テネシー州グレートスモーキー山脈国立公園(前編)
ハイウエー旅行で米加の違いを再認識する


〈トロント 中村智子・記〉

 今夏、アメリカ中部のテネシー州にあるグレートスモーキー山脈国立公園 (Great Smoky Mountains National Park)に車で行って来た。この公園は秋の紅葉が非常に有名だが、夏真っただ中でも、それはそれは多くの観光客でにぎわっていた。アメリカ国内へ行くのは約5年ぶりで、いろいろな意味でカナダとアメリカの違いを再認識した面白い旅となった。




▲グレートスモーキー山脈国立公園の看板

 トロントからテネシーへは、401号線でウィンザーまで行き、国境を越えて、デトロイトからは、アメリカの幹線ハイウエー75号線一本でミシガン州、オハイオ州、ケンタッキー州を通り、テネシー州へ行ける。

 Google Map によると車で約11時間半の距離。国境での待ち時間と合わせて、12時間半〜13時間くらいで着ければいいと思っていたら、なんと16時間もかかってしまった。

 というのも、私は日本のパスポート保持者なので、アメリカ入国の際に必要なおなじみの「194フォーム」を記入するために別室へ誘導されるのは承知していた。が、何と運悪く、この日はミシガン大学主催による、あの「レアルマドリード」と「チェルシー」の試合がミシガンスタジアム(デトロイトから車で約1時間)で開催されるということで、カナダ国籍を持たない西ヨーロッパ圏の人たちは、皆、私と同じように194フォームを記入するために、列をなしていたのだ。

 このおかげで炎天下、国境で何と3時間も待たされた。実際の手続き自体は5分にも満たなかったのに・・・。この5分の間に他の移民審査オフィサーたちは駐車中の車の内外をくまなくチェック。警察犬まで連れていた。
 ちなみに、カナダへ戻る際の国境滞在時間はたった3分(しかも、2分はオフィサーとの雑談)だった。(苦笑)

 トロント国際空港でのアメリカ税関を通る時もそうだが、悪いことは何もしていないのに国境越えはいつも四苦八苦する。オフィサーが良い人であることをひたすら祈るのみ。
 昔、その当時、久しぶりに車で国境を越えた際には「あれ、先週ここで会いませんでしたっけ?」と、とんでもない質問をされたことがある。そんなとんちんかんな質問をして、相手のたじろぎ方を見るそうである。

 今回のオフィサーはこちらが恐縮するほど丁寧で、「あまりサッカーのことは知らないのだけれども、どうやらレアルマドリードとスペインの試合があるらしく、とにかく朝から国境を超える人たちで大変なことになっているんだ。僕たちも頑張って、できるだけ早くさばくようにしているから辛抱して下さい」と、かなり申し訳なさそうな顔で対応していた。

 それにしても、おいおい、レアルとスペインの試合って・・・。レアルのメンバーの多くがスペイン代表なのに、どうやってその2チームで試合ができるのか。(苦笑)

 そんなこんなで、まず国境でつまずいたが、ドライブ自体はミシガン州内のほんの少しの渋滞だけで、あとは目的地に向けて走るのみであった。ちなみに、ミシガン州は高速道路の工事が多いことで有名だそうだ。

 カナダとアメリカの高速道路は似ているようで、結構違う。どちらも無料なのは同じだが、ここ5〜6年で、オンタリオ州の401号線には ONroute(パーキングエリア)が整備された。以前は、401号線にあるパーキングエリアといえば、暗くて薄汚い建物に Tim Hortons などが入っているばかりであったが、ONroute は明るくて、ファストフード店だけでなく、ちょっとしたお土産屋さんもあり、トイレも広くきれいである。

 Tim Hortonsといえば、ミシガン州やニューヨーク州ではちらほら見かけるが、今回、オハイオ州のかなり南の方でも見かけた。さすがに、その南隣のケンタッキー州にはなかったが、ひょっとしたら、これも時間の問題かもしれない。


▲ハイウエー75号線からの風景(オハイオ州にて)。ミシガン州、オハイオ州はこのような景色がずっと続く

 アメリカのハイウエー75号線は、ONroute のような施設はないものの、近距離に Rest Area(トイレやベンチのみがある休憩所)があるのがありがたい。それから、ガソリンが安いのも助かったが、長く続く75号線を走りながら、カナダの高速道路とは何かが決定的に違うと思い始める。

 果てしなく続く農場の景色でもなく、車のスピードでもなく・・・うーん、何だろう。悶々(もんもん)としながらしばらく走ると、鉄柱ならぬ「マクドナルド柱」(高くそびえ立つ「M」が先についた棒とでもいおうか)が見えてきた。これだ!!!!!カナダにはこの「マクドナルド柱」が一切ない(と思う)。だから高速道路からの景色もきれいで、目障りなものは特にない。そういえば、ミシガンにいる知り合いが、カナダに来るたびに「カナダはきれいだ」とよく言っている。その意味が分かった気がする。


▲シンシンナティーのビル群。この橋がオハイオ州とケンタッキー州の州境である


▲オハイオ州からケンタッキー州に入るところ。バックミラーにはシンシナティ―のビル群が映っている

 オンタリオはもちろん、ミシガン州、オハイオ州は完全に真っ平らだが、ケンタッキー州に入るとすぐに、高低差のある道路に変わった。ここからテネシー州までの景色は非常にきれいであった。

 ケンタッキー州南部で75号線を走っていると「ケンタッキーフライドチキン(KFC)博物館へは次の出口を下りて下さい」の看板があった。大のファストフードとチェーン店嫌いの私だが、大企業のKFCも、元をたどればこんな寂れた田舎の地から出発したのかと思うと、ビジネスの成功には目を見張るものがある。


▲スモーキーマウンテンの一部


▲スモーキーマウンテンの朝霧

 さて、スモーキーマウンテンといわれる所以(ゆえん)は、もちろん、霧で有名だからだ。特に、山々に朝霧がきれいに出ている中でのドライブは気持ちが癒やされた。テネシー州は海のない内陸地なので、てっきり乾燥しているのかと思ったら、ここは日本か!と思うほどに、蒸し暑かった。毎日40℃はあったので、好天の日は長時間屋外にいるのが大変であった。

 トロントの夏もかなり蒸し暑いが、テネシーのそれはレベルが違う。例えば、トロントでは夏場に自宅で食パンを丸一日常温で置いておいても、カビは生えてこないが、テネシーではクーラーの効いている部屋であるにもかかわらず、半日ちょっとでカビが生えてしまったのだ。食パンだけではなく、野菜や果物もとにかくすべて冷蔵庫にすぐに入れなければならなかった。

 生鮮食料品といえば、テネシーのスーパーでは、どういうわけか、カナダ産のものがたくさん(ほぼ全部)置いてあった。ベルペッパー、トマト、キュウリなどテネシーでも栽培されているであろうに、なぜかカナダ産ばかりが置いてあった。冬場はカリフォルニアからの恩恵を受けている私たちだが、まさかテネシーに農作物を輸出しているとは思いもよらなかった。スイカはケンタッキー州が有名なようで、甘くておいしいものをたくさん食べた。

 ところで、よく日本人観光客が「せっかく海外に来たのに、日本人ばかりでゲンナリだ」と文句を言う。日本人は旅行好きが多いし人口も多いので、海外で日本人を見かけるのは当たり前のことだと私は思うのだが、日本人、中国人、インド人は世界中のどんな小さな集落にも必ず一人は住んでいる。なので、日本人のいない場所を見つけるのは至難の業だが、今回の旅ではたまたまだとは思うが、約1週間の滞在中、中国人やインド人は見かけたが、日本人は一人も見かけなかった。

 地元民いわく、15年くらい前まではスモーキーマウンテン一帯は、地元や近くの州から来るアメリカ人しかいない地域だったが、ここ数年でさまざまな国や地域の人が集うようになったそうである。実際、スカーフを巻いた女性もたくさんいたし、有色人種も多くいた。ウィンザーから来たというカナダ人夫婦にも会った。スモーキーマウンテン一帯は、遅かれ早かれ日本人ツーリストが訪れる観光地となるかも知れない。〈次号に続く〉

(2016年10月6日号)



 



 
(c)e-Nikka all rights reserved