前田典子の「書」談義(第7回)
用の美


古代、漢字は神事を記録する必然性から生み出され、以来、コミュニケーションの手段としての用途から発展し現代に至っています。
「用の美」という日本的な美意識は、器や道具など工芸の世界でよく使われますが、私は「書」も「用の美」だと思っています。
記録、伝達の目的を持つ文字や言葉を、実用性の中にある美しさで表現するのも「書」だと思います。




長寿を祝う言葉

長寿を祝う語句はいろいろあります。

還暦: 十干十二支を一巡した一区切りの60歳を祝う
古稀(こき): 唐の詩人、杜甫の詩の一節「人生七十古来稀なり」に由来する70歳を祝う言葉
喜寿: 77歳
傘寿(さんじゅ): 80歳
米寿: 88歳
卒寿: 90歳

これらは上の写真にあるように書の草書体がそれぞれの年齢の数字に読めるのでお祝いの言葉になっています。

白寿 「百」の文字から一をとった「白」は、99歳のお祝い
紀寿 一世紀の長寿100歳を祝う語です。




松の葉

「小さなものですが」「心ばかりの」という意味合いのメッセージが「松の葉」です。実にシャレた日本語の表現だと思います。
贈り物社会、ギフト文化などと称される日本には、御祝、御礼、寿、内祝、御霊前など、のし袋とのし紙の表題はその場に応じた、さまざまな言葉があります。 なお、「寸志」は目上から目下への贈り物とされていますので、ご留意ください。




命名

人生の節目節目に、書はいろいろに使われますが、一番最初は「命名」でしょう。
各家庭、各地方によってその書式は多様です。父親、母親の名前を併記したり、長男、次女などと書き添える場合もあります。
生まれた赤ちゃんの成長と幸せを願って命名された名前を筆でしたためることは、赤ちゃんの人生の大事な第一歩になるでしょう。




おめでとう、ありがとう

「おめでとう」「ありがとう」は私たちの日常の中でよく使われる挨拶です。 この2つの言葉は、自分らしく自分の文字で書けるように練習しておくと、より一層伝えたい相手に気持ちが伝わるメッセージになります。
「上手に書こう」というよりも、自分らしく心を込めて書くことが一番だと思います。




年賀状

年賀状は新年を祝う挨拶状ですが、墨色鮮やかに筆で書かれた文字は年賀状に新年の厳かさをかもし出してくれます。
干支(えと)は、現代では12種類の動物になぞらえていますが、起源は方角を示す12の文字です。
来年(2017年)はとり年、干支は「丁酉・ひのととり」です。
来年の「酉」をいろいろな書体で書いてみました。来年の年賀状を、是非、筆を持って書いてみてください。

【編集部より】「書家・前田典子エッセー」シリーズ、「第1回 紙に筆と墨で書く『書』の概念を払拭」から「第6回 篆刻(てんこく)」までの記事は、アーカイブの「アートエッセー・前田典子の『書』談義」をご覧ください。トップページ「今週のトピックス・目次」の下の「過去のトピックスはアーカイブをご覧ください」をクリックすると見られます。

(2016年10月6日号)



 



 
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