オンタリオ湖に浮かぶ人工の半島
「トミー・トンプソン・パーク」
自転車でゆっくり自然散策楽しむ


 トロントアイランドの南側のオンタリオ湖に浮かぶ半島、見たことがあるでしょう。トミー・トンプソン・パーク(Tommy Thompson Park)です。しかし、見たことはあっても、実際、そこに行った人は少ないようです。  じつは、この半島、戦後に始まった埋め立て工事で出来た「人工の半島」なのです(まだ、全体的に完成はしていませんが・・・)。


▲1935年当時のレスリー・ビーチ(Wikipedia より)

 昔、1940年代ごろまで、レスリー・ストリートの最南端は、オンタリオ湖に面していて、このあたり一帯は市民のためのビーチ「Leslie Beach」になっていました。夏のシーズン、浜辺は水遊びを楽しむ人たちであふれていたそうです。

 それが、1950年代になって、水運航路「セントローレンス・シーウエイ」が開かれ、五大湖から大西洋への輸送手段としてトロント港が重要拠点になるとされ、港湾整備が行われる予定でした。ところが陸上コンテナ輸送の急速な発達によって、トロント港建設計画が取り止めになったのです。

 そうした中、トロント市内では地下鉄工事や高層ビル建築などで出る土砂、鉄骨、コンクリートなど膨大な量の廃棄物を処理する場所の確保が必要となってきました。そこで、目をつけたのがこの場所です。

 計画は、レスリー・ストリートからオンタリオ湖を南西の方角に、がらくた廃棄物をトラックで運び、埋め立てていく方法です。1970年代から始まり、今では全長5キロに伸びて、半島の形のパークになっています。その先端には、灯台もあって、付近を航行するボート、ヨット、遊覧船などの安全に一役買っています。


▲トミー・トンプソン・パークの地図。左上のレスリー・ストリート・ピットから南西に伸びて右下の岬に灯台がある

 半島のパークの名称はトミー・トンプソン・パーク。トロント市公園局のコミッショナーを務めたトミー・トンプソン氏(1913−1985年)の名前から取りました。トンプソン氏は初代コミッショナーで、1955年から1981年までその任務に就いていました。園芸関係の専門家で、国内はもとより国外でもその名が知られています。特に「Please Walk on the Grass」(芝生の上を歩いてください)のサインを作った話は有名です。

 さて、前置きはこのくらいにして、このトミー・トンプソン・パークを散策してみましょう。入り口はレスリー・ストリートのいちばん南の行き止まり、Unwin Avenue への曲がり角にあります。自動車の乗り入れは禁止です。この付近の路上(Unwin Avenue)に駐車できます。入園料は無料。犬などのペットを連れて行くことは許可されていません。

 散策といっても、入り口から半島の突端の灯台まで、片道5キロあるので、往復10キロの距離です。徒歩、または自転車ということになりますが、やはり、ここの場合、自転車が最も良い方法だと思います。行く日は、ウィークエンドで、天気が晴れの日をおすすめします。双眼鏡やカメラもお忘れなく。


▲舗装された道を自転車が走る


▲ヨットハーバー

 さあ、自転車のペダルをこいで、一路、半島突端の灯台を目ざして出発。道は舗装されていて、快適に走れます。右手にヨットハーバーを眺めながら進むと、木々が茂る林に入る。一帯は、さまざまな野鳥が飛び交っています。また、季節の渡り鳥が多く訪れるとのことです。掲示板には「春の渡り鳥は4月1日〜6月9日、秋の渡り鳥は8月5日〜11月12日」と案内が出ています。


▲沼地の向こうにはトロント・ダウンタウンの高層ビル街が・・・

▲水鳥 ▲白鳥


 途中、横に入る小道が何カ所かあります。試しに行ってみました。沼地(Marsh)があって、そこには 、コイ(Carp)、カワカマス(Pike)、バス(Bass)、パーチ(Perch)、ブラッククラッピー(Black Crappie)、レイクトラウト(Lake Trout)などの魚が生息しています。釣り人の姿もちらほら見られます。  大きな魚が水音を立ててジャンプをしているのに出くわしましたが、シャッターチャンスを逃しました(ザンネン)。

 沼地には優雅に泳ぐ白鳥や、真っ黒な大きな鳥(名前は知りません)がくつろいでいます。はるか向こうにはCNタワーやトロント・ダウンタウンの高層ビル街などが見えて、とってもいい景色です。ここで、静寂なひとときを味わうことができます。


▲無数の黒い鳥たち 


▲不気味な鳴き声を発している

 次の沼地に行くと、大きく様変わり。対岸の林に何千羽、いや何万羽(?)の数の黒い鳥が丸裸の木に巣くっていて、その鳴き声の騒々しいこと。枯れた木々に黒い鳥の大群・・・ちょっと不気味な雰囲気です。


▲水路に架かる仮橋


▲仮橋を渡るサイクリスト

 さらに進んで行くと、沼地とオンタリオ湖の間の水路に仮橋が架かっています。この橋を自転車で渡る人たちは、心地よい響き音を発しながら、スイスイと往来しています。ランチ時になったので、見晴らしの良い所に腰かけて、弁当のおにぎりをほおばりました。トロントアイランドや、その向こうの高層ビル街を眺めながら、おにぎりの味は格別。


▲天気は快晴。トロントアイランドの向こうにCNタワーがそびえる


▲灯台 

 いよいよ、半島の突端、小高い丘に立つ灯台に到着しました。ここは無人灯台で周囲がフェンスに囲まれていて、一般の人は中に入って見学することはできません。そこで、灯台の周囲をぐるりと回ってUターン。帰路につきます。


▲半島の中央部分の沼地では埋め立て作業が行われている


▲あちこちの工事現場から鉄骨やコンクリートなどを運んで来て埋め立てる

 帰りは、途中で半島の東側に行く分かれ道があったので、試しにそちらを通ってと思い、ペダルをこぎました。こちらは、まだ、廃棄物の処理を続行しているエリアで、沿道には埋め立てに使う鉄骨やレンガ、コンクリートなどが山積みになっています。林や森はありません。右手(東側)にオンタリオ湖とビーチ地区方面が見渡せます。左手は往きに通った道との間にある沼地です。沼地の埋め立て作業をしている人たちの姿が見えました。

 自転車は、無理せず、ゆっくりと走ったので、時間はかかりましたが、けっこう自然と親しむ気分にひたることができました。
 夏も終わり、湖からわたってくる秋の涼風を肌で感じながら、小半島の小旅行を楽しむ、というアイデアはいかがでしょうか。

https://trca.ca/parks/tommy-thompson-park/

〈リポート・編集部〉


(2016年9月15日号)



 



 
(c)e-Nikka all rights reserved