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モントリオール楓美
2012年6月詠草
  選者 富永 美代
   
いづこより来るとも知れぬ悲しみに抗ひもせず春の曇り日
村上 侑子
   
お花見と言ふに淋しも孫植ゑし桜なりせば小花も輝く
  鮎川 祥子
   
百十種あるとふ京の桜花はんなりふふむ糸しだれ美し
  ベルニエ 節子
   
吾が老母の衰へ見せぬ食欲に安堵のありて献立をなす
  コーテ 万知子
   
四十年を経たるもありて絹ずれのささやき今日のスカーフ選ぶ
  マレット あけみ
   
欠落せし欠片こそ個性かしれぬ慈悲深くあれ人に我が身に
  近藤 晴美
   
限られし日々の残れば何せむかあたり見回し先づ皿洗ふ
  (マーチンタウン) 小倉 豊子
   
子の髪を切る床に散るDNA黒き証拠を集めて捨てる
  関 陽子
   
我の身を「お大事に」と言ひ給ふ主治医の病さらに重からむ
  小西 真美子
   
楽しみは孫らの写真くり返しくり返し見き幼日追ひて
  クワン 小文
   
すずらんを摘みて束ねて香を贈る視力衰ふ目上の友へ
  (トロント)村杉 康枝
   
半世紀余の厳しき冬に耐へ耐へて老木となりても桜花うるはし
  (トロント)チコイ・ダバン 恵
   
餌に集ふ小鳥らのさま眺めゐつ卯月の午後の静かなる時
  (日本) 中村 まさ子
 
りんご花桜のごとく咲き乱れ秋の収穫望み深けり
  柴田 隆典
   
春一度のうどの香りは公平に小鉢にわけて友に供せり
  (フェンウィック) 鳥塚 昌子
   
春雷に髪なびかせて乙女らはビルの谷間を駆けてゆきけり
  (トロント)遠藤 裕子
   
浮き雲は茜の色に染め抜かれメープル若葉の先に止まれり
  (米国)まんしぃに 淑
   
豊臣の栄華を想ひ眺むればきらめく宇宙油滴天目
  (日本) 渡辺 登
 
老いてなほ明日を信じて前向きに生きよと落込む吾が身励ます
  (トロント) 小方 和子
 
痛む目に恃みて春の歌をなす思ひ明るみペンはづみくる
  富永 美代



 
 
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