ハリー・ポッター・ファンの聖地
英国ワーナーブラザーズ・スタジオ見学


〈 カルガリー市 奈良由貴子 〉

 ハリー・ポッターの最終巻として「ハリー・ポッターと死の秘宝」が発売されてから8年がたった今年7月、完結編となる「ハリー・ポッターと呪(のろ)いの子」が出版されました。これは、最終巻の「死の秘宝」から19年たち、父親になったハリーの物語で、英国ロンドンで劇場公開され、本の出版当日は、真夜中の販売開始にもかかわらず、ハリポタの衣装を身に着けた大勢の人が列をなしカナダでも話題となりました。

 そんなハリー・ポッター・ファンならば、誰でも一度は行ってみたいと思っている聖地。10年間にわたって映画「ハリー・ポッター」シリーズ全8編が撮影された英国にあるワーナーブラザーズのスタジオ見学に行ってきました。


▲ワーナーブラザーズ・スタジオの正面。円内はハリー・ポッター

 世界中のファンが待ち望んだこのスタジオは、ロンドン夏季五輪を目前に控えた2012年春にオープンし、実際に映画の撮影に使用されたセット、大道具や衣装、さらに撮影の特殊技術を見学することができます。2013年には、ウィリアム王子、キャサリン妃も訪問して、魔法の杖(つえ)での魔術を学ばれました。

 ロンドン郊外、北西約32キロにあるスタジオに行くのには、ハリポタの絵が描かれた2階建ての専用バスに乗れるゴールデン・ツアーズ主催のツアーを利用しました。
 ロンドンのヴィクトリア駅近く、ゴールデン・ツアーズのビジターセンターから出発し、所要時間7時間のツアーです。ツアーといっても往復のバスの時間とスタジオ見学の入場時間が決まっているだけで、現地では約4時間、ゆっくりとスタジオ見学をして、お土産を選ぶ時間も十分にあります。


▲ハリポタの絵が描かれたバスに乗ってスタジオへ出発

 集合場所に着くと、ハリポタの絵が描かれた2階建てバスが「お待ちしていました」と出迎えてくれるのです。それは、私を魔法の世界へと導いてくれる「夜の騎士バス」以外のなにものでもありません。乗車前から、ワクワク、ドキドキ、気分が高まります。

 バスは、出発後、ロンドンの雑踏を抜け、ハリーのいとこの家と同じ造りの住宅街を通り、高速道路を走り、約1時間半、郊外にどーんとそびえるクリーム色のスタジオに到着しました。

 ここは、かつて英国軍が使用していた場所で、第二次世界大戦後は、ロールスロイス社の航空機エンジン工場でした。工場閉鎖後、ワーナーブラザーズが映画撮影スタジオとして改築しましたが、これまで撮影された映画の数はわずかで、「シャーロックホームズ」などもここでの撮影は一部にすぎませんでした。「ハリー・ポッター」がここで全シリーズ撮影された最初の映画なのです。

 建物入り口のホールの壁には、第一作の頃と大人になったハリー、ロン、ハーマイオニーや出演者たちのポートレートが飾られ、空飛ぶ車のレプリカが天井からつり下がっています。


▲ハリーの階段下の部屋を見ながら入場を待つ

 製作の裏話などを見ることもできるデジタルガイド(日本語あり)を借りて、指定された入場時間に合わせて入り口の列に並びます。ここには、ハリーが住んでいたいとこの家の階段下の部屋があり、待ち時間の間も来場者を飽きさせない演出はさすがですね。


▲制服の衣装の数々

 ん? 周りを見ると、すでにお土産店で購入したホグワーツの制服やマント、各寮の色別のセーターを着ている人たちがいっぱいです。ハーマイオニーが使用した逆転時計のネックレスをクルクルと回す女の子、さらに、ハリーの丸い黒縁メガネをかけているのは赤ちゃんから大きな子供まで、いろいろな年齢のハリーだらけです。

 さぁ、いよいよツアーの始まりです。まず、世界各国の映画「ハリー・ポッター」の宣伝ポスターが次々と映し出される小部屋に入ります。場内の説明を受けた後、映画館形式になった次の部屋へと移動しショートフィルムを見ます。

 フィルムの中で、記憶に残る映画のシーンや製作の舞台裏をのぞき見、エマ・ウィルソンさん(ハーマイオニー役)の「10年間映画を撮り続け、製作者全員が一大家族となった私たちの”家”へ、ようこそ」の言葉に、やはりここがハリポタ・ファンの「聖地」だと確信したのでした。


▲大食堂のドア(食堂内より撮影)


▲大食堂の全容

 フィルムが終わり、スクリーンの後ろから現れたのは、あのホグワーツ魔法魔術学校の大食堂の扉です。扉が開くと子供も大人も参加者全員が、1年生のハリーたちが不安と期待を胸に恐る恐る一歩踏み出したように、興奮した表情を見せながら大食堂に入っていきました。みんなが魔法学校の生徒になった一瞬です。これぞ、ワーナーブラザーズの映画のマジックが成せる業(わざ)です。


▲正面にはダンブルドア校長先生はじめ先生たちが勢ぞろい

 ここが、ソーティングハットが新入生たちを各寮に振り分け、生徒たちが毎日食事をしたあの大食堂です。正面には、ダンブルドア校長、ハグリッドなど先生たちが勢ぞろいしています。テーブルの上には映画のために製作された食器が並び、各寮の制服も展示されています。
 グループでのツアーは、ここまでで、大食堂を出た後は各自、自由に展示を見て回ります。


▲魔法薬学の教室。お鍋の中ではひとりでにかきまぜ棒が動いている


▲男子寮のハリーの部屋

 「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」のクリスマスパーティーの時に使用した氷をイメージしたお城は、すべてを凍らせてしまうかのような冷たい光を放っています。
 グリフィンドールの男子寮の部屋の中では、靴下をストーブで乾かしています。ハリーのベッドの下のトランクには「HP」のイニシャルがあります。

 「みぞの鏡」。私には何が見えるのか。鏡を見た人の心の一番奥底にある「のぞみ」を映し出す「みぞの鏡」の前に立つのにちょっとドキドキしてしまいます。
 かつらのコーナーには、ドラコ・マルフォイの父親シリウスの長い髪の毛のかつらもあります。出演者のかつらの製作には日本人も参加していました。


▲出演者が使った魔法の杖

 主要登場者の魔法の杖の彫刻は、映画の中ではほとんど見ることはありませんでしたが、一本一本、その役に合わせて巧妙な細工がほどこされています。ギフトショップで実際にレプリカを手に取って見ることができます。校長先生の杖がいちばん荘厳な感じがします。

 ここは映画スタジオで、実際に映画で使用されたセットなどを見学するところなので、テーマパークにあるような乗り物はありませんが、緑色の背景の前で演技をして、映画の撮影技術を利用した合成写真や合成映像を作成して、購入することができます。


▲記念に作った「空飛ぶ車」に乗った写真

 まず、なんの変哲もない緑色の壁の前で、これまた緑色の昇降台のような四角い箱に座ります。そのとたん、なんと、目の前にあるモニターに映し出されたのは、空飛ぶ車に乗っている私たちです。

 わぁーと感激に浸っている間もなく、「さぁ、飛びますよ」「周りを見渡して」「車が傾きまーす」と次々と係りの人から出される指示に従って、モニターを見ながら、背景の映像に合わせて夢中で演技をします。ふぅー、無事に地上に着地しました。ハリーやロンもこんなふうに撮影したのですね。

 いよいよ次は、魔法の箒(ほうき)に乗っての、撮影です。衣装のマントを着せてもらって気分はいっそう盛り上がります。ここでも、演技指導が続きます。「ロンドンの街を見下ろして」「急降下しますよ。前のめりになって」「手をのばして湖の水面を触って」。上へ、下へ、右へ、左へ、本当に空を飛んでいるようです。最後は止まってパチリと記念撮影。

 出来上がった空飛ぶ車の写真は、ホグワーツ特急の上を飛んでいる背景です。魔法のほうきに乗っている写真は、クイディッチ場や稲妻の中など数種類の風景を選ぶことができます。また、録画した映像は、DVDやUSBスティックにも焼いてくれます。

 このほか、魔法の杖の使い方を習うことができる体験コーナーがあります。ただ杖を振るだけでは魔術は効かないようです。

▲想像していたバターピールが、今、目の前に・・・ ▲夜の騎士バス


 興奮しながら演技をしたので、かなりヘトヘトになり、建物の外の中庭でバタービールを飲みながら休憩をすることにしました。そうです。あのバタービールです。
 原作に出てきた時からあれこれ想像していました。薄茶色の液体の上に細かい白い泡が層をなし、見た目はまるでビールです。キーンと冷えたその液体をひとくち、ゴクン。ンー、ウフフ、イギリスだもの、この味ですよね。

 それにしても、「バタービール」とは、うまい名前を付けたものです。そして、それを作ってしまうのですから、うれしくなってしまいます。さて、そのお味は? キャラメル味のクリームソーダのようでした。大満足です。


▲ハリーのいとこの家


▲ホグワーツの回廊


▲ホグワーツの全容模型

 この中庭には、ハリーのいとこの家や夜の騎士バスがあり、ホグワーツの回廊の上を歩くことができます。また、ハグリッドのサイドカー付きのモーターバイクに乗って写真を撮ることも可能です。

 さて、見学の後半は、映画を作成するために使われた技術の紹介です。特殊メイクや映画の中に出てくる「生き物」をどのように動かしていたのか。ハグリッドの顔を動かすのにもいろいろな工夫がされていたのを知りました。製作者の妥協のない、想像を実現する熱意があったからこそ、世界中にこんなにも感動を与える映画を作ることができたのでしょう。


▲ダイアゴン横丁

 まるで生きているような不死鳥やバックビークの展示を過ぎると、ダイアゴン横丁に入ります。お店の中には入れませんが、魔法の杖のお店で杖を買って。いたずら専門のお菓子屋さんではどんなお菓子を買おうか?と、まるで映画の中でショッピングをしているようです。

 名残りを惜しみながらダイアゴン横丁を出ると、映画のセットの設計図の展示です。まず、設計図から小さな試作品を作り、だんだんと大きくしていきます。さらに進むと目の前に巨大ホグワーツが全容を現します。撮影が進むにつれ、その都度、新しく登場する部分が付け加えられたそうです。模型の周りを一周しながらいろいろな角度で眺めていると、映画のシーンが次々とよみがえってきます。

 胸を熱くしながら、映画関係者全員の名前が書かれた魔法の杖の箱が山と積まれた部屋を抜けると、ギフトショップに出ます。これで見学は終了です。
 ギフトショップの空中にはフワフワとロウソクが浮いていて、最後まで手を抜かない演出に脱帽したのでした。

 このスタジオ見学は、まったく映画を見ていない人でも、セットの迫力や、特殊技術の精工さを十分楽しむことができます。そして、全映画を見ていなくても最初の2作を見た人ならば、感激、感動、感無量の時を過ごすこと間違いありません。

WARNER BROS. STUDIO TOUR LONDON − The Making of Harry Potter
http://www.wbstudiotour.co.uk/

ゴールデン・ツアーズ
ワーナーブラザーズ・スタジオツアー
http://www.goldentours.com/warner-bros-harry-potter-studio-tour-london
料金:大人66ポンド(カナダドル約$115)/子供61ポンド(ロンドンからの往復バス代+入場料込み)

〈次回「ハリー・ポッター」は、映画の撮影場所を巡るロンドン・ウオーキングツアーです。近日中に掲載します〉

(2016年9月22日号)



 



 
(c)e-Nikka all rights reserved