僕ら星の子


〈トロント・三浦信義(ノビー)〉

 我々は皆、星の子であること、知っているかな。僕らの体の中には星がいっぱい詰まっている。

 ビッグバンで137億年前に誕生した宇宙は超高温、超高圧、超高密度の混沌(こんとん)とした素粒子のスープで、エネルギーと物質の区別さえなかった。やがて素粒子(この場合クォーク)が結合、陽子と中性子が出来た。それでも温度はまだ高すぎて、陽子と中性子や電子は興奮してブンブン飛び回っていた。

 やっと落ち着いて陽子・中性子と電子が結合するのがビッグバンの何と30万年後、宇宙の温度が3000度に下がった頃である。やがて陽子1個と電子1個が結合して水素原子が、さらに水素原子2つと中性子2つが結合してヘリウムが出来た。この時期の宇宙はほとんど水素ばかり、それにヘリウムが2割、さらに微少量のリチウムとベリリウムが漂っていた。

 いったん、ある部分の密度が高く重くなれば、周りの物質が引き込まれ始める。宇宙のいたるところがチカチカと光り始めた。星の誕生である。

 最初の星は水素星。前記の原子しか存在しないから、宇宙には水もなければ岩もない。星たちの中心では水素が高温高圧で圧縮されヘリウムとなる。核融合だ。膨大な量のエネルギーが放出され、星は明るく熱く長く燃え続ける。

 しかし星が持つ水素の量は有限だ。長い年月の後、水素を燃やし尽くし、仕方なく効率の悪いヘリウムを燃やし始める。それで炭素が出来る。ヘリウムが尽きると星たちはもうなりふりかまわず炭素を燃やしてしまう。

 こうして星たちは原子周期表に沿って原子を順番に核融合で作り出して行く。炭素からネオン、マグネシウム、それから酸素、ケイ素、硫黄、そして鉄。さらに・・・、おっとっと、そうは行かない。鉄までの原子の核融合はエネルギーを放出する。ところが鉄の核融合は逆にエネルギーが必要だ。つまり星は鉄は燃やせない。

 星の表面はそれまで内部から放出されるエネルギーの圧力に支えられていた。その支えがなくなったらどうなるか。中心からの圧力の支えがなくなった星の表面は引力の作用で星の中心に向かって一斉に落ちて行く。大量の物質が星の中心に高速で凝縮し、超高圧超高温の大爆発が起こる。宇宙を一瞬に明るく照らす超新星スーパーノバだ。新星と呼ぶけれど、あれは星の最後の爆発なんだ。

 この超大爆発は鉄以上の原子を融合で製造するエネルギーを供給する。ありとあらゆる物質がメチャクチャに融合して鉄以上の原子、コバルトからウラン(宇宙に天然に存在する一番重い原子)までが宇宙に放出されるのだ。超新星は宇宙の圧力釜だ。

 こうして宇宙に存在する原子は星たちが作り出したものなのだ。

 我々の太陽は宇宙では第3世代の星だ。宇宙にはすでに多くの種類の元素が出来ていた。地球上のウランのほとんどは60億年前に作られたらしい。太陽系が生まれる前のこの地域でどうやら60億年前に超新星が少なくとも2つ爆発したようだ。それが弾(はじ)き出した物質やガスがやがて渦巻き、収斂(しゅうれん)し、45億7000万年前、我々の太陽系が出来た。そしてそこに生命が生まれ、喜びも悲しみも生まれた。



 森も花も蝶も白い雲も、そして私もあなたも、みんな、み〜んな星たちが作ってくれた。そう、私たちはみんな星たちの子供。昔、大昔、生まれて燃えて消えていったたくさんの星たちの心が私たちの体の中にはいっぱい詰まっているんだ。

 60億年前にこの近辺で超新星たちが弾き出した物質やガスからたくさんの星が同時に生まれたはずだ。その星たちは最初は一緒に天の川銀河の中を回っていた。やがて長い年月の間にそれら兄弟星たちはだんだん離散して行った。

 その星たちは今でもこの銀河の中で燃えている。それら兄弟の星たちを探そうという。強力なコンピューターの力でどのように散らばって行ったかを予測し、我々の太陽と同じ年齢と化学組成の星たちを見つけようという。

 もしそれらの星たちの周りを地球のような惑星が回っていたら、その惑星上にいる生命の体の中には僕らと共通の星屑がいっぱい詰まっていることになる。素晴らしいね・・・。

(2016年12月15日号)

 
 


 
 
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