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モントリオール楓美
2012年8月詠草
  選者 富永 美代
   
食むことの喜びすくなき患者らの配膳準備手さきのゆるき
村上 侑子
   
この夏はアルバイトなりと胸を張るカレッジ入りを控へたる孫
  鮎川 祥子
   
かそかなる風にも崩れむ危ふさに咲き満つ芍薬香るみなづき
  ベルニエ 節子
   
皺ひとつ貫禄なりて立ちたまふ岡野弘彦先生のうつしゑを拝す
  コーテ 万知子
   
ぼうたんに魔法使ひの宿るらし小さき蕾ゆ八重のこぼるる
  マレット あけみ
   
ああ蛍よう帰り来しこの庭に我行く道に光投げ来る
  (マーチンタウン)小倉 豊子
   
風呂に入り鎖骨の下をこすりつつ呼びよせる過去溶けず流れず
  関 陽子
   
夫捻り吾が絵つけし茶碗にて点てる茶の味まろみの含む
  小西 真美子
   
何もかも重荷に感ずるこの頃よ歳は隠せぬ吾が身となりぬ
  クワン 小文
   
老いてなほ元気に集ふ級友の面ににじめる豊かな個性
  (トロント)村杉 康枝
   
嬰児の誕生の過程奇しけれ「神秘」と言はず何と言はむや
  (トロント)チコイ・ダバン 恵
   
見上ぐれば白雲静かに流れゐて明るき午後の庭に憩へり
  (日本) 中村 まさ子
 
何時の間に大学卒の初孫よ一人まへに世間に出でり
  柴田 隆典
   
天と地の美しき競演写さむと夫は奮闘シャッターを切る
  (フェンウィック)鳥塚 昌子
   
ハングル語読めぬ悲しき迷ひ路右に行きたり左に行きたり
  (トロント)遠藤 裕子
   
すひかづら香りとどける夏の風日すがら誘ふ蜂と我とを
  (米国)まんしぃに 淑
   
樫の木に群れて集ひし尾長鳥ギーギー鳴きて闇を切り裂く
  (日本)渡辺 登
 
二種類の地下鉄で読まれる朝刊が今日一日の会話育てる
  米山 英貴
 
遥かなる友ゆ贈らる十勝そば故国の味に心安まる
  (トロント)小方 和子
 
夏至の日の未だ沈まぬ太陽ををしむが如く子らは遊べり
  曽根 みな子
 
咲き始めコスモスの花愛らしくわが家の庭に楽しさ生れり
  曽根 可奈子
 
二十年のみのり豊かに「楓美」ありこの朝天は高くひろかり 
  富永 美代
   
【編集部より】短歌グループ「楓美」はモントリオール在住の富永美代さんの指導により活動を続けていますが、今年、創立20周年を迎えました。



 
 
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