モントリオールで居酒屋&ラーメン店を展開
菅原武志社長
「こだわりと工夫、研究を重ねた料理をお客様に」


〈取材・いろもとのりこ〉

 北米の日本料理ブームは、寿司にはじまって、今や「居酒屋」「ラーメン」に移行している感がある。ニューヨークのラーメンブームはすでに久しいが、トロントは数年前から、そしてモントリオールはまだ「これから」といったところ。

 そこに目をつけたのが、モントリオールで昨年2月に居酒屋「かぼちゃ」を、そして12月にラーメン店「一福」(いちふく)を開店させた菅原武志(すがわら・たけし)さん。菅原さんはトロントを拠点とする、現地ツアーサービスはじめ多種多様なサービスを提供する「ShowFlex International Inc.」(以下、ShowFlex 社)の社長でもある。

 トロントとモントリオールを行き来する忙しい身でありながら、ビジネスにかける情熱は人一倍以上。観光業から飲食業、ましてトロントではなくモントリオールで展開することに一瞬「え?」と 思ったが、彼の歩んで来た道をうかがうとすべての点が線につながるのである。


▲菅原武志さん

■ビジネスの基本をワーホリ時代に学ぶ

 菅原さんは東京都出身の47歳。大学を卒業後、貿易の仕事をしたいと考え、1993年にワーキングホリデーでトロントへ。ShowFlex 社に入社し、まず観光業に携わる。

 2012年に ShowFlex 社の創業者で社長だった松本真一郎氏のリタイアにともない経営を受け継ぐ。約20年間、松本氏のパートナーである瀬戸山久子さんのもとで働いた経験は菅原さんにとって大きな試金石となっている。

「松本社長とチャコ(久子)さんは ShowFlex 社とは別に毛皮製品やカナダのお土産品を取り扱うジェームス・モト・エンタープライズ社を経営していました。チャコさんは常に『お客さまに商品を買っていただく時は魂を込めて売ること。そうすれば良い品物は必ず売れます』とおっしゃっていました。それはすべてのビジネスに通じることです」と、菅原さんは語る。

 創立29年目を迎える ShowFelx 社は引き続き、現地ツアーサービスを、また、ジェームス・モト・エンタープライズは「JME」と改名して同様のサービスを提供し続けている。

 さて、2003年、モントリオールに営業事務所を開設して以来、菅原さんはモントリオールとトロントを行ったり来たりする生活となった。また、ツアー客向けの弁当などケータリング事業も行うようになった。これらがすべて居酒屋やラーメン店を経営するノウハウにつながっていくことになる。


▲居酒屋ムードいっぱいの「かぼちゃ」店内

■個性豊かな居酒屋「かぼちゃ」オープン

 それにしても、なぜ、居酒屋を? 店名「かぼちゃ」のネーミングは?
「じつは弟が東京で居酒屋チェーンを7軒経営していまして、その店名が『かぼちゃ』なんです。じゃあ、経営は別だけれども、モントリオール店は北米1号店にしよう、ということになりました」

 2015年2月、モントリオールではまだあまりなじみのない居酒屋レストランをオープンさせた。「かぼちゃ」はダウンタウンからほんの少し北へ行った高級レストラン街、プラトー地区に隣接している。
 ロケーションについて、菅原さんは、「十数年間モントリオールで仕事をしていますので、レストランに適したエリアについては熟知していました。いくつかの良さそうな候補地からここを選びました」と語ってくれた。

 客席数は約45席。大き過ぎず、また小さ過ぎずの目の届くサイズの店である。
「地域がら美食に精通したお客さまが多いので、メニューには特に力を入れました。個性豊かなここでしか食べられないものをそろえ、かつ、料理の質を高くして値段は居酒屋並みに抑えています。弁当ケータリング・ビジネスで培ったノウハウを生かしつつ、料理はあくまでも地元のお客さま本位に考えました」

 そろそろ団体ツアー客の受け入れも視野に入れているそうである。

▲サーモンのわら焼き ▲卓上鉄板焼き


▲イカ墨プティーン ▲サンマのコンフィ


▲あさりの酒蒸し ▲おまかせ弁当ボックス


──気になる人気メニューを挙げると、
◎サーモンのわら焼き・・・鮭(さけ)をわらでいぶし、香りと味を生かした料理
◎卓上鉄板焼き・・・マリネした肉や魚、野菜を卓上鉄板コンロで焼く
◎イカ墨プティーン・・・モントリオール名物のプティーンとイカ墨をアレンジしたユニークな料理
◎サンマのコンフィ・・・スロークックで骨まで丸ごと食べられるように調理
◎あさりの酒蒸し・・・一般の酒蒸しに「かぼちゃ」独自の味付けを加えて個性を出している
◎おまかせ弁当・・・いろいろな材料を楽しめる弁当ボックス

そのほか、ユニークな居酒屋メニューがずらりとそろっている。
http://kabocha.ca/menu/

■生麺が評判のラーメン店「一福」

 昨年12月、「かぼちゃ」に続いて菅原さんはラーメン店「一福」(いちふく)をオープンさせた。ダウンタウンのセント・キャサリン通りに面し、コンコルデイア大学に近く、ラーメン店には絶好のロケーションである。

「ラーメンビジネスは世界的に伸びていますし、モントリオールには本格的な店がそれほど多くないので、受けると思いました」と、出店の理由を語る。実際、開店間もなくから評判を呼んで、お昼時は行列ができるほどに・・・。


▲「一福」の店頭では生麺がどんどん製造されている

 その人気の理由の一つとして菅原さんは、「日本から取り寄せた製麺機で生麺を製造し、本当の麺の味を提供しています。さらに麺だけでなくスープや具材まで無添加にこだわって素材や配合を工夫し、いかにおいしくなるか研究を重ねた結果だと思います」と語る。
 それが味にうるさいモントリオールっ子の舌にかなったということだろう。確かに「一福」の麺とスープは抜群の味でした!

▲さっぱり系和風味の「だしラーメン」 ▲ピリ辛タンタン麺


 メニューは、塩・味噌・醤油・とんこつラーメンなど定番メニューのほかにタンタン麺、だしラーメン、らーめんサラダなどもあり、バラエティーに富んでいる。サイドディッシュの餃子や唐揚げも人気だという。
https://www.facebook.com/ichifukuramen/photos

■新しく麺製造ビジネスを展開

 最近、「一福」では他のラーメン店に麺を卸す麺製造ビジネスを始めた。麺は店の要望に応じて太さ、コシの強さなど変えているという。

「将来は、麺製造ビジネスに力を入れ、モントリオール以外にも卸していきたいと考えています。麺料理はこれからますます北米はじめ世界に広がると思いますし、需要も高まると見ています」

 さらに菅原さんは、ラーメンだけではなく、うどんやそばなどの麺も製造していきたい、と夢を膨らませている。カナダで美味しい麺が手軽に食べられるようになれば願ってもないこと。夢が実現するよう、応援したいものである。

【インフォメーション】

◎「かぼちゃ」
3627 Boul. Saint-Laurent, Montreal
Tel : 514-845-0727
ランチ:月〜金曜午前11時30〜午後2時30分、ディナー:日〜木曜/午後5〜11時、金&土曜/午後5〜12時

◎「一福」
1925 Rue Sainte-Catherine O, Montreal
Tel : 514-932-7227
毎日オープン
ランチ:午後12時〜午後2時30分、ディナー:午後5時〜午後9時30分

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【取材を終えて】
 最近はワーキングホリデーでカナダに来て、起業する人がだんだん増えてきた。菅原さんもそのひとり。彼の活躍はこれから起業を目指している後輩たちにとってもよい刺激になるだろう。しかし、ひとの何倍もの努力を重ねているからこそ出来ることだと思った。

(2016年8月11日号)



 
 


 
 
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