前田典子の「書」談義(第5回)
日本書道公募展 in Canada


2008年秋に第1回「日本書道公募展 in Canada」を開催しました。 回を重ね今年は第9回の展覧会を11月5−12日、トロント日系文化会館(JCCC)ギャラリーで催します。



カナダで書道を学ぶ方々の研鑽(けんさん)の場としての公募展であると同時に、
日本の書道の美しさ、奥深さを、質の高い展示を通して参観の方々の楽しんでいただく、
という2つの主旨で、在トロント日本国総領事館、国際交流基金トロント日本文化センター、トロント日系文化会館にご後援いただき、毎年開催しています。



年々応募数も増え、またカナダの東からも西からも広く応募作品が集まるようになり、
年齢層も2歳から90歳を超える方まで幅広く、応募者のバックグラウンドもさまざまです。
日本にいた頃から書道を学んでいた人、
カナダに来て初めて筆をとった日本の人、
自分たちのルーツである日本語を学びたいと書道を始めた日系二世、三世のカナダ人、
漢字になじみのあるアジア系各国の人、
武道、茶道、華道や禅、日本文学、日本文化に興味のある世界各国のバックグラウンドの人、
動機はさまざまですが、カナダで書を楽しむ人は年ごとに数を増しています。



この「日本書道公募展 in Canada」は毎年2月末が応募締め切りです。応募作品は日本で書家による審査を行い、全応募作品を日本で軸装し、11月にトロント日系文化会館で全作品を展示します。
審査は、毎回、東京で時間をかけて行いますが、その審査にはまことに苦慮します。
構成のよさ、線の美しさ、強さ、闊達(かったつ)さ、余白の妙、作品の表情、個性的な表現、等々を鑑(かんが)みて、
単に巧拙(こうせつ)だけではない広域な観点から受賞作を選びます。



日本で全作品を軸装するのですが、日本ならではの裂地の美しさ、紋様の渋さ、アクセントに使われる一文字の布のコントラストも「日本書道公募展 in Canada」のハイライトのひとつです。
公募展の運営、展覧会の設営は多くのボランティアの方々の協力で、日本の書の美しさに加え、軸装の風情(ふぜい)、日本的作品の展示の良さなどをカナダで伝える努力を続けています。



毎回、書道の作品の展示と併せて、文房四宝の展示もしています。日本と中国のいろいろな素材の硯(すずり)の展示。墨にも茶系、青系とか古墨や観賞用の墨もあり、それらを一堂に展示しました。
昨年は大きなものから小さなものまで、また、馬、羊、ミンク、イタチ、クジャク、柳、藁(わら)などで作られた珍しい筆を展示し、オープニングの後、それらの筆を使ったデモンストレーションを行い、出席の方々にも筆の感触を味わっていただく良いチャンスになりました。



2016年11月5−12日、トロント日系文化会館ギャラリーで第9回「日本書道公募展 in Canada」を開催します。
古典の臨書、漢字、仮名の作品、色や絵を取り入れた作品など、今回は168点の作品が展示されます。
併せて、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などの和紙や、仮名用の料紙を展示し、オープニングの後、紙の「テイスティング」を行う予定です。
大勢の方々にご高覧いただき、日本の書を楽しんでいただければ誠に幸甚です。

【編集部より】「前田典子エッセー」シリーズ、「第1回 紙に筆と墨で書く『書』の概念を払拭」から「第4回 カナダの『書』」までの記事は、アーカイブの「アートエッセー・前田典子の『書』談義」をご覧ください。トップページ「今週のトピックス・目次」の下の「過去のトピックスはアーカイブをご覧ください」をクリックすると見られます。

(2016年8月4日号)



 
 


 
 
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