ハイパークの桜


〈 トロント 三浦信義(ノビー) 〉

 今年の春はハイパークの桜(ソメイヨシノ)が咲かなかった。
 毎年「ノビーの恐れを知らぬハイパークの桜の開花予想」を移住者社会に発信し、結構当たって悦に入っていた。ところが今年はつぼみがなかなか開かず、冷や汗たらたら予想修正を繰り返し、ついに咲かずじまい。




 2月からの数値と天気図を見直すと地球温暖化の影響が現れていることに気が付く。それは偏西風(ジェット気流)の弱体化だ。
 偏西風の原動力は、北と南の空気の温度差である。温度差が大きいと偏西風は地球に鉢巻をキリリと巻いたように吹きまくり、日本からの飛行機はトロントから日本に行くより1時間早くトロントに着く。太平洋戦争中、日本は風船爆弾を偏西風に乗せて北米へ飛ばし、不幸にもオレゴン州で民間人が6人死亡した。

 近年この偏西風が弱まっている。南北の空気の温度差が縮まっているからだ。それは地球温暖化で北極の気温が南の気温上昇の2倍の早さで上昇していることによる。

 北極の氷が年々減っている。近年、夏になると、北極海のかなり広域に海面が現れる。濃紺の海面は太陽の熱を良く吸収し温存する。そのため冬の間の氷の広がりや厚さが必然的に減少する。すると次の夏にはさらに広域に海面が広がる。海水は前年より太陽熱を多く吸収する。当然のこと、その冬の氷の広がりはさらに減少する。このサイクルが北極の気温上昇を加速している。

 昔は強力な偏西風がしっかりと直線的に吹きまくり、冬は寒気の南下を、夏は暖気の北上をうまく制御していた。冬はだんだん寒くなり、夏はだんだん暑くなった。桜は春の訪れを徐々に感じ、時期が来れば目を覚ましてきらびやかに咲いてくれた。

 最近の天気図はどうだ。偏西風が鞭(むち)打って南北に蛇行している。弱くなって南北の空気を押さえきれない。北の寒気がフロリダまで南下したり、春早々、南の暖気が北まで押し上げ真夏日になったりしている。

 皆さん、もう今年の2月3月のことは忘れてしまっているだろうけれど、2月は暖冬、3月には極端な寒暖の上下があった。桜は混乱してしまった。
 極端な寒暖の上下は地球温暖化の兆候のひとつとして1980年代から予想されていた。それが今、目の前に・・・。科学者は予想が当たったと喜ぶべきか憂うべきか。

 世界のニュースを見ていると、記録的な猛暑、記録的な降雪、記録的な豪雨、記録的な洪水、記録的、記録的・・・。「記録的」な気象現象が多すぎると眺めているのは私だけだろうか。

【編集部より】三浦信義(ノビー)さんは、1990年から2008年まで18年間、「日加タイムス」科学エッセー欄に毎月1回、「コスミック茶話」を執筆、読者から好評を得ていました。三浦さんに再び登場していただきます。

(2016年7月21日号)

 
 


 
 
(c)e-Nikka all rights reserved