楓美 2016年八月詠草
  選者 富永 美代
   
マロニエの葉の広ごりてさ庭べに影落としくれ夏ふかまりぬ
村上 侑子
   
半焦げもシシャモは味好し独り居の夜の片手にぐい飲みありて
  鮎川 祥子
   
初夏の照る日曇る日咲きつぎて庭を彩るデイリリーの黄
  ベルニエ 節子
   
うす紅の色ふかめ来てねむの木はそぼ降る雨に身をまかせをり
  コーテ 万知子
   
アヴェマリア御堂満たして幾重にもやさしく友の柩覆へり
  マレット あけみ
   
カラフルな毛糸の束に孫娘は云ふ「たくさんの色の羊がいるね」
  小西 真美子
   
リリヤンを結びかざせる京人形若き契りの末永かれと
  (オタワ) 村杉 康枝
   
爽やかに優しくそよぐ初夏の風リラの香運び狭庭に充てり
  (トロント)チコイ・ダバン 恵
 
カナダデー祝ふ夕べの狭庭辺に花火楽しむ涼風の中
  (トロント)中村 まさ子
 
古き車乗りゐて働く両親に吾娘は新車を贈りくれたり
  (フェンウィック)鳥塚 昌子
   
夏のみのお付き合ひなり両隣賑やかなりし文月の山荘
  (トロント) 遠藤 裕子
   
いま少し膝に痛みの残る日日はや紫陽花は薄藍と染む
  (米国)まんしぃに 淑
 
舞ひ降りし濃霧の精に一目惚れじっと見詰めて時を忘れり
  (日本) 渡辺 登
 
風薫る目にも眩しき新緑に蜘蛛の巣光る夕立のあと
  曽根 みな子
 
大人ぶりスーツケースを引きてゆく生まれし国へ二年ぶりかな
  福村 和浩
 
笑顔良きあこがれの君颯爽とドアの向かうに立ちをりし朝
  間 由加里
 
飛行機雲まなこ凝らして追ふ吾の背を吹きすぐ風のやさしき
  富永 美代
   
(2016年8月4日号)  



 
 
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