古都リスボン、71歳女ひとり旅(4)
新旧2つの顔を持つ市場
対岸にそびえ立つキリスト像


〈リポート・いろもとのりこ〉

■歴史的建物内に新感覚フードコートが人気の市場

 地下鉄グリーンラインの終点、カイス・ド・ソドレ駅(Eatacao do Cais do Sodre)から徒歩1〜2分のところにリスボン市民の胃袋を満たすリベイラ市場(Melcado da Ribeira)がある。テージョ川(Rio Tejo)のすぐそばでリスボンの中では西南に位置している。

▲リスボン市民の胃袋を支える市場「メルカード・ダ・リベイラ」の正面 ▲市場内の部屋の入り口には美しいタイル模様



▲市場の生鮮食品部門。円内は、春から夏にかけて美味しい新鮮なイワシ


▲市場内の花屋。お祝いのブーケにもお国柄が出る

 この市場は1876年に建てられたというから140年間も営業していることになる。正面から向かって右側が生鮮食品分門で、鮮魚、肉、野菜、果物、生花などの店がずらりと並んでいる。特に魚は大西洋やジブラルタルなどから送られてきた旬(しゅん)のイワシやイカ、タコ、鯛(たい)、大小エビ類、貝類など種類は豊富。


▲メルカード(市場)の中のフードコート(約80店ある)。お店で買った物を中央のテーブルでいただく


▲スペイン南西部の特産、イベリコ生ハムはポルトガルでも人気がある

 向かって左側は、新しいスタイルのフードコートになっていて、周囲に約80店舗の食べ物屋が並んでいる。ポルトガル風シーフード、ピザ、サンドイッチ、アラブ風料理、中華風料理、カフェバーなどがあり、さまざまな料理が味わえる。お昼時は安くておいしいとの評判を得て、地元のサラリーマンなどで大にぎわいとなる。

◎市場のオープン時間:生鮮食品は火〜土曜の午前5時〜午後2時、フードコートは水〜土曜は午前10時〜午後10時、日〜火曜は午前10時〜午後7時

■リオのキリスト像を模した「クリスト・レイ」&「4月25日橋」

 リスボン旧市街の展望台やテージョ川付近から対岸を見ると、赤いつり橋「4月25日橋」(Ponte 25 de Abril)とともに左横に白い塔のようなものが見える。これが「クリスト・レイ」(Cristo Rei)である。ブラジルのリオデジャネイロの丘に建つキリスト像を模して1959年に完成した。


▲フェリーから見える「4月25日橋」とキリスト像(左端)

 ここへ行くには、地下鉄カイス・ド・ソドレ駅から市場と反対方向に数分、テージョ川に向かって歩くとフェリー乗り場があるので、対岸のカシーリャス(Cacilhas)行きに乗る。フェリー乗り場はけっこう大きく、いろいろな方面に出ている。カシーリャスまで約6〜7分で着く。このフェリー料金(片道3ユーロ)。


▲クリスト・レイのバスターミナルには立派な建物があり、中にはレストランやギフトショップ、パーティー会場などが・・・


▲リオデジャネイロのキリスト像を模したクリスト・レイ

 カシーリャスに着くと、前がバスターミナルになっている。101番のバスに乗り、商店街や住宅地の坂道を約15分どんどん上がって行くと終点クリスト・レイに到着。高さ110メートルのキリスト像はテージョ川を越して、リスボンの町を見守るように立っている。カシーリャスはリスボンの郊外都市で、ベッドタウン的存在。多くの住民はリスボンに通勤している。


▲エレベーターでキリスト像の足元まで上ることができる

 この像の台座の塔にはエレベーターが通っていて、キリストの足下まで行ける(往復4ユーロ)。だが、エレベーターに乗るまでもなく、像が立っている敷地から対岸のリスボンの市街が一望のもとに見渡せる。


▲「4月25日橋」を渡ってリスボン旧市街に向かうバスの中から見た風景

 さて、帰りは1966年に完成した全長2,278メートルのつり橋「4月25日橋」(Ponte 25 de Abril)をバスで渡ってリスボンへ戻ることにした。しかし、これが一筋縄ではいかない。クリスト・レイのバスターミナルから西の方向(橋のある方角)に向かって、坂を下り、15分ほど歩いて、橋を渡る大通りの料金徴収ゲートのすぐ手前にバス停がある。753番のポンバル公爵広場(Praca Marques de Pombal =リスボン旧市街の中心地リベルダーデ通り)行きに乗る。バスは朝夕の通勤時間帯以外は1時間に2本と少ない。

 さて、この「4月25日橋」の名前の由来だが、かつては、橋を建造した独裁者、サラザールの名前をつけて「サラザール橋」と呼ばれていたそうだ。しかし、1974年4月25日に革新派軍人グループがクーデターを起こし、新政府が誕生した。リスボン人はこのクーデターを「リスボンの春」と呼び、革命を記念して「4月25日橋」と改名したのだという。

 リスボンの旅は今回で終わるが、たった4日間ではとても回りきれなかった。特にリスボン市西部のベレンにある世界遺産「ベレンの塔」(Torre de Belem)や「ジェロニモス修道院」(Mosteiro dos Jeronimos)、市内に点在する多くの美術館やミュージアムを見逃したことは残念だった。次回の楽しみにとっておくことにしよう。(終わり)

〈旅行メモ〉

スリと盗難にご注意 

 リスボンは街の雰囲気、食べ物、天気・・・いいことずくめだが、ひとつ気をつけること、それはスリと盗難が多いことだ。

【体験談(1)】
 日本人の友人の話によると、レストランで奥さんがバッグを椅子に置いてトイレへ。戻ってくるとバッグはない。ご主人と彼らの友人は同じテーブルに座ってスープを飲んでいた、ほんの数秒間のできごとであった。

【体験談(2)】
 筆者は上記の話を出発前に聞いていたので、ものすごく注意していたが、リスボン市内の人通りの多いロシオ広場で、買い物をしたあと、前にぶら下げていた小さいバッグのファスナーが少し開いていたところに、横から若い女の手がにゅ〜と、バッグに突っ込んできた。私は即座にその手をたたいて払いのけると、「ごめんなさい。まちがえました」と苦笑いをして去って行った。危ういところだった。

【体験談(3)】
 リスボン旅行から戻って、トロントで、知り合いのポルトガル人女性に旅の感想を話す機会があった。まさか、スリのことは話さなかったが、彼女のほうから「観光客が増えて、スリも増えたから気をつけなくては! リスボン出身の私でさえ、この前やられそうになったんだから・・・」と話してくれた。

【体験談(4)】
 これもトロントに住むポルトガル人から聞いた話。若いカナダ人夫婦がハネムーンでリスボンへ。空港でスーツケースを引き取ったあと、誰かに体をぶつけられた。あわてているうちに気がつくとスーツケースがなくなっていた。グループによる犯行と見られている。そういえば空港では盛んに「荷物から目を放さないように」とのアナウンスが流れていたっけ。

▲ポルトガル名物、干しダラのコロッケ「バカリャウ」専門店。目の前でどんどん揚げている ▲ソーパ・デ・ペーシュ(魚介スープ)


食べ物メモ
 (1)ポルトガル名物、バカリャウ(Bacalhau =干しダラのクリームコロッケ)・・・これだけを作って売っている店がこのシリーズ「リスボン(1)」で紹介した歩行者天国、アウグスタ通りのほぼ中央にある。
 あつあつの作りたてをほおばると、中からじゅわっとクリームが口に広がって何ともいえない美味しさ。チーズ入りもある。

 (2)ソーパ・デ・ペーシュ (Sopa de Peixe =魚介スープ)・・・いろいろな魚や野菜、パスタも入ったミネストローネ風魚介スープ(3.5ユーロ)。たまたま泊まったホテルの隣りのシーフードレストラン「Soldourado」(住所=Rua Jardim do Regedor n21, Lisboa)の魚介スープがおいしくて、4泊中2晩行った。
 「すごく美味しかった」と、ほめると支払い後にこの店とっておきのポルトワイン(ジンジャー風味)をごちそうしてくれたのだが、旅の疲れもあって、すっかり酔っぱらってしまった。おかげでその晩行く予定だった「ファドハウス」をミスしてしまった! これも次のお楽しみだ。

言葉について
 ポルトガル語はあいさつの言葉3〜4個しか知らないので、少々不安だった。しかし最近は観光客の80%以上がフランス人ではないかと思われるくらいフランス人が多く、したがってツーリスト関係者はほとんどフランス語を話す上に、英語もかなり分かるので全く心配はいらなかった。もっともこれはリスボンの話で、地方へ行くと事情は異なるだろう。

(2016年7月14日号)



 



 
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