【ドキュメンタリー映画】

東日本大震災・放射能汚染後の愛とサバイバル描いた
映画「東北の新月」、カナダ日本研究学会総会で上映
リンダ・オオハマ監督が解説


〈 リポート・妹尾 翠 〉

 10月13日から16日まで「カナダ日本研究学会総会」がバンクーバーのブリティッシュコロンビア大学(UBC)で開かれた。そのプログラムの一環として、学会開催中の2日間、UBCアジア図書館内のオーディトリアムで日本映画鑑賞会が行われた。フィルムは今回バンクーバー国際映画祭で招待作品として上映された「東北の新月」が取り上げられた。


▲映画の説明を行うリンダ・オオハマさん

 上映前に、この映画の監督、リンダ・オオハマ氏が解説を行った。
 日系3世のリンダさんは東日本大震災の直後から日本に渡り、ボランティアをしながら、被災者たちに愛の手を差し伸べた。このきっかけは彼女の孫が、震災の次の日に祖母であるリンダさんに「何が起こったのか知っているの?」という問いかけの一言だったという。

 リンダさんは映画製作について次のように語った。
「まず、東北の人々の心を支えてあげたかった。ハグを送ってあげたかった。最初はボランティアとして手伝いをしようと思っていたのですが、すさまじい状況を目のあたりにし、多くの人々の話を聞いているうちに、いろいろな思いが巡ってきました。そして、この大震災の被災地や被災者の現状を皆に知らせたいと思い、映画製作を思いついたのです」

▲仮設住宅 ▲小学校の子供たちは英語のスピーチで迎えてくれた


▲映画に出演した東北の人々。今でこそ笑顔も見られるようになった ▲映画の1シーン。日本文化との融合場面。竹林も放射能の影響で腐って倒れていった


 さらに、リンダさんは、こう語る。「仮設住宅で被災者の方々と2年以上を一緒に過ごし、5年かけて映画が出来上がりました。また日本語から英語への翻訳も7カ月かかったのです。映画製作の間は本当に大変な時期を過ごしましたが、人々の想い、愛を身をもって感じられる機会でした。信じられなかったことですが、国際映画祭にも出せるようになったのは大きな喜びです」

 震災直後には現地に多くのメディアが訪れ、被災者たちに不愉快な思いをさせる者も多く、被災者たちは口を閉じていたので、最初のコンタクトが難しいところもあったそうだ。

 「東北の新月」という映画のタイトルについて質問があった。リンダさんは「新月は真っ暗で何も見えませんが、でも月は確実にそこにあります。映画のなかでも、見ることも声を聞くことも出来ない人がちゃんとそこにいてくれます。音楽や真心も見えないし、絵にも描けないですが、忘れることのできないようなパワーを残してくれるものもあります。暗闇の新月が月となって表れた時のあの素晴らしいパワーは新月の時にも存在しているのです。そのイメージから東北の新月という言葉が浮かびました」と、説明した。

【上映前のナレーションから】スライドに映し出された写真の物語
「大震災直後に世界中の人々が日本のために何ができるだろうと考えた。言葉がちがっても時代が違っても、豊かな人も貧しい人も国や文化がちがっても、心はみんな同じ。日本・そして東北の力になりたい」


▲震災の翌日から募金運動を始めたバンクーバーの日本人学生たち


▲バンクーバーの子供たちも心をこめて鶴を折った

 「震災の翌日から、バンクーバーでも学生たちが募金活動を始めた。気持ちはすぐに実行に移された。パリ、ニューヨーク、ロンドン、ロサンゼルスでも、深い悲しみ、そして希望も愛も芸術や文化を通して表現された。バンクーバーでは子供も大人も日本への想いをこめて鶴を折った。陶芸家は想いを込めてカップやボウルをを作った。『がんばれ日本』のTシャツやリストバンドも作られた。音楽家や芸術家はそれぞれの分野でコンサートや展示会を開き、募金運動に協力した」


▲布にそれぞれメッセージを描き、つなげて大きな「手紙」を作った

 「大きな布で手紙を作った。カナダの若者たちはその布にメッセージを描いていった。励ましの言葉、キティー、トトロ、寿司、ゲームボーイ、ポケモン、日本の友達・・・みんな好きだよ、と書いた。700枚以上の布の手紙は縫い合わされて大きな手紙となり、大きな赤いスーツケースに入れられて2011年7月7日にカナダから日本に渡った」

 今朝、朗報が届きました。「東北の新月」がローマ独立映画祭に招待され、そのうえ国際長編映画賞にノミネートされたのです。
 「東北の新月」は、11月25日から11月30日までローマのサボイ映画館で上映されます。 ローマ独立映画祭での上映実現は、「東北の新月」にとっても、東北であったできごとにとってもすばらしいことだと思います。これで私たちは、カナダの観客、アメリカの観客、そしてイタリアの観客に見ていただけることになるのです。
 ローマでの審査員に正当に評価していただくために準備しなければならないことがたくさんあります。映画に出演していらっしゃる方々のセリフをすべて英訳する作業もそのなかのひとつです。大変な作業ですが、今日から取りかかりたいと思います。がんばります。

【映画のあらすじ】
 2011年3月11日、東北地方で起きた大地震、津波、そして放射能汚染。これらの災害の後の愛とサバイバル、そして日本文化・伝統を交えた感動の物語である。

 この映画は、宮城、岩手、福島各県沿岸の市町村での2年半以上に及ぶ取材ロケを通じて製作された。災害に打撃を受けた日系カナダ人映画監督の想いと被災者たちの心の回復の記録。宮城、岩手、福島の被災地から立ち上がった人々の生の声を伝えるドキュメンタリー映画である。

(2016年10月27日号)



 



 
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