再びメインステージを沸かせたパワーハウスバンド
ノース・パンデミック・グルーブ


(インタビュア/撮影:デムスキー恵美)

 参加アーティスト数が1,500人を超える超大型の音楽の祭典「トロント・ジャズ・フェスティバル」が終盤を迎えた7月2日、市庁舎前広場のメインステージで開催された「ユース・ジャズ・ショーケース」には今年も米国、日本、カナダから次世代を担う精鋭たちが招かれ、あふれんばかりの才能を披露した。


▲演奏終了後、スタンディングオベーションに応えるノース・パンデミックの皆さん

 日本からは2014年、サッポロ・シティ・ジャズの人気プロジェクト「パークジャズ・ライブ・コンテスト」の優勝バンド、「ノース・パンデミック・グルーブ」(North Pandemic Groove)が昨年に続き来演。その圧倒的なパワーと高い音楽性で大テントを埋めた聴衆をうならせた。

 メンバーは、トランペットの山田丈造さん、ベースの越智俊介さん、ドラムスのタイヘイさん、そして今年1月、正式メンバーとして加わったピアノの工藤拓人さんの4人。
 工藤さんは「工藤拓人トリオ」として、2009年度の「パークジャズ・ライブ・コンテスト」に参加。見事、グランプリに輝き、翌年、トロント・ジャズ・フェスに招かれ演奏した経験を持つ。今回は初めての大きな野外ステージでの演奏ということもあり、聴衆の反応も一段と規模が大きく、よりフェスティバル感を味わうことができたという。

 「ノース・パンデミック」は2014年、パークジャズ・ライブ・コンテストの直前に結成されたが、全員が北海道にルーツを持ち、それぞれのメンバーとは結成前から演奏する機会も多かったため、コンテストでは何の違和感もなくスムーズに演奏できたと話すのは、小学生のころからトランペットのサウンドに魅せられ、ひたすらジャズの道を歩んできた山田丈造さん。


▲山田丈造(トランペット)

山田丈造さん 
 9歳のころにトランペットという楽器に出会いましたが、相性が良いというか、それ以来、ずっとこの楽器と付き合ってきました。札幌には小学生、中学生を対象にした音楽スクールがありますが、そこに所属して演奏していたこともあります。日本人アーティストでは、日野皓正(ひの・てるまさ)さんのサウンドに大きな影響を受けました。


▲工藤拓人(ピアノ)

工藤拓人さん 
 5歳の頃にクラシックピアノを始めました。これまで多くの方々にお世話になりましたが、しいて言えば、現在の自分があるのは、幼少の頃に指導してくださった二人の先生に負うところが大きいです。一人の先生は優れたピアニストで、演奏面の指導を、もう一人の先生は主に曲作りに優れ、その指導をほどこしてくれました。

 そして、演奏の流れを導いてゆくリズムセクションを引き受けているのが、オチ・ザ・ファンクの異名を持つ、ベーシストの越智俊介さんとドラムスのタイヘイさん。ジャンルにこだわらず、さまざまなフィールドで活躍している二人は、そのカラフルでダイナミックなプレイでライブステージに一段と躍動感を加味してくれる。


▲越智俊介(ベース)

越智俊介さん 
 19歳のころ、ずっと尊敬していたベーシストの伊藤広規(いとう・こうき)さんに直接、お会いしたときに大感動し、自分も音楽家の道を歩もうと決心しました。カナダのお客さんは、感情表現が素直でわかりやすいですね。日本でもあんなふうに反応してくれたらいいのになと思うこともあります。カナダで演奏を重ねていくうち、自分の感情をもう少し素直に音や態度に表していこうと思うようになりました。


▲タイへイ(ドラムス)

タイヘイさん 
 昨年、初めて違ったカルチャーを持った人々の前で演奏しましたが、その時の新鮮なイメージがずっと脳裏に焼きついていました。ジャズライブに比べ、会場も大きく、観客数も多いポップ界での演奏歴が長いので、メインステージのような大型ステージでも臆せず演奏できたのは、その影響が大きいですね。このジャズバンドにも、ポップ的な要素を加えることができたのではないかなと思っています。そして、こういう機会を作ってくれた、プロデューサーのジョンさんには心から感謝しています。

 このバンドの大きな魅力は、それぞれのメンバーが曲作りに長(た)け、ジャズ、ポップ、クラシックなど、さまざまなフィールドでの演奏キャリアを持つアーティストで編成されているところだろう。昨年リリースのセルフタイトル・アルバム「North Pandemic Groove」に続き、今年5月には2枚目のアルバム「BUNKA」をリリースしたが、こちらに収録されているのも、すべてオリジナル楽曲だ。

 さて、良い曲が浮かんでくるのはどんな状況のときが多いのか、そして、音楽家としてもっとも幸せと感じる瞬間はどんなときか、皆さんにうかがってみると次のような答えが返ってきた。

山田さん 曲が浮かんでくるのは場所、時間にかかわらず、リラックスしているとき。仲間といっしょに演奏していて、良い音楽が出来上がったときが一番幸せです。  

工藤さん 適当にピアノで遊んでいるときに曲が浮かんでくることが多いです。幸せと感じるのは、頭の中でグタグタ考えていたものが、曲として具現化したときですね。    

越智さん 自分の和室で、心を落ち着けるため静かに胡坐(あぐら)をかいて座ることがあるのでが、 曲作りにはあの畳の匂いのある環境が最高です。自分にとっては、練習しているときが一番幸せです。   

タイヘイさん 曲が浮かんでくるのは自転車に乗っているときが多いです。幸せと感じるのは演奏後、いただいたギャラで皆でお酒を飲んでいるときですね。

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 それぞれの豊かな個性と才能が一つになってはじき出される、あのメロディアスで切れの良いファンクなサウンド。今回はピアノの洗練されたインプロバイゼーションが加わり、さらに魅力を増した「ノース・パンデミック」の演奏に、会場ではしばし、スタンディング・オベーションの嵐が鳴りやまなかった。

 「こうして、海外で演奏する機会をいただいのですから、これからもバンドの名にふさわしく、北の方からのグルーブを世界中にまん延させることができるよう、カナダ以外の国も視野に入れながら、皆でがんばっていきたいです」と、バンドを代表して力強い言葉で締めくくってくれた山田さん。
 次回はギターの門馬由哉さんを加えた、フルメンバーでの演奏を楽しみにしている。
 (Text & Photography : Emi Demski)

(2016年7月14日号)



 



 
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