【チャリティー音楽会】
音楽家を志す学生たちを支援
MDA第4回チャリティーコンサート


〈 リポート・いろもとのりこ 〉

 音楽家を志す学生たちを支援するNPO、Musicians’ Dream Aid(MDA)の第4回チャリティーコンサートが、11月20日(日)夜、トロント市内フォレストヒル地区のグレース・チャーチ・オン・ザ・ヒルで開催された。


▲ MDA の発起人、坂田尚子さん

  MDAは当時、トロントの高校生だった坂田尚子さんが発起人となって仲間とともに2015年に設立したNPO。チャリティーコンサートは2015年6月に第1回を開催し、年に2回のペースで行っている。コンサートの収益は音楽家を志す学生たちの支援に使われる。

 今回のチャリティーコンサートでは、CBCピアノコンクール総合優勝者をはじめ、国際コンクールやカナダの全国大会で活躍している学生たちが演奏。シューベルト、チャイコフスキー、リスト、ショパン、モーツァルト作曲のピアノ、バイオリン、チェロ、声楽などクラシック曲が披露された。

 出演者は、ほとんどがトロントの Taylor Academy of the Royal Conservatory of Music(ロイヤルコンサーバトリーのテイラー・アカデミー)の学生、または卒業生で、将来、音楽家を目指している。
 それだけに、とても学生とは思えないような演奏技術と風格を備えた出演者もいて、聴衆をうならせていた。

【出演者の顔ぶれ】

 プログラムのトップは日本人の河野恭子(こうの・きょうこ)さん。恭子さんは現在、リッチモンドヒル・ハイスクールの12年生(17歳)で、ロイヤルコンサーバトリーのテイラー・アカデミーの学生でもある。駐在員家族とともにサンフランシスコからトロントに来て4年目。将来は音楽大学を目指しているそうだ。


▲河野恭子さん

 Jake Lee さんは14歳、チェロを演奏。St. Thomas Aquinas Catholic Secondary School の学生(グレード 9)で、Taylor Academy of the Royal Conservatory of Music で学ぶ。
 Feiran Bi さんは15歳、フルートを演奏。Central Toronto Academy の学生(グレード10) で、Taylor Academy of the Royal Conservatory of Music で学ぶ。
 なお、ピアノ伴奏は Amadeusz Kazobouwski-Houston さん、20歳。York University (Environmental Studies, 2nd year)の学生である。

▲ Jake Lee さん ▲ Feiran Bi さん


 J J Bui さんは12歳、ピアノ。ピアノに専念するため Home School で学び、 Taylor Academy of the Royal Conservatory of Music の学生でもある。


▲ J J Bui さん

 Julia Debowska さんは18歳、ソプラノ。Taylor Academy of the Royal Conservatory of Music で学ぶ。
 Vivian Kukiel さんは16歳、バイオリン。Vaughan Road Academy の学生(グレード11)で、Taylor Academy of the Royal Conservatory of Music で学ぶ。

▲ Julia Debowska さん  ▲ Vivian Kukiel さん


 Artun Miskciyan さんは21歳、ピアノ。University of Toronto (Bachelor of Music Program 3rd year)


▲ Artun Miskciyan さん


▲ コンサート終了後、出演者全員が挨拶

MDA発起人、坂田尚子さんにインタビュー

ここで、MDA設立の発起人で、現在、ケベックシティの音楽大学(Conservatoire de Musique de Quebec)ピアノ課程1年生の坂田尚子さんに話をうかがった(尚子さんは19歳、両親はトロント在住の坂田晴彦・美保さん)。

Musicians’ Dream Aid(MDA)を設立した動機は?
 MDA発足当時のメンバーは全員、ハイスクールで知り合った友達でした。授業でも一緒になったことがある人たちだったので、MDAに入ってもらう前からある程度、一人ひとりの性格や能力が分かっていました。みんな音楽が大好きで、それぞれMDAの運営に必要な幅広いスキルや好奇心を持っているので、チームとしてうまく機能しています。発足後にも熱意ある新しい仲間が加わってくれて、とても幸運なことだと思っています。


▲ 坂田尚子さん(写真は MDA ホームページより)

坂田さんがMDAにかかわったいきさつは?
 私は昔からビジネスに興味があり、特にフィランソロピー(奉仕慈善活動)に興味を持っていました。音楽を志す学生に奨学金を提供するというアイデアは、音楽家を目指す才能ある若者が何人も、学費を工面するために毎年大変な苦労をしているのを目の当たりにしてから思いつきました。
 Crescendo(クレッシェンド)というコンサートシリーズの売り上げを奨学金の資金源としたのは、自分が2011年の東日本大震災のためのチャリティーコンサートに参加する機会があり、それが素晴らしい体験だったことがきっかけとなりました。

これまでに何人の学生が出演しましたか?
 今回のコンサートも入れると、23名の若い音楽家が出演したことになります。そのほとんどは高校生ですが、9歳の子もいましたし、大学生も出演してくれています。

支援をする学生を選ぶのはどのような基準があるのでしょうか?
 奨学金の応募者は、音楽の能力、音楽に関する経歴、応募者にとっての財政援助の意義という3つの観点から審査しています。選考は中立な立場の外部審査員に依頼しています。
 奨学金の受給者は、傑出した音楽能力、音楽関連の豊富な経歴、奨学金を自らの音楽教育に充てる意思のそれぞれを証明しなければなりません。奨学金は音楽学校または音楽プログラムの学費に使うことが条件となります。

毎年、選ぶ学生の人数は決まっているのですか?

 MDAは発足してまだ日が浅いため、毎年支援する人数が決まっているわけではありません。多くの人のご支援のおかげで2015年には$500の奨学金を1口、今年は$500を1口と$200を1口の計2口を給付することができました。目標は、毎年$500以上の給付を行うことです。

受給者は皆さんが音楽の専門学校に進学されたのでしょうか?
 第1回の奨学金受給者エカテリーナ・チェレコーヴァ(Ekaterina Chelekhova)さんは、イタリアのミラノ音楽院の大学院でオペラを専攻しています。今年$500ドルの奨学金を受給したジュリア・デボウスカ(Julia Debowska)さんも音楽を専攻する予定です。
 コンサート出演者はほとんど、トロントのロイヤル・コンサーバトリーのテイラー・アカデミーの学生または卒業生です。テイラー・アカデミーは、才能ある生徒のために音楽の英才教育を提供しているプリカレッジ・プログラムです。

この運動を通して坂田さんが感じたこと、印象深いことは?
 慈善事業の運営について実務的なことをいろいろと勉強できただけでなく、自分の生き方についても、価値観が変わるようなとても大切なことを学ぶことができたと思います。ひとつは、自発的に何かをやってみることで、さまざまなチャンスが開けるということです。

 チャンスは自分で切り開かなければならないということを痛感しました。MDAを始める前は、コンサートで演奏したりコンクールに参加したりはしましたが、音楽を真剣に志す生徒として何か特別なことをやってきたとは言えませんでした。MDAを始めてからは、MDAに直接関係ないところでもいろいろなチャンスが開けました。

 ウェセックス伯爵夫人ソフィーさん(イギリスの王族でウェセックス伯爵エドワード王子の妻)の前で演奏できたのも、夏にバンフ・センターで室内楽のプログラムに参加できたことも、元をたどればMDAのおかげでした。MDAを始めることが、これだけ自分の人生を変えるなど想像もしていませんでした。

 また、MDAを始めたおかげで財界やクラシック音楽界で成功している素晴らしい方々にお話を伺う機会に恵まれました。若い企業家、プロの音楽家、大企業の取締役の方々など、普通ではなかなか接することのできない人たちから体験やアドバイスを伺い、インスピレーションを得ることができました。そのような人たちとの素晴らしい出会いは、自分の夢やMDAのビジョンに多大な影響を及ぼしています。

ウェブサイト:
http://musiciansdreamaid.weebly.com/crescendo-november-2016.html

Facebook : https://www.facebook.com/musiciansdreamaid

問い合わせ先 : musiciansdreamaid@gmail.com

○    ○    ○

【取材を終えて】 
 何ごとも企画して、実行に移すのは大変な努力と体力が必要です。これだけの出演者を集めてコンサートを開催してきた坂田尚子さんと仲間の皆さんの熱意は見上げたものです。しかも、大人でも大変なのに高校生で始めたというから・・・。もっとも周囲の協力があってのことでしょう。周囲の暖かい見守りを祈っています。〈いろもとのりこ〉

(2016年12月1日号)



 
 


 
 
(c)e-Nikka all rights reserved