは終了となった。自然を堪能し、知らなかった歴史をまた知ることができ有益で貴重な旅行であった。


▲今回利用したノルウェージャン・クルーズライン。10日間のクルーズを快適に過ごすことができた

 最後に、今回参加したノルウェージャン・クルーズであるが、前回のホーランドアメリカとはまた違い、コンセプトはフリースタイル。ドレスコードがなく、好きな時にカジュアルな服装で食事ができる。クルーズ料金に含まれているレストランは6つ、有料レストランは8つと、全部で14のレストランが船内にある。
 有料レストランは予約を入れなければいけないが、料金に含まれているレストランは空きがあればいつでも入れる。また有料レストランには鉄板焼きもあり、かなり人気があるようだ。

 私的にはどちらのクルーズも良し悪しがあって、どちらがいいとか悪いとかはない。部屋の広さもどちらも同じで、唯一、ホーランドアメリカにはバスタブがあり、ノルウェージャンはシャワーのみだったことを除けば、甲乙をつけがたい。

 それにしても、クルーズはやっぱり楽である。動くホテルで、なかなか行くことができない所へも連れて行ってくれる、ありがたい乗り物である。(おわり)

(2016年4月21日号)



 



 
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