ニコラ・ド・スタールの絵を見に南仏とパリへ(4)
更にロンドンへ足を伸ばし美術館と観光めぐり


〈 ミシサウガ市 牧野憲治 〉

 今回のロンドンでは、日帰りのストーンヘンジ(Stonehenge)行きを除いては名所旧跡見学なし、観劇もなし(「ハリーポッター」などは今年中の座席はすべて Sold Out )。ただ、お目当ての美術館、画廊を見て回り、あとは、現在ロンドン在住の末娘夫妻と「ロンドンぶらぶら歩き」という予定でした。


▲ミレニアム・ブリッジとテート(美術館)


▲ダリの作品(テート)


▲ニコラ・ド・スタールの初期の抽象画(テート)

 まずは、テート(かつての名は Tate Gallery、今は単に Tate と呼ぶ )。「オイスター」と呼ばれる複数回使用カードを使って、チューブ( Tube =ロンドンの地下鉄)を乗り継ぎ、ミレニアム・ブリッジでテムズ川を渡って雨のテート到着。テートの現在のテーマは「ART CHANGES WE CHANGE」(芸術は変わり我々も変わる)です。ここで、ピカソ、ダリ、ロスコなどに混じって、ニコラ・ド・スタール(Nicolas de Stael)の初期の抽象画が1点展示されていました。


▲ニコラ・ド・スタールの絵(Waddington Custot Gallery)

 続いて、ネットで調べておいた商業画廊 Waddington Custot Gallery に行き、小作品でしたが、ド・スタールの絵4点を鑑賞しました。作品リストに価格は表示されていませんでしたが、気に入った空の絵は確かUS$数ミリオンといっていたと思います。

 そのほとんど真向かいに Messum’s Fine Art という画廊があります。この画廊はトロントダウンタウンのメトロトロント・コンベンションセンターで毎年開かれる Toronto International Art Fair に参加する常連で、彼らのブースにはいつも立ち寄ると言うと大喜び。絵の話から、彼がいかにトロントが気に入っているかの話になり、トロントでの再会を約して別れました。


▲コートールド美術館


▲アールバックの珍しい白黒グレーの印象派画(コートールド美術館)

 それから、その近くのロンドン大学付属のコートールド(Coutauld)美術館を訪ねました。前期、後期印象派の収集で名が知られているということです。

 次の日は一日がかり、正味は5−6時間のストーンヘンジ・ツアー。チューブでピカデリーサーカス付近の Golden Tour のオフィスまで行き、立派なバスに乗り込みました。だんだん慣れてきたロンドン雨が、この日も時にはかなり強く降っていましたが、目的地に着くころは、ほんと?と思うほど見事な晴天となったのは幸いでした。

▲ストーンヘンジ ▲一見、石が無造作に並べられているように見えるが、じつは太陽の軌道に基づいて位置が定められている


 このストーンヘンジは紀元前3000年ぐらいから始まって紀元前2200年ごろまで、つまり800年かけて、今の形となったといわれています。誰が、どのような目的で、どのようにして、この巨大な石の集合体を構築したのか、今まで多くの学者がいろいろな説を唱えていますが、十分納得できる定説はないということです。

 この点、エジプトのピラミッドよりも神秘性は深いといえましょう。石は、一見、無造作に並べられているように見えますが、実は太陽の軌道に基づいて定められた、円の中心を北東南西に走る軸があり、冬至の日没と夏至の日の出がその軸に正確に一致するのだそうです。それを見るために、冬至、夏至の日にはここで盛大なお祭りがあるということです。

▲グーグル社があるビル集合体 ▲グーグル社の社員食堂


 次の日、国立美術館(National Gallery)に行く途中、義理の息子が勤めているグーグル社の社員食堂での昼食に招かれました。2つの食堂はそれぞれ毎日趣向の異なるグルメ料理を無料で社員とゲストに提供しているとのことで、私の社員食堂の概念とはかけ離れていて驚きました。

 社内に幼児を連れてきてもいいというのは、近ごろ、それほどまれではないでしょうが、ここではペットの犬も連れてきてもいいそうで、社内を案内してもらった時、実際、目撃もしました。そのほかにもいろいろ画期的な仕事環境(マットの上に寝そべって書類を読んでいるとか)を実施(実験?)しているようでした。もちろん、ネクタイ背広姿などは全く見当たりませんでした。


▲ロンドン国立美術館


▲レンブラントの絵を模写する若い画家

 ロンドンでは、「本格的なパブに行って地ビールを飲み、世界的食いしん坊(食通?)を自認する開高健氏がロンドンと聞けば第一に思い出すといった Fish and Chips を食べなきゃならぬ」と娘夫妻と一緒に、大雨にもめげず出かけました。中は満員で暗く、日本の茶室のように特別に低く作られた鴨居(かもい)をかがんで奥に通り、目が慣れると、まさにこれがイングリッシュパブだと納得できる部屋に到達しました。

 日本の茶室の場合は、大名,貴族でも入るときは頭を低くして驕(おご)りを捨て去らなければならないというお茶の精神に基づくそうですが、このイングリッシュパブの場合の意義を聞く機会はありませんでした。ここでは、もちろん、茶室と違い、自由闊達な声高の会話、笑い声が充満し、私たちの会話も自然とボリュームが上がり、雰囲気に溶け込みました。地ビールは美味(うま)く、Fish and Chips に関しては、開高健氏の言葉に間違いはありませんでした。

▲フィッシュ・アンド・チップス(ロンドンのパブにて) ▲チェスを楽しむ人たち(ロンドンのホーランド公園にて)



▲京都庭園(ロンドンのホーランド公園)


▲カムデン・マーケット

 「ぶらぶら歩き」はプリンセス・ダイアナが亡くなった時、ゲートが花束で埋まった彼女の邸宅がある広大なケンジントン・パレス庭園、ロンドンが一望できるプリムローズ・ヒルに登ったり、京都市献上の本格的な日本庭園のあるホーランド公園を歩いたりしました。また、ちょっと戦後の上野アメ横、新宿西口を思わせる、懐かしい煩雑(はんざつ)、乱雑、混雑があるカムデン・マーケット(Camden Market)のあたりも歩きました。

 トロントへ出発の明朝はまた雨の予報。ロンドンは着いたときも雨、帰るときも雨。ある意味では、「これがロンドン気候!」を十分に味わったわけで、NO REGRET! 〈おわり〉

(2016年9月8日号)



 



 
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